Happy Birthday

3月9日、といえば。サンキューの日。有名な歌のタイトルになった日。ミホークの友人の(本人は腐れ縁といいはっている)シャンクスの誕生日。それから、ミホークが貰い物の甘いお菓子を抱えて帰ってくる日―――つまり、ミホークの誕生日。そして、わたしが何をあげればいいのか、最も頭を悩ませる日でもある。

服関係の小物は、ミホークのセンスに合う物を買える自信がなくて、尻込みしてしまう。どんなものでもきっと、喜んでくれると思うし、身につけてくれるだろうけれど、もしわたしがあげたものだけ浮いてみえたりしたら、いたたまれない気持ちになる。

かといって、スイーツの類は他の人と被るようで気がすすまなかった。特別な何かをあげたい、けれど、何がいいのかまったく思いつかない。それだから、溜息がでてしまう。

「難しい顔をして、どうした?」

眉間に皺がつくぞ、とひとさし指で小突かれ、つつかれたところをさすりながら、ミホークをみる。

「何でもないです……」

まさか、本人にできるような相談でもないため、視線を逸らして幾分かそっけなくこたえる。誕生日まであと三日と迫っているのに、何も思いつかないままにきてしまって、少し焦っていた。

「あぁ、そうだ。なまえ」というのは、淡々とした声。

「もし、次の週末、何も予定がないようなら旅行に行かないか?少し早いが……誕生日祝い、ということで、なまえの時間を予約したいのだが」

ぱちぱちと、目を瞬かせる。「どうだ?」と尋ねるミホークに、どこかうわのそらのまま頷いて返事をした。けれど、これでいいのかという疑問がもやもやと渦を巻いている。そんなわたしを知ってか、知らずか、ミホークが小さく笑みをつくった。

「これで、溜息から解放されるな」
「すみません……」

溜息の原因、ばれてた、なんて情けない気持ちでしゅんと項垂れるわたしに、ん、と促すような声をだして、ミホークが両手をひろげた。おいで、ということだろうか。それに、そろそろと遠慮がちに抱きつく。ミホークの首に両腕をまわして、鼻をひくつかせると、控えめな甘い香水と、ミホークの体温のにおいがかおった。あたたかく、安心するにおい。

「…………ちょっと早いけど、誕生日、おめでとうございます」
「ありがとう」

いいながらも、ミホークの手はわたしの頭をなでている。

「今年は、なまえがプレゼントということになるな」
「…………こんなんで、本当に、いいんですか?」と聞くと、空気を揺らしてミホークが笑った気配がした。

「案外、古風な男なのでね。―――だが、実際、これ以上の誕生日祝いがあろうか?」

至らないわたしでごめんなさいと、ありがとうの気持ちを込めて、ぎゅうと抱きつく腕に力を込めると、頭を撫でていたミホークの手が滑り落ち、背中から抱きこめられた。

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