みつめることのむずかしさ

「ミホークさん」
「なんだ、なまえ?」
「その………」

わたしの顔、なんかついてます?

つい、そう聞きたくなるほど、真正面からみつめられ、戸惑ってしまった。もしかしたら、本人はただみているだけのつもりかもしれないけれど、眼光鋭く、こうもじっとみられると、何かおかしいところでもあるのでは、と不安になってしまう。

「………いや、何も?」

少しの間、不思議そうに考えたあと、ミホークは事もなげに答える。その返事に胸を撫で下ろしつつも、じゃあなんでこんなにみられているんだろう、と思った。

「なんで、そんなにわたしのことをみるんですか……?」

すると、ミホークは、あぁ、と何かを理解したように頷いて、ひと言。

「朝、家をでて以来のなまえだからな」

けれど、相変わらず、何がいいたいのかいまいちわからなかった。わたしの理解力が足りないのか、ミホークがあまりに必要最低限のことしかいわないのか、どちらだろうと時々疑問に思う。わたしが惚けているのを察したのか、ミホークがつけたした。口元には微かな笑みが浮いている。

「いつでも、時間を問わずになまえの傍にいたいが、それも叶わないため、みられるときにみているだけだ。気にするな」

かぁ、といきおいよく顔に血液が昇ってくるのがわかった。気にするな、といわれても、気にしないことなんてできません!というような甘い返事に、どうすればいいのか、わたしの戸惑いは強くなるばかりなのに、ミホークは知らん顔で、本当にずるい人だと、火照る顔で思う。

「照れているなまえも可愛い」と、余裕たっぷりにいわれてしまい、すっかり恥ずかしくなったわたしは、ミホークをみつめることもできないというのに。

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