22

瞼をゆっくりと持ち上げるが、腫れていて視界が狭い。カラカラに嗄れた喉が痛む。喉だけではない。体中が軋んでいる。痛い。手をついて起き上がろうとすると、自らの秘部に鋭い痛みが走った。「ッつ……」思わず息がもれる。目をこすると、腫れた瞼が熱を持って痛かった。満身創痍だ。

その原因――昨晩のことについて思うと、背筋に震えが走った。寒くもないのに鳥肌が立ち、震えそうになる体を自分で抱きしめる。昨日は、何があった。一日でめまぐるしく多くのことが起こりすぎて、混乱した頭では理解できない。

悪夢は、ひとりの男が現れたことからはじまった。血走った眼、いやらしく撫でまわす分厚い手、気に障るとわたしを殴る男、猿ぐつわをかまされて、引きずり回された。どこに連れていかれるかも、どうなるかもわからない恐怖。男の顔が、脳裏でアップになる。下卑た笑みは、だが、次の瞬間には醜く歪み、崩れ、萎れてはじめた。

「……ッッ」

息をのむ。寝ころんだまま、自分を守るように小さく縮こまる。きつく目を瞑っても自分一人の悔闇に逃げようとしても、消えなかった。瞼の裏には、落ち窪んだ眼孔が焼き付いていて、こちらをじっと見つめている。恨めしそうに、ミイラが乾いた手をこちらに伸ばそうとする。

その後ろには、さらに大きな影。暗闇をさらに塗りつぶすような漆黒。そこからぬらりと、大きな右手が現れ、ぐしゃりと、容易くミイラを握りつぶした。次に現れたのは、クロコダイル。無表情でこちらを見つめているかと思うと、顔の端からさらさらと砂へと変化していく。

そこまでで、目を閉じていられなくなって、逃げ場を求めて、開いた。砂の国、厳しく暑い日光が、カーテンに遮られて一枚越しにその存在を主張していた。ここには今、恐ろしいものは何もない。すべて終わったこと。過去なのだ。起き上がりベッドの上に座って、いつの間にか浅く速くなっていた呼吸を、懸命に整えようとする。起き上がった際も、足の間が痛んだ。下着に湿りを感じた。おそらく出血していたのだろう。

「ふっ……くゥ……」

足の上で、組んだ腕に顔をうずめる。涙がこぼれた。呼吸を整えようとするのに、次から次へと涙が溢れ出てきて止まらない。惨めで、最低な気分だった。

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