mihawk

―――なまえ、と掠れた吐息交じりの声でミホークが呼ぶ。それだけで、とくんと心臓がなった。はい、と小さく返事をすると、こちらにのばされたミホークの両腕がやわらかく身体にまきついた。決して、力強くはないのに、逃れられない抱擁。じわりと体温が融けだして、触れ合う身体が心地良い。

なまえと、またミホークが名前を呼ぶ。少し顔をあげると、ミホークが人差し指だけで顎を掬い上げ、視線が合って、またどきりとする。綺麗な長い指は、それでも節くれだっていて、彼が背負うものの重さを実感させられた。

透明な蜂蜜色の瞳がこちらを見つめている。その鋭い双眸が、ゆっくりと細められた。まるで、愛おしむかのような甘い眼差しに、胸が高鳴る。わたしの顎を支えていた人差し指が、そっと、耳元をくすぐり、それから頬まで下がって、暖かくすこし乾燥した手のひらが片頬を包み込んだ。

ミホークが顔をよせて、口づける。やわらかい感触が唇に落とされた。触れ合うだけのキスだった。皮膚のぬるさを味わうかのように、何度か角度を変えて繰り返される。けれど、触れるたびに交わりが深くなる。ミホークの口づけは、情熱的でありながら、不思議なことにいつも、どこか上品さを保っていた。最後に一度、名残り惜しむかのように、キスが落とされてミホークが唇を離す。微かに口角があがっている口元から、ぺろりと紅い舌がのぞいて、唇を舐めた。悪戯な色を浮かべる瞳がこちらを覗いていて、今夜は、キスだけで終わらないと語っていた。

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