噛みつくような性急さで施されたキスは、煙の渋い味がした。いつもとおなじスモーカーのかおり。なのに、唇で感じるとこんなにも熱く思える。ざらりとした触感の舌が、力任せに押し入ってくる。熱い舌だった。歯列を抉じ開けるように侵入すると、酸素を奪い尽くそうとするかのように、荒々しく絡みつく。
「……はッ、ぁ…、」
「なまえ……、っ、」
わたしの名前をよぶスモーカーに応えることもできず、溺れるように息をつぐ。けれど、それすらも上手にできない。わたしを抱きしめるスモーカーの力があまりに強くて。ただのキスなのに、すべて攫われそうになってしまう。胸の鼓動は高鳴るばかりで、苦しいほど。呼吸だってはやくなる、もう、のぼせてしまいそうだ。
「……好き、だ、」
熱く荒い吐息にのせて呟かれたひとこと。真剣で、直情的で、熱情のたっぷりこもったそのことばに、胸がつまった。