halloween 後日談

「………で、何をつくっているのだ?」
「え、ミホークさんにいわれたスイートポテトですよ?」

今日はハロウィン当日。たくさんのさつまいもを買いこんで、キッチンでスイートポテトをつくっていたところ、ミホークが後ろからのぞきこんできた。

先日、フライングでミホークにハロウィンの悪戯をしかけたら、たっぷり“悪戯”を返された上、お菓子まで要求されたので、しょうがないという気持ちと、お菓子を要求するミホークを可愛く思う気持ち、半分半分で、今日はスイートポテトをつくっている。

いまは、皮をむいているところだった。包丁でサクサクとむいていく。

「そうか」

いいながらも、ミホークは後ろから離れない。だが、きちんと邪魔にならない距離は保っていて、そこがミホークらしいといえば、ミホークらしかった。

「それでは、今日はなまえに悪戯をできないということだな」

残念そうにそうつぶやくミホークに、視線はサツマイモに落としたまま、答える。

「したかったんですか?」
「…………」

沈黙。ミホークの顔は、背後にいるため伺えない。そのまま、手際よく皮をむいていく。


「したかった、といったら、させてくれるのか?」

しばしの沈黙の後、質問に質問で返された。ずるい、ずるいぞ。普段、あんな冷静沈着で落ち着いた様子なのに、こんな可愛いことをいうなんて!そうなると、少し意地悪もしたくなるというもので。

「今日は、悪戯のかわりにお菓子をあげるから、だめです」

ふふん、と得意げにそう返してやると、ミホークはまた黙ってしまった。包丁を扱っているためか、いつものように距離を縮めてこようとはしない。ミホークは、妙なところで気がつかえる。


「…………やれやれ、ならば、仕方ないな」

予想外の返答に、思わず包丁の手を止めて、後ろのミホークを振り返ってしまった。諦めが良すぎて、怪しいと思ったのだ。

けれど、振り返った先で、微かに唇の端をあげたミホークと目が合った。その瞳の奥の悪戯っぽい色に、本能が告げた、これは、ミホークさん、何か企んでいるぞ、と。

その企みに、例え気付いたとしても、ミホークの前に何もできることはなかった。

ミホークは、包丁を持つ手を包んで固定すると、もう片方の手を腰にまわして抱き寄せてくる。

「………それならば、無理やり悪戯するしかなくなってしまうではないか」

声のトーンを落として、いつもベッドの上で囁くような調子で、ミホークは耳元に息をたっぷりにそうふきこんできた。そのあまりの色っぽさに、かぁっと頬に熱が集まるのがわかった。

「…………ミホークさんッッ!!」
「クッ………顔が真っ赤だぞ。サツマイモを蒸す前に、なまえが蒸されてどうするのだ」

ミホークは、皮肉気な笑みをもらしながら、そういうけれど、そんな冗談に冗談で返せる程のよゆうはない。いま、まだ触れ合う身体の熱に、意識がいって、さらに心臓の鼓動がはやくなった。

「クク……、あぁ、おもしろい。動揺して、包丁で指を切るなよ」

そういうと、ミホークは、すっと一歩下がって離れた。

「すいーとぽてと、楽しみにしてるからな」

両手をあげて、「もう何もしませんよ」のポーズをとるミホークを前に、まだ顔から熱がひかない。この人は、本当にずるい。どうしたら、私が反応するか、全て分かった上でわざとやっている。

「あぁ………あと、なまえとの夜も、同じだけ楽しみにしているぞ」

声色をかえて、急に真剣な顔になったミホークに、もうすっかりやられてしまった。この人私を動揺させる気しかない気がする、と思うものの、肩を揺らして小さく笑いながらキッチンをでていくミホークを見送り、しょうがなく、サツマイモむきの作業にもどった。

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