ドフラミンゴの髪は、ひよこを連想させる暖かな金色だった。陽光を透かして輝く髪は、つんつんと硬そうなのに、ふれてみると案外柔らかく、手のひらの中でふわふわと跳ねる。それを、私は知っている。
「なに、なまえ」
こちらをみやるドフラミンゴ。身長差があるから、自然と見下ろされるような形に。じっと視線を注ぐドフラミンゴの、サングラスの奥は伺えない。けれど、そこに隠された瞳も、同じような色の、けして長くはないけれど、濃い睫毛が縁どっていることを、知っている。
その顔をみていると、なんだか据わりが悪いような気がしてきて、目を逸らしながら「なんでもないです」とだけ投げやりに返した。
「ん?見惚れてたか?」
「(自意識過剰なのかな………)」
「なまえ、なまえ、思ってること、口にでてる」
「ドフラミンゴさんって、自意識過剰なんですか?」
「なぁ、それ、わざわざ言い直す必要あったか?」
見惚れていたのは否定できないけれど、気恥ずかしくて素直にみとめられない。可愛くない。でも、そんな葛藤も、きっとドフラミンゴにはばれている気がする。
「ていうか、さん付け禁止っていったろ」
不満げに口を尖らす様子は、大人の男がするものとはとても思えなかったけれど、憎らしいことに不思議と似合っていた。ドフラミンゴは、いいながら、覆いかぶさるように正面から抱き付いてくる。
「あー、ぜんぜん素直になってくれないなまえも、可愛い。……みてると、ヤりたくなってくんだよな………」
「ドフラミンゴさ……ドフラミンゴ、思ってること、口にでてますよ」
さん、の、さ、まで言いかけたところで、ドフラミンゴの手が怪しく腰にまわったから、慌てて言い直した。ドフラミンゴは、残念そうに手をひくと、片手で背中を撫で上げる。
「わざといってんだよ、フッフッ。まじで、なまえみてると、盛ってる若僧みたいに、勃ちそうになんだよ。我慢きかねェっつーか………、なァ、もう帰ろうぜ」
ものすごい不穏なことをいっているけれど、聞こえなかったことにして、ドフラミンゴをたしなめる。
「もうちょっと待ってください、ていうか、あなたの誕生日プレゼント買いに来てるんですよ?あとラッピング待つだけなんで………」
「もう、プレゼントなんていいからさ、なまえ本人でいいよ、プレゼント」
「(絶対言うと思ったけど、)ちょっと………それはいやです……」
「つれねぇの……フッフッフッ!」
そうして、ドフラミンゴは何が面白いのかわからないけれど、愉しげに笑った。