09:君の視線の先には

※現パロ


「なまえ、お前、アイツに好かれてるぞ」

そういわれたとき、目が点になってしまった。えっ、誰が誰のことを好きという話デショウカ?理解が追い付かず、ぱちぱちと瞬きを繰り返していたら、呆れたようにクロコダイルが繰り返す。

「あのウェイターが、てめぇを、だ」
「えー。それは、たぶん……ていうか、絶対、ナイと思いますよ」

ゆっくり言葉を区切りながら、断言する。話したことすらないんだもの。その様子に、クロコダイルはますます呆れ顔。


「そんなの、みてりゃ、わかるだろうが」

みてたらわかる、っていわれても、なぁ……。どういうことでしょう?と聞いても、それ以上教えてくれず。いったい、どういうことだろう。仕方がないから、自分で確かめようと、目線をやったら、目があった。すごい勢いで、そらされた。

ほらみろ、ぜーんぜん、私のこと好きじゃないじゃない。不満げに唇を尖らせる。
「すごい目をそらされました。どちらかというと嫌われてる反応だとおもうんですけど……」

テーブルの上の料理をひとくち運んで、もぐもぐと咀嚼する。うん、美味しい。食にうるさそうなクロコダイルのお気に入りレストランなだけある。ここを紹介されてから、私もすっかりお気に入りで、ときどきひとりで顔をだしたりもする。


「なまえ、お前……その鈍さ、たまにわざとやってんのかと、疑いたくなる」
「え、なに。なんでですか?」

クロコダイルが、額に手をおいて、重たい溜息をついた。いまの会話の流れで、どこに鈍さがでてくる要素があったのだろうか。

「………いったん、なんで目が合うか、考えた方がいいぞ」
そういわれ、再び先ほどのウェイターを探すと、すぐみつかる。また目をそらされた。

「それは、私がみるからですかね?」
「お前がみるだけじゃ、だめだろ」

それは、あっちだってこっちをみてるから…………ん……?、あ。気づいた瞬間、ぽかんと口があいた。急に恥ずかしい。見るたびに、目が合う。それは、向こうも私をみてるから、ということで。にわかに信じがたいけれど、それは、つまり。

「ほんと……、でしょうか?」
「多少の好意は抱いてんじゃねぇか」
「……そんなこと、よく気が付きますね」
「…………そりゃあ、みてるからな」

「すごい観察眼、さすが、できる男は違いますねー」と、思わず感嘆の声がでた。

そうして、やっぱり信じられないから、ひとり「本当に好かれているのかなぁ」と反芻する。だって、ウェイターだから、お客さんに気を配ってるのは当然のことじゃないか………?


まだ気がつかねぇのか、との、クロコダイルのぼやきは、誰にも聞き咎められず、空中にむなしく霧散した。



『視線の先には、君。(いい加減、気づいておくれ、頼むから)』

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