過去clap

「ねぇ、クロコダイル。起きてよぉ」
「ん…………あぁ……」
寝ぼけた声をだしながら、もぞもぞとクロコダイルが寝返りをうつ。そんなクロコダイルをみて、私は呆れて溜息をひとつ。

クロコダイルは寝起きがよくない。いや、はっきりといってしまおう。悪い。寒い冬場の朝なんかは特に。せっかく用意した朝食が冷めてしまうじゃないか、と毎朝毎朝困ってしまうほど、ベッドにひっついて離れない。安眠を貪る、とは彼のためにあるような言葉だ。平日あまり寝ない分、寝だめをしているのかもしれない。それでも、困るものは困る。ほうっておいたら昼過ぎになっても寝ているのだもの。

「朝だってば……」
そういいながらゆさゆさと肩を揺らす。だめだ、起きてくれそうにない。こうなったら実力行使だ。ブランケットをはぎとってやる。

「………さみィ」
と、不平不満を押し出した不機嫌な声をあげるのは、クロコダイル。ぼふん、と柔らかな枕に顔をうずめてうつ伏せになってしまった。いつも、外ではぴっちりと決めている彼の、こんな情けない姿をみれるのは、もしかしたら私だけかもしれない、と思うと妙な優越感はあるものの起きてくれないと困る。今日だって、予定が詰まっているんだから。
「クロコダイルが起きてくれないから、ブランケットはとりあげちゃった」
「…………」
あ、顔こっちにむけた。うつぶせになったせいで髪が乱れて目元にかかっているけれど、眉間には不機嫌そうに皺が寄せられている。眉の下に収まっているいつもは凶悪な目は、眩しそうに細められてて。また枕に顔を戻してしまった。

もう、仕方ないなぁ。

ブランケットを、クロコダイルの手が届かないベッドの足側においてから、すっかり拗ねてしまったクロコダイルのご機嫌取りと、枕元に戻る。と、そのときぐいっと手をとられる。
そのままベッドに引きずり込まれ、バランスを崩して足元がつんのめる形でクロコダイルの方へ倒れ込む。
「……さみぃから、もうちょっとそばにいろ」
吐息とともにはきだされた掠れた低い声。クロコダイルの口元には、にやりと、悪戯気な笑みが浮かんでいた。首元に腕をまわされ、引き寄せられると鼻の頭にキスされた。すっかり目は醒めているよう。なんだ、眠そうなのは私を捕えるための演技だったの?

そんなある日の冬の朝。

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