※高校生春奈ちゃん。
「 好きだ 」
その言葉で
世界が瞬いて、
息を止めた。
涙が出そうなくらい幸せなのに、
例えば今すぐ自分の首を絞めて、死んでしまいたいと思う。
(勿論、実際は死にたくない)
だって、そうでしょう?
兄が私に何かを差し出す
「お前が高校を卒業したら、渡そうと思っていた」
「…」
そう言って渡されたのは青い小箱。躊躇いながらも蓋を開ける。
中に入っていたのはシンプルな装飾が施されたシルバーリングだった。
私は思わず兄を見上げた。
残念ながら、私はこれの意味が分からない程もう子供ではない
「どうして」
「…、
止めに、したかった。」
二人きりしかいないサッカー部の部室が更に、「静」 を語る。そして、目の前に立つ自分の兄である人の唇から紡がれる一語一句にこんなにも動揺している自分がいた。
「こういう、関係を」
兄の云った「関係」とは、血の繋がりとか、そんなものだけを語っているのではない。
それを嫌という程理解している私はそっと目を伏せる。
どうして、
いくらさ迷っても見つからなかった葛藤の出口はここにあるのに、求めていた人は最初から側にいたのに。
私は、
「春奈、」
「っ……
大好き、ずっと好きだったのっ………!」
そうだ。
私は怖れている。
兄妹という関係の先へいくこと
これまでと変わってゆくことを
今でこそ、名字は違えど私と兄は同じ母親の胎内から生まれた兄妹で、
その真実が、胸を傷め続けてきた
私は悲劇の内にいることに慣れていたのだ
それどころか、叶う筈のない恋にある意味陶酔すらしていた。
密かに軽蔑してきた赤の他人に恋する女の子と、そういった意味でなら、自分も同じだ。
なんてことはない、同じ、だったのか。
――――駄目。
泣いてしまう。
貴方はそんな私をそっと抱き締めた。
「っ……ごめんなさい」
無言のまま、懐かしい手つきで私の髪を梳く。
「いろ、んなこと…考えちゃって」
「……大丈夫」
「、うん…」
大丈夫。
そう言った貴方の声が
泣きそうに震えていたから、
たまらなく愛しくなって
私からも抱きしめ返した。
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叶う筈がないと思っていた恋がある日突然、現実になったら信じられなくて変なところで臆病になってしまうと思うのです。
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この小説は自分を出してしまった感があります。
鬼道兄妹には幸せになってほしいです
2011.08.20 加筆・修正
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