※キャラが定まってません
※×というより+
















(あんまりにもきれいにわらうから、
なんにもいえなくなったんだよ)







――今日も僕はまたいつものように目を開けて、いつものように眠るはずだった。

だけど、

君に会った。












真夜中、人の気配に目を覚ます。



むくり、とユウヤがベッドから起き上がると、一人の筈の病室の端に
小さな、うずくまっているような人影があった。

何も言わずただただその影を見つめているとやがて空気が震え、声がかけられる



「あの、勝手に入ってごめんなさい


ここの病室今まで誰も使ってなかったから…」


「…………」



夜の闇に慣れた瞳はやがて人影の全体を捉えた。

左手に点滴の針を指して、
なんだかおぼつかない足取りでこの部屋に入ってきていたのは、

藍色の髪を三つ編みにして、月の髪飾りをつけた


―僕よりも少し年下の女の子



「…看護婦さんとか、お医者さんから隠れて、1人になりたかったの」

「………」



――――1人に?



「怒ってる?」


その女の子がさらに不安そうに僕を見てきたから慌てて首を振る。

そしたらその子はふんわりとした笑顔に戻った。


僕は一瞬だけどきりとする。


「お兄ちゃん、名前は何て言うの?」

急にそう訊かれて戸惑った。それでも自分の名前を口から絞り出す。



「、ユウヤ。……灰原ユウヤ」

「ユウヤ…くん

私は石森ルナって言うの」

ルナという子は点滴の下がった棒に捕まりながら少しだけ、僕のいるベッドに近づいてくる。


「私も、ここに入院しているの。小さい時からずっと」



僕よりも白い肌のいろ。それに刺さる点滴の針。

見ていたら、
何故か分からないけど胸がチクリとした



「いつ頃からここに?」
「おととい、くらい」
「前はどんな病院にいたの?」
「…」
「私ばっかり質問してごめんね」


頭を黙って横に振る。
相手の方から話しかけてくれるのは、むしろ嬉しかったから。






―最初に目が覚めた時僕は、今と同じような白いベッドの上にいた。


******



「「ユウヤ」」




側に座ってた男の子がびっくりしたように名前を呼んだ。





彼はアルテミス…大会の決勝戦にいた内の1人。
ずいぶんホッとした様子で笑っていたのを覚えている。



あの時みせてくれた笑顔は、なんだか酷く懐かしかった




それから暫く、僕は真っ白い部屋で眠ったり起きたりを繰り返した。

ジンという男の子はしょっちゅうお見舞いに来てくれた。




そんなある日、


少しずつ立ち上がれるようにもなったから、自然が多くて(ってお医者さんが言ってた)一般の患者さんも沢山いるこの病院へ行くことを薦められた。


********


ユウヤはベッドから抜け、壁に立て掛けられていたパイプ椅子を引っ張り出す。

「座って、ってこと?」
「うん」
「ありがとう」

ルナは静かに椅子に体を預けた。

「わたしね、ここの階のこの病室から月を見るのが好きなの」

「…………」


(じゃあ、今日も月を見たくてここに来たのかな)


ユウヤは彼女のために、窓際に近づいてそっとカーテンを引いた。そうすることが自然なことのように、



「それにね、私の名前のルナはね
お月さまっていう意味なの…」


カーテンの隙間からぽっかりと顔を出した月が、無機質な部屋を照らす。





「月…」

「そうだよ」









二人して、何も言わずに夜空を見上げる。


ユウヤにとって、どこか遠くて寂しい存在だった月が今夜はとても近くに感じられた。






―こんなに穏やかに
月を見たのはいつ以来だろう?







となりのルナになんとなく視線をやると、彼女もまたユウヤを見ていた。

そうして先程のように自分に向かって、目を細めながらやわらかく微笑む。






(そんなに、


きらきらした目で見つめないで)







目蓋の裏が熱を持ち始める。








(どうしてかな、)







その笑顔に触れると、


泣きそうになってしまうんだ。














「ねえ、また遊びに来てもいい?」



遊び、の意味がよく分からなかった僕は首を傾げる。

「もしかして、誰かに会うの止められてる?」


「(誰かに、)」




僕は思い出してみる


この部屋に来るのはジン、ジンの執事さんと、お医者さんや看護師さんくらいだ。
けれど、その人達に誰かを病室にいれちゃいけないとは言われなかった。多分。


「言われて、ない」
「じゃあ、来てもいい?」

うん。

返事の代わりに、大きく僕は頷いた。









**************



ルナが帰った後も、ユウヤは暫くの間カーテンを開けたままで月を眺めていた。
月の朧気な輪郭を目で追いかけてみたり、模様をじっくりと見つめてみたりした。



漸くベッドに戻ったかと思えば、ルナとの会話がくるくるくるくると脳内で繰り返されていた。




「「私の名前」」


「「ルナはね、月っていう意味―」」




「「また遊びに来てもいい?」」





やがて、ユウヤの身にとろりとした眠気がやってくる。


耳に残った声が子守唄のように、
夢の世界へ導いていく





(ああ、)






(なんて優しい夜)





窓の外の月に見守られるようにして、ユウヤは深い眠りに落ちた。






月の棲む窓辺









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ダン戦のNLCP大本命ユウルナでした^^
どっちも好きだから二人で幸せになってほしい…

この話で、ユウヤ君は最初全く喋らなかったんですが
これは文章的にも辛い…ということでジン君を出動させました(笑)


ジン君との関わりを経てからルナちゃんと出会った…その設定のほうがユウヤ君の性格や行動の幅を広げてあげられるかな〜と思ったんです

が、見事に消化しきれませんでした…ははは


この二人が出会う、とかアニメで何かしら補完があるのを信じてる。信じて、る…!



20110911

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