ああ。こんな暑い中、買い出しだなんてツいていない。


私は、となりの立向井くんに向けて呟く。



「アイス、溶けないかなあ」

「それはちょっと心配ですよねー…」


夏休み中の部活恒例イベントと化してしまった、休憩時間に部員で食べるアイスの買い出し。
本日のジャンケンで負けたのは私と立向井くんだった。


そして、ギラギラ光るお天道様の下、コンビニまで部員全員の(マネージャーの分も)アイスを買ってくるというなんとも過酷な所業を強いられている。



買い出し専用のエコバックはもう、いろんな種類のアイスでパンパンだ。立向井くんと半分ずつの量を分けて持っても結構重い(壁山くん分がハンパなく…)



ジャンケンで負けた時の私の心情はそれはそれは絶望的なものだった。だけども隣の立向井くんは意外にも平然としていた。


いきなり、前を歩く彼が振り返る。



「音無さん、こっちから帰りましょう」


彼が指差すのは私があまり知らない道。

「え、でも」

「この先少し日影になってますから」


さ、行きましょう
そう私を急かすと、彼は私が持っていた袋を取り上げてさっさと歩きだした。


「え、あちょっと!」

「重いでしょ?持ちます」
「大丈ー夫だってば!」


彼は私の言葉も聞かないでどんどん行ってしまう
「もう…」

「あはは」

笑うな〜と少し怒った素振りを見せてみても動じない。


なんだか、悔しかった







あ、そうだ。



私は彼の持つ袋から、ひとつ、自分で選んだアイスを取り出す。
それを彼の目の前で開けたら、


「?」

「ほらほらー羨ましいでしょー」

「………」

視界でちらつかせる。
少し得意げになり、一口食べようとしたその時、薄く切った檸檬が入っていることに気づいた。

「あ」

「どうかしました?」

「私、」



檸檬は苦手だったんだ。
食べられない訳じゃないのだけれど、口に入れた時のなんともいえない苦味がダメで、
勿論、下にある檸檬味のシロップは平気なのだけど…

「檸檬、苦手なんですか」
「う、」
「じゃあ僕食べますよ」

「ほんと!やった」

立向井君が何気なく口を開いたので、私はスライスしてある檸檬を摘んだ。そして、彼の口に運ぶ。
それを、口元から離す瞬間。






唇が、指に、触れた


「あ、」



「っ!ごめ!「立向井に音無!買い出しご苦労様!」


びっくりした私たちは、同時に声のした方を見る。すると、キャプテンと…お兄ちゃんが校門の前に立っていた


しまった。

もう学校の前だったんだ。
私達の間になんとも気恥ずかしい雰囲気が広がった。










隣から絞り出したような声が聞こえた

「…それ、甘いですね」


「檸檬なのに?」

「甘い、です」

「そっ、か」「はい」




その後は
何も言えなかった




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たちむーの死亡フラグ☆
(おにいたま的な意味で)
アニメの立春に萌えた結果の産物。





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