食べて、殺して
ジュリオ誕SS５
※ちょっとグロテスクな表現ありますので注意
「‥‥‥っ‥あっ、あっ、は‥」
俺は狂った犬と許されぬ交わりに身を堕としていた。それは決して許されない二人の秘め事だった。だが秘め事というめんどくさいものを背負うのは嫌いだった。なぜなら秘め事は必ず暴かれてしまうものだから。それを分かっていながら俺は秘め事を抱え、それを背負って結局その通りになってしまった。
「‥‥ジャンっ‥‥‥！」
「‥‥はぁ‥あ‥あ‥出‥て‥‥‥」
荒い吐息が俺の身体に伝わって、無我夢中で貪っていた狂犬は俺の中を己の欲望でいっぱいに満たしてもなお足りないといったように口元から唾液を零す。腰を持ち上げ大きな手で掴み固定すると休む暇もなく抽出が始まる。リズムのとれた音楽を奏でるように激しく腰を打ち付け、白い液体を俺の中へ噴出する。何度も何度も流れ込んでくる熱いそれは俺を汚す。
「‥ジャ‥さ‥‥！」
一度抜けば中からどろりと精液が流れ出し、足りないと唸れば狂犬を満たしきれない俺の中に再び挿入する。目には涙を溜め、動けばそれは汗とともに俺の胸に落ちる。
「‥はぁ‥ん‥ふぁ‥っ！」
半開きの唇から尖った牙がチラリと見え、唇を覆われ舌を絡めとられると噛み付かれ舌を切る。口内から流れ出した血液を吸うように舐めて何度目か分からない欲望を再び俺の中へ流し込む。
「‥ぁ‥はっ‥ジャン‥さ‥ん‥」
それしか言わぬ目の前の狂犬と満たされぬ永劫に俺は哀れだと思った。
「だったら、俺のこと食べてみる‥‥？」
「‥‥ジャ‥さ‥‥？」
「そうすりゃ腹は俺で満たされる‥」
哀れな狂犬に俺は提案をして、口の中に指を突っ込んで促すように舌を撫でる。
「‥‥あ‥あ‥‥‥‥」
「俺のこと‥足りねぇくらい好きなんだろ？なぁ‥食べてみたいだろ？」
「‥‥‥‥ぁ‥ぁう‥」
「‥ほら、噛みちぎって、食べて、飲んで、そして‥‥ぁあﾞ‥」
そうしたら俺はこの関係を終わらせて、満足したコイツを見て嘲笑ってやれる。そうして胃袋の中で溶けて消えて無くなることが出来る。
「っ‥う゛ぁあ‥ぁ‥！」
言葉を言い切る前に目の前から狂犬が消え、次の瞬間視界に閃光がとぶ。ナイフが音もせずに皮膚を切り裂き、牙が刺さるのを激痛とともに下腹部あたりに感じ、俺は狂犬に噛み付かれ食われたのだと知った。
「‥‥はっ‥ぁ‥あぁ‥ごめんなさい‥‥‥ごめんなさい‥‥‥‥」
身体全体に激痛が走り痛みに背中が反るとピクピクと痙攣した。口元を赤に汚した狂犬は皮膚が全て剥がれて肉があらわになる局部に優しくキスをすると震える手で脱がされた俺のワイシャツを強く押し当てる。
（な‥‥ま‥さか‥‥）
ぼうっとする意識の中で見たその止血といわんばかりの行動に期待していた俺は徐々に落胆と後悔を覚えはじめた。狂犬は涙をボロボロ零し、震える手で止血する局部を撫でた。
「‥‥あなたは‥俺に‥‥」
狂犬は傷に負荷が加わらないように俺を抱き抱える。抵抗なんてできない身体はただ身を預けるしかなく、せめてもの抗いがしたくて思い切り爪をあらわになる鎖骨に食い込ませる。
「あなたを殺す‥‥証を‥‥‥食べて‥‥‥そうして‥‥‥」
「‥‥はっ‥ん‥‥」
俺が望んだのはこんなんじゃないのに、こんなはずじゃなかったのに。
「生きて‥そうあなただって‥‥望んでる‥」
「‥‥‥バカ‥や‥ろ‥」
正常には働かない思考で、俺は思った。本当は自分のほうが哀れであるということを。コイツとの関係を終わらせる為に、コイツに食われて死にたいなんていうのは言い訳だ。存在の証だったあの入れ墨も、今の俺も全て捨ててコイツとだけ生きたいと請いた。コイツの言うように食べて、殺して欲しかったのは、紛れも無い俺を殺す証だ。満たされぬ永劫からの解脱を求めたのは、紛れも無い俺自身だ。
「ジュリオ‥はぁ‥はっ‥俺は‥」
力のない手を狂犬の頬に添え、ぐちゃぐちゃになった顔を撫でて口元の血を拭う。
「‥‥ジュリオ‥」
目頭がやけに霞んで、身体が蒸発するほど熱い。狂犬の顔がぶれて視界が定まらなくなっていく。意識の喪失を感じて俺は眼を閉じる。頬を擽る雫がきっと俺の本性の化身。
「」
言葉は言えなかった。
（食べて、殺して）
20110215
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今年一番のアウェイな話かと‥。。。挑戦と言えど心苦しいことよ。しかし二人はそれでも愛し合いたい最強ワンコだったら泣ける。。。