守れない約束









「ねえ、約束した。もう危ないことしないって」
「…し、しゅっ…!」
「ゆずは約束破って、俺に死ぬような思いさせたんだよ」
顎を持ち上げ俯いていた顔が俺に晒される。傷口を隠す包帯と、腫れぼったい右目の痣が目に付いた。首から身体に巻き付いた包帯を指でなぞると、ゆずは顔を歪ませた。ゆずの涙を溜めた目を見ると、いたたまれなくなった。
「約束、した」
「ゆず」
「……ん、ゃ」
腫れぼったい右目に軽くキスを落とし、唇へと移動させた。
「しゅ、…んぅ…」
唇をグッと押し付けると、ゆずの力ない手が俺のワイシャツを掴んだ。
「……!?」
息をする為に半開きになった口内に、舌を入り込ませた。ゆずは初めての感触に目を見開き胸を叩いて抵抗した。いつもなら抵抗すれば舌入れを拒むことが出来るが、怪我をして熱がある今のゆずにはその抵抗は皆無に近かった。生ぬるい舌が歯列をなぞり、俺は控えめにゆずの舌に触れる。
「ゃめ……ん、んん…!」
包まれたように舌が絡み付き、ゆずは羞恥と恐怖に涙が零れ落ちた。クチュリと唾液が混ざる音がすると、蒸発してしまうのではないかというほど顔を赤らめた。
「…ふっ……ぁ、なにす…!」
舌を吸い寄せて唇を離すと、互いの舌が銀の糸で結ばれた。
「ねぇお願い…お願いだからさ……」
ゆずに抱き着いて怪我をした頭にそっと触れる。
「…っ……怪我…いてぇ、っの…」
「俺だって同じくらい痛いんだよ」
「………たくっ………」
俺は融通の聞かない人間だ。卑屈で頭でっかちで自分のことが何より大切な人間だ。
「ごめん…秀…ありがとう」
小さな手が優しく背中に触れて首筋にゆずの唇が当たるのが分かった。
「秀がいるから俺だって………俺は…痛みも苦しみも、どうしようない性も…受け入れられる」
「…分かってるよ」
「機嫌直せって……悪かった…」
「…分かってる」
「約束するから…」
「……………」
ゆずは困り果てたように瞬き何度もさせて次の言葉を探していた。
「お願いだから、……ううん、よかったそれだけ話せるなら、すぐ治るね」
「………お、おう…」
もうお願いだからの先は言えなかった。言ってまた無理矢理誓わせても、俺達には守れやしないのだ。俺とゆずはどこまでだって己の道をゆき、己を一番に愛してる。それを俺達は受け入れ合って、肯定しあう。そうやって救われた気持ちになる。

(でも…俺は喧嘩を止めるくらいの強さは欲しいな)







(守れない約束)
20110217
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ベロチューを二人にさせたくて挿絵と一緒に去年のいつかに書いたもんに手直し加えました。約束守れないなんて厄介だなと思いつつ‥二人はラブラブしあえとるから凄いなと。



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