不可解だから










「ん……はっ…………」

暗闇の中に響くのは、甘い声と、ヴヴヴという機械音。
彼は、快楽に堪えながら、誰かの帰りを待っていた。
ガチャンという鍵が開く音がした。誰かが、帰ってきた。
「……こんな醜い姿になっちまってよぉ」
「っ……シズ…ちゃんぁっ…」
扉を開けると暗闇の中にいたのは、折原臨也。玄関のライトが部屋に差し込んみ、シズちゃんと呼ばれた帰ってきた誰かを照らす。彼、臨也は、ベッドに両手を括り付けられ、後孔には、ヴヴと振動したバイブをくわえている。朝からずっとこの状態でシズちゃんと呼ばれた彼を待っていた。
「放置されて寂しかったか?」
「……んんっ…なわけ、ない」
「ココはピンとして、こんなに垂らしてんのにか?」
「…………ん、あぁぁぁあ!」
帰ってきた誰か、静雄はいきなりバイブの強さをMAXにした。すると臨也は、身体を反らして悲鳴を上げる。臨也は、すでに何度も限界がきていたが、限界から解放されることを赦されていなかった。臨也自身にはキツく絡まった紐が結ばれていて、自分で外すことも出来ない。
「あああ…!!」
「ノミ蟲以下だな」
よがる臨也に近付いて、キスを落とす。歯をなぞり、舌を強引に絡める。
「っ…」
「はぁっ…あああ…」
臨也は静雄の舌を噛んだ。哀れんだ目で見る臨也に、静雄はニコリと笑いもう一度どキスを落とす。舌から流れ出た血と唾液が混ざり合い、臨也の喉へ流し込まれる。今度は何度も離しては塞ぎを繰り返す。
「んぁぁぁ…はぁ、っ」
「そろそろ、手前を殺してやるよ」
バイブを思いっ切り引き抜くと、その衝撃に声を上げる。服を脱ぎ捨て臨也に覆い被さる。
「後ろもびちゃびちゃだな。男のくせによぉ」
「………んんっ」
耳をベロッと舐めて軽く噛む。
「臨也、俺のこと好き?」
「……嫌い、大嫌い、死ね」
今度は首筋や鎖骨を舐めあげ甘噛みし、無数の痕をつける。
「死ね、消えろ…っ、大嫌いだよ」
「……そーかよっ」
「じゃぁ、手前をどうしようと関係ねぇな」
静雄は自身をとりだし、臨也の後孔へ近付ける。臨也はそれを避けようと腰を引くが、静雄にしっかりと固定されていて動かせない。
「…ゃ…めろ…」
「やめてんじゃねぇーかよ」
静雄は中へは入って来ず、入り口付近で止めていた。しかし、少しだけ腰を揺らすと、急に激しく熱い衝動に臨也は襲われ、もどかしくなった。
「んんっ…ぁ…」
「はっ、感じてんのか?」
はっ、と侮辱笑いをし、臨也の入り口を撫でる。ビクッと身体が反応し、臨也自身が解放を求める。
「腰揺れてんぞ。あのうざいくらい大口叩いた手前はどうした?」
「んぁぁ…シズ、ちゃん…」
「その名前きもちわりぃんだよ」
臨也は静雄の名を呼んだ。いつもの余裕綽々な瞳だが、身体はそうではない。徐々に表情にも余裕は伺えなくなり、その瞳だけが臨也の抵抗だった。
「俺は静雄だ、ちゃんと呼べ」
「しず、お…ぁ…」
確かに自分の耳で自分の名前を聞いた。乳首をチュッと吸って、臨也の恍惚とした表情を見るとサングラスを外す。
「言え、臨也」
クチュリと、先端がわずかに侵入した。臨也は目を見開き、口から叫びが漏れる。一気に快感の波が押し寄せた。それでもまだ足りない。まだこの熱さが治まる何かが。
「俺を思うように操りたけりゃな、どうして欲しいか言え。俺は手前の考えてること分からんねぇんだよ」
「…ぃ……て」
「ん?」
「…ぃ…入れ、て……あぁぁ…!」
臨也が紡ぎ出した言葉を聞くと、即座に奥へ侵入した。待ちわびた熱に臨也の身体は喜ぶ。静雄もぎゅうと締まる締め付けに眉根を寄せて耐える。両手に括り付けられた縄が前後に擦れて痛い。腰を打ち付ける音とともにベッドのスプリングがギシギシと鳴り、次第にいやらしい水音も混じる。耳に響くこの音がさらに臨也をおかしくさせる。


分からないのは、こっちの方。
なにを考えるのか分からないのはこっちの方。

どうしてこうなったのかも、何故あんな奴の下で泣いているのかも分からない。

だから嫌いだ。

俺に全く分からないことはないはずなのに。

こんなに近くにいるのに、付き合いは長いはずなのに、シズちゃんのこと、全く分からない。

自分の思うようにいかない。

嫌いだ、大嫌い。

なのに――――――――

「んぁ……ぁあ…」
「解放されたくて臨也のこんなに先走り垂らしてん、な」
「……ちが、…」
張りつめたそれに静雄は触れると、先端をツプっと押し潰す。臨也は狂ったように声を漏らし、あまりの快感と苦痛にガタガタと小刻みに震える。
「もう一度聞く。臨也は俺のこと好きか?」
「ふぁあ……ぁあ゛あ゛!!」
裏筋を指でなぞり、紐の上から自分の手で握る。あまりの強さに臨也は涙が零れた。
「いきたいなら、言え」
「きら……う゛あ゛ぁぁあ…」
悲しそうな目で、静雄は呟いた。臨也から出されそうになった答えを必死で言わせないかのように、握る力を強める。臨也はもう限界だった。最後の理性も無くなっていた。早くこの快楽と苦痛から解放されたかった。静雄が望む言葉を言えばいい。強制された?嘘の本心?違う。
彼の愛を理解すればいい。
「っく……す…ぃ…す、き…好、き」
「ちゃんと、……言えよ…いざや……」
「静、雄…好き」

きっと静雄は自分の愛を分かって欲しかった。
キレイにはなれない、素直にもなれない。
こんな悲しいやり方でいい。
理解してほしかった。

一番理解しがたい臨也に。

一番理解してくれない臨也に。

自分の愛だけは理解してほしかった。

でも、分からない。
臨也に躊躇いはあったのか、無かったのか。
臨也は本気だった、そうではなかったのか。
臨也は、静雄の愛を理解出来たのか、出来なかったのか。

快楽に狂った言葉だったのか。

この言葉がホントだったのか。

「んぁあ……あっ…す、き…好きっ…はや、く…」
静雄は壊れたように腰を深く深く打ち付け、臨也の中を乱暴に掻き乱す。臨也は狂ったように喘ぎ、快感と苦痛の解放をねだる。自分らしさなど頭から消えていた。
「……くっ」
静雄は最奥を突くと、キツい締め付けに達した。腰を引き寄せて自分の精液を一滴もこぼさず流し込む。と同時に、巻かれている紐も外してやり、先端を軽く押し潰す。
「…ゃ、あぁぁぁあああ!!!」
臨也は今までにない甘い声をあげ、身体をしならせずっと耐えさせられていた快感と苦痛を解放した。びゅくびゅくと勢いよく飛び出し、自分の腹部を汚す。
「あぁあ…」
「すげぇ量」
まだ弱く射精している臨也を見てニコリと笑うと、恥ずかしさに唇を噛み締め目を瞑る。自分の腹に散りばめられた精液を舐めるとると、静雄はキスを落とす。口移しで飲み込ませると、満足そうに唇を離す。
「はぁ、…はぁ…シズ、ちゃん」
「………」
臨也の目が静雄を捕らえた。瞳の奥は真っ黒で今度はよく分からない。
「はぁ…はっ…俺のこと、好きな、の…」
「…………………さぁな、」
「…………んぁ」
静雄は何か言いたそうな臨也の唇を塞いだ。深く深く、まるで何かに恐れるように。でも、臨也は塞がれていなくても言えなかった。
「…まだ、終わったとか言ってねぇ」
「はぁ……あっ…」
「逃げられると思うなよ」


好きなら、好きって、素直に言えばいいのに。

好きなら、好きって、素直に言えたらいいのに。

彼等にはそれが出来ない。

理解するなら、それでいい。

遮る必要なんてないのに。

互いに分からないままが良いなら

最初からこんなことしなくても良かったのに。

彼らには、普通の愛し方なんて出来ない。

分からない だから嫌い。

分からない だからすれ違い、矛盾する。



分からない だから愛し合う。






20100310
・・・・・・・・・・
初シズイザです。シズ→イザ寄りつつ、内心どうか分からないという。もしかしたら両想いかも?今回は「不可解」が主題の一つです。相手のこと分からないからこそ、惹かれる。でも分からないからこそ、イライラするし、すれ違い矛盾する。臨也にとって行動も思考回路も分からない、良いように操れないシズちゃんはまさに不可解の対象であり、歪んだ興味をそそられる。シズちゃんは、矛盾愛ですかね。ホントに矛盾してて書いてる私にも不明でした。あえて簡単に言うと、素直じゃないヘタレ。でもそれなりに苦しんでるわけで、だからあんな報われない強制愛や矛盾愛に走るわけです。と同時に彼も臨也のこと本当は全く分からなくて感情爆発してしまった感じです。こんな二人を妄想して出来た話ですが、上手くまとまっていなくて悲しいです。
ここまでお付き合いありがとうございました。







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