伊地知の憂鬱


女主、男主どちらでも。

伊地知視点。五条→→→←名前さん



「名前って超可愛いよね。誰かにとられないか、僕心配で心配で…」
ねぇちょっと伊地知聞いてんの?
五条さんの相手は面倒くさい…任務帰り、車を運転しながら話に適当に相づちを打つ。聞き流していたことがバレ、マジビンタか?なんて脅してくる上司に胃がきりきりと音をたてた。
「それを苗字さんに言ってあげればいいんじゃないですか」
「…そんなこと言って嫌われたらどうすんの?キモいって思われたら?僕立ち直れないよ。伊地知だってマジビンタじゃすまされねぇぞ」
自分の前ではこんなに流暢に自分の思いを話すのに、苗字さんの前だとそうもいかないのだからこの男は全く仕方がないなと思ってしまう。
「…すいません。今のはなかったことに、」
じっと見つめられ、今の考えが読まれてしまったんじゃないかと、焦りから冷や汗が背中を伝った。





「五条さん、甘いの好きって聞いたからクッキー作ったんです。どうですか?」

苗字さんが五条さんにクッキーを渡しているところを目の当たりにしてしまった。さっと柱の裏に隠れ、気配を消す。決して覗きだとか、五条さんを冷やかそうだなんて思ってはいない。今出ていったら後で、伊地知が邪魔をしたと文句を言われるに決まっている。ここは隠れた方が正解だろう。五条さんに渡す筈だった書類を握りしめ、二人の会話が終わるのを待った。

「は…クッキー?頼んでないのにそんなもの、作ってきたの?」
…あぁ、わかっていたがどうしてあの人はこうも子供なのだろう。
「あ、ご…めんなさい。お仕事疲れてるだろうなって…迷惑でしたね、」
「そんなことしてる暇あるならさ、呪霊でも祓ってきなよ」
苗字さんは肩を落とし、目元が潤んでいるのが遠目でもわかった。五条さんはそんな苗字さんに気付いていないのか、べらべらときつい言葉ばかりを並べている。
「じゃ…ぁ、これは伊地知さんに食べてもらうことにします…引き留めてしまってごめんなさい…」
すっかりしゅんとしてしまった苗字さんが、自分の名前を口にしたことにはっとする。
五条さんの機嫌が悪くなって、その矛先が私に向いた瞬間だった。当然、私がここに隠れていることに気付いている五条さんが、こちらに目線を向け「いぢち、まじびんた」と口を動かしたのを見て絶望した。



「待って、名前。食べないとは言ってない。しょうがないから貰ってあげる」
「…は、はい。是非っ」
途端に表情を明るくした苗字さんに、五条さんは気付いてないのか?両思いなのだならさっさとくっついてしまえば良いものを…
変なところで臆病なあの男が、自分から告白なんてしないことだけは確かで、二人が付き合うのは当分先の話になるだろう。

あぁ…胃がいたい…。

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