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微睡みの中のあなた

最後にトムと会ってから2年が経とうとしていた。私は12歳になっていて2年分のトムへのプレゼントは溜まっていった。スクールの授業内容は11歳を期にどんどん難しくなって行った。私はほぼスクールには行っておらず祖母やゴミ捨て場から拾ってきた古めかしい本を拾っては読むを繰り返し読む毎日だった。スクールの先生は最初のうちは来ていたけどそれもどんどん間隔が空いて言っていつの間にかそれは1年に1回になっていった。そんな私に祖母は何も言わなかった。1年に1回。そう思うとやっぱり私の頭に浮かんでくるのはあのトムで、何故会えなくなったのだろうと毎日考えては枕を濡らした。トムの住所は分からないし、手紙を出すことも出来ずトムからもまた手紙が来ない。枕の下からトムから貰った手紙を出すとまたぽつりと私の涙が落ちた。毎回そうだからトムからの手紙は私の涙の跡がいっぱい、いっぱい残っていた。その日の夢は約2年振りに場所だった。相変わらずこの場所は何も変わっていなかった。トムはいるのかしらと小走りで木に近づくとやっぱりトムはいてくれて『とむっ!』と近づくとトムは「名前、名前っ」って抱きしめてくれた。久々のトムの優しい匂いで頭がクラクラになる。私達は会っていない分を埋めるように長いこと抱き合った。『トム、どうして逢いに来てくれなかったの?』「それは名前じゃないか。僕はずっとここで待ってたのに」『ううん、ううん、私はここに来たくても来れなかったのよ。それにしてもトムはかっこよくなったね。身長もおっきくなって、もう見上げないとトムの顔見れないや。髪も伸びたんだね。』前髪を触るとトムは「名前は相変わらずなにも変わってないね。」と笑った。『あのね、あのね、トム。私誕生日プレゼントを用意していたのだけど、持ってくるの忘れちゃったわ。』トムは気にしないでと笑うと「僕は名前と会えなくなった2年間色々あったんだよ。」『うん、うん』「僕が不思議な力だと思っていたこの特別な力は実は魔法だったらしいんだ。11歳の時僕はホグワーツっていう魔法学校に通うことになったんだ。寮制の学校なんだ。」『すごいね、すごいねトムは。私にはそんな夢みたいな学校想像できないよ』「ホグワーツに、名前がいたらきっと気に入るよ」『私もトムの横に座って勉強してみたかったな。私ずっと、ずっと泣いてたの。トムに会えなくなって。嫌われたとか思ったり…手紙も来なかったし』「ごめんね、名前。魔法が使えない人たちには連絡が取れないんだ。こうやってサマーホリデーとかで孤児院に戻ってくると手紙は出せるんだけど、ホグワーツからじゃ手紙すら無理なんだ。」トムは伏し目がちに肩を落とした。『そう、だったのね。トムは、私の事毎日思い出してた?私は毎日トムのこと思ってたよ。お腹すいてないかなとかちゃんと生活してるのかなって』「もちろんだよ。名前のことは忘れたことなんてないさ」私はふふふと笑うとトムは私にそっと触れて「ごめんね」と小さく小さく言った。『次はいつ会えるのかしらね…私はトムが大人になって行くのを隣で見て過ごしたいの。』私はちゃぷちゃぷと湖に片手を入れて水と握手をした。この湖は全く冷たくなくて不思議。どれくらい深いのかな?私はどんどんと湖に腕を伸ばしもうすぐ顔が水面に付く寸でのところでトムが私のとう片方の腕を引っ張りあげた。「名前!なにしてるの!」トムのこんな切羽詰まった顔は初めてで私は少し身震いをしてしまった。『あ、あのね、あのね、この湖はどのくらい深いのかなって気になっちゃって…ごめんなさい。好奇心には勝てなかったわ。』としょんぼりとするとトムは不機嫌な顔で「危ないことはしないで!」と声を荒らげた。『ねぇ、トム。私達は将来一緒に入れるのかな?』「どうしたの、いきなり」『ほら、ホグワーツってところはもちろん共学でしょ?と、トムは優しいから他の子らはほっとかないなって。好きな子が出来たら教えてね、言ってね。それは辛いけど優しくされるよりかはちゃんと言ってくれた方がマシだから』トムは大笑いをしながら、「大丈夫だよ。僕は名前しかいないから」と言うと優しく胸元のネックレスを指で触る。「こうやってみるとやっぱり下手だな。今度はもっといい物を送るから」私はネックレスをぎゅっと握りしめ『ううん、ううん、これが。これがいいの。大丈夫だよ。これで大丈夫。』と言うとトムは「そう、僕は図書館で少しばかり居眠りをしてしまったようだからもうそろそろまた暫しの別れだ。いつも、僕を想っていてくれてありがとう」私も私もありがとうと言う前にトムはまたスっと消えてしまった。