「うふふ、お花畑に咲いているコスモスと私の髪の色、どちらが綺麗かしらねえ」
「うん? どうだろうね、でも、コスモスを君の髪に飾ったらもっと素敵なんじゃないかな」
「いやねえ。そこはきみのほうが綺麗だよって言うところでしょう?」
「あ、そうか。ここの生まれじゃないからね、疎いんだ」
「知ってるわ。そういうとこも好きよ」
春の風を受けて踊るスカートと彼女の髪に、ふと、自分がどこにいるのか分からなくなるような錯覚に陥る。もしかしたらきみは、いつもこんな感覚なのかもしれないな、だなんて思ったりもした。
どこか人間離れした彼女の容姿と感性は、きっと彼女にとっての誇りで、重りなのだろう。彼女は必死にこの世界に手を伸ばしているのだ。掴んでくれと、掴んだら離さないで、と。奇抜で美しい髪の色と、白い服をまとって。
「ねえ、明日は何色がいいと思う?」
「そうだね……茶色。ココアブラウンなんて、どう?」
「あらまあ、それって普通。でも、いい色かも」
「ぼくはそれが、きみによく似合う色だと思う」
手を掴んだら、離さないでね。きみの表情は確かにそれを物語っていた。離すわけがないじゃあないか、こんなに可愛くて愛おしいひとを。そっと伸びてくるきみの手を、ぼくはぎゅっと握った。そうするときみはいつものいたずらな可愛い笑顔を浮かべて、ぼくの額にキスをしたのだった。
「……参ったなあ。ところでずうっと気になってたことがあるんだけど」
「なあに?」
「きみのその色んな色に変わる髪、一体何で染めてるの?」
「あら、あなたは知ってるでしょ。女の子はみんな、魔法使いってこと!」
20140705 執筆