novel | ナノ

嫉妬の日【リヒ真】

今日は普段海外にいるリヒトさんとハイドが久し振りに休暇が出来て俺ん家に遊びに来た。
正直休暇が取れたのも遊びに来るのも今さっき聞かされたんだけど…出来ればもっと早めに教えて欲しかった。何も聞かされてなかったからお菓子類が全然作れてない…材料も無いし…。

「べっつに気を使わなくていいっスよー?」

なんてゴロゴロとクロと一緒に寝っ転がってくつろいでるハイドが言う。

「いや、そう言っても折角来てくれたんだ。茶菓子ぐらい出したかった…。」
「アンタほんと気にし過ぎっスよー。じゃあお茶!お茶くれりゃそれでいいっスから!」
「そうか…?………わかった…リヒトさんもそれでいいですか?」
「………あぁ…。」

腑に落ちない感じはするけど、とりあえずお茶を出すことにした。
とりあえず紅茶をいれて出す。
「ありがとーっス」と言ってハイドは紅茶を飲む。リヒトさんも静かにだがカップに口を付けて飲む。
なんか、リヒトさん凄い静か………嵐の前の静けさみたいでちょっと怖いかも…。

「頼むから、今度からはちゃんと事前に言っといてくれよ…。」
「そーれじゃサプライズにならないじゃないっスかー!」
「こっちにだって色々あるんだよ!」
「くははっ、悪かったっスよー!」

ケラケラ笑いながら謝ってるのか謝ってないのか分からない調子で言う。全く、て呆れながらもついつい予定を無理矢理にでもあけてる俺な…。自分に対して苦笑がこぼれた時

「ぁー、久々の真昼ー真昼っスー。」
「うぉっ!?」

紅茶を飲んでいたと思っていたハイドがいきなり俺にのしかかってきた。重い。

「ハイド!重い!どけ!!」
「いいじゃないっスかー!久々なんスから!真昼補給っスよー。」
「補給ってなんだよ!!」

重い。うん、とにかく重い。俺よりも身長が10cm近くあるからか。くっそ、縮め。もしくは寄越せ。
なんとか踏ん張って崩れ落ちない様に耐えてはいるけど、結構キツイ。そろそろキツイ。

「真昼ぅうううううううあああああああああああいたたたたたたいたいたいたいたいいたいいたい!!いたい!!髪引っ張らないでくれっス!!」

突然ハイドの悲鳴が聞こえ、顔を上げたら眉間にめちゃくちゃ皺を寄せた不機嫌なリヒトさん。目つき怖いです。

「てめぇ悪魔の分際で何天使に手を出してやがる死ね死ぬまで死ね俺が浄化してやる。」
「いいじゃねぇっスかー!!真昼に会うの久々なんスから!!てかリヒたんだってさっきからそわそわしすぎなんスよ!!話したいなら話しかけりゃあああああああああ強く引っ張らないでえええええええ!!!」

リヒトさんが強く引っ張っているせいでハイドの体は上がり、その隙に俺はハイドのしたから逃げるとマイペースにゲームをしていたクロの隣に座る。

「…お前さ、ちょっとはかんがえてやれよ…。」
「は?何をだ?」
「………鈍感…めんどくせー…」

クロの言う事にただただ首を傾げながらいまだ騒いでいる2人を見る。
リヒトさんも俺ん家という事からか蹴ったりなど周りに被害が出る暴力はしていない。ただハイドの声がでかいから近所さんからの苦情が怖い。まじで。

「えっと、リヒトさん。そろそろ離してあげて下さい…。」

おずおずというとリヒトさんはむすりと拗ねた様に唇を尖らせながらパッと手を離した。ハイドは予想してなかったのか顔面から落ちた。あれは痛い。

「いったぁー、もー、リヒたんってば嫉妬も程々にして欲しいっスねー。自分の気持ちちゃーんと言わなきゃ俺がおとしちゃうっスよぉおおうぶ!」

頭をさすりながら喋っていたハイドに蹴りが入った。
いつもなら家の中だからやめてくれと言えるが、今はそれどころじゃなくて………

「…え?嫉妬?」

ハイドが発した気になるワードを復唱するとリヒトさんの肩がビクリと反応した。どうやら図星らしい。あと、耳も赤い。

「そーそー嫉妬。リヒたんってばすーぐ妬くんスから。困っちゃうっスよー。」

すぐに復活したハイドが困ったという様にやれやれと溜息を吐く。

嫉妬、そっか、だから………

「ハイドが俺に絡んできた時あんなに怖かったんだ…ハイドを取られたと思って。」

ポツリと呟いた言葉は皆に聞こえたらしく、嘘だろとでも言いたげな表情だ。リヒトさんにいたってはこの世の終わりみたいだ。あれ?違った?

「うおおおおおおぇぇぇぇぇえ!!!やめてくれっスよ真昼!!なーんでそうなるんスか!!そんなわけないでしょーが!!」
「ぇ、あ、違った…?」
「何もかもが違ぇよ……めんどくせー…。」

口元抑えて震え上がるハイドに呆れた様に溜息を吐くクロ。どうやら違ったらしい。ちなみにリヒトさんは固まってる。
違うんなら、なんだ?嫉妬する原因とは…?
もんもんと考えている俺に痺れを切らしたのかハイドがバンッと机を叩きながら立ち上がる。

「あーんね真昼!敵に塩を送りたくはないけどコレだけは言っとくっスよ!リヒたんが嫉妬した原因はオレじゃねぇっスしにーさんでもねぇっスからね!!さーすがに憐れに思ったんでコレだけは言っとくっス!!」

必死の形相で言うハイド。なるほど、違うのか。
ん?じゃあなんで嫉妬なんかしたんだろう?また俺が首を傾げる。
するとさっきまで固まっていたリヒトさんがいきなり動いたと思うと近付いて来て俺が座っているソファの背もたれに手を付く。距離が近く、リヒトさんの真っ直ぐな瞳に目が離せない。

「お前だ。」
「………へ?」
「だから、お前だ。天使見習い。」
「……………俺、ですか…?」

聞き返すと頷かれた。そしてすぐに離れると椅子に座りまた紅茶を飲む。
話の流れからして多分嫉妬した原因の事だろう。て事は、俺が原因…?なんで?わからない。けど、

「ご、ごめんなさい…?」

とりあえず謝っておく。リヒトさんは俺をちらりと見た後「別に良い。」と視線を外して紅茶を飲む。

「まーひる。ちなみに俺も真昼が原因で嫉妬するの多いんスからねー?殆どがにーさんにっスけど。」
「え?」

突然のハイドのカミングアウトに目を瞬かせる。ハイドもかよ。まじか。
ハイドに羨ましそうな視線を向けられたクロは「…いえーい…。」と呑気にピースしている。ハイドの額に青筋入ってるぞ。
「ふんっ!」とそっぽを向くとリヒトさんの方へ歩いていった。クロは何もなかったかの様にゲームの続きをしている。

うん、まぁ、とりあえず………

「………なんで、俺…?」

俺はソファに座ってもんもんと1人で原因を考えていた。



「………リーヒたーん。あの様子じゃ、真昼分かっねぇっスよ…。」
「…それでも良い…。」
「あれ?いいんスか?」
「これから分からせていけば問題ない。」
「………くはっ、相変わらずっスねぇ。でも、真昼は渡さねぇっスよ?」
「てめぇのじゃねぇだろクズネズミ。死ね。死ぬまで死ね。」

「………あれ見ると、やっぱり仲いいよな、あの2人。」
「…勘違い…めんどくせぇー…。」

prev / next