小説 | ナノ
キャンディマウンテン
※同棲設定
「ねぇねぇクロウ、一緒にお風呂入ろー!」
ピンクと白が混ざったような、ちょっといびつな三角をちょこんと手に乗せた乙撫が、満面の笑みで誘ってきた。
もちろん、答えは決まってる。
「……遠慮しとくぜ」
「えぇええ!!折角泡風呂にするやつ買ってきたのに、一緒にもこもこしようよー!!」
「二人で入るには狭いだろーが」
「あたしもクロウもちっさい方だからだいじょぶだよー!セーフセーフ!」
「やかましいわ!!」
ぶーぶーと口を尖らせる乙撫に、内心苦虫を噛み潰したみてえな気持ちになる。なんだよキスしたくなんじゃねーか……って、そうじゃなくてだな。正直、あれだ。つまりその、オレも若いんだよ。自制がきかないっつーかなんつーか。でも盛ってばっかって思われたくねぇし。かといってそれをわざわざ説明すんのもきまりが悪いだろ。こいつは、そういう男心をこれっぽっちもわかっちゃいねえ。
……まぁ、誘ってくれんのは純粋に嬉しいんだけどよ。
「ねぇクーローウー!!」
「しつこいっつーのお前は!ったく、その代わり風呂用意してやっからよ」
「ぶー……」
不満げにぷくりと頬を膨らませる乙撫の手から、泡風呂の元ってやつを取って足早に風呂場へと向かう。くそ、悔しいけどあのまま話してたらほだされかねねぇ……。
バスタブをさっさと洗って、砕いた泡風呂の元を浴槽に放り込んでから勢いよく湯を注ぐ。おぉ……スゲェ、ものすげぇ泡立ってきて普通に楽しいなコレ。
同時にむせかえるみてぇな甘い匂いが湯気と一緒に立ち込めてくる。
念のためシャワーを注いでもこもこ盛り上がる泡を楽しんでると、乙撫が様子を見に入ってきた。
「おぉー!すごいすごーい!」
「へへっ、あとちょっとだから待ってろよ!」
得意気にそう口にしながら振り返ろうとしたその時、ドン、と押されて。ぐらりと重心が傾く。
そして。
「っぶぁあ!!てめっ、なにすんだ乙撫!」
「へへー」
いつのまにか二人揃って泡の真っ只中にダイブしちまってた。びしょ濡れの泡まみれ。甘ったるい匂いと――満足そうな笑顔。
「一緒に入ろ」
こいつ……絶対狙ってただろ最初から。無邪気に笑ってもオレは騙されねぇぞこの確信犯め。ああでも、くそ。オレはほだされたんじゃねぇ、この甘い、バニラみてぇな匂いと湯気にのぼせただけだ。
「ったく……じゃあ服脱ぐぞ!」
「わぁああいやったー!背中流しっこしようね!」
はしゃいでっけどよ、お前。
どうなっても知らねぇからな?
20111209
20140202:修正
キャンディマウンテンはラッシュのバブルバーの名前