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校庭の独占欲

四限目の体育は、二年との合同授業。先週の体育の終わりがけ教師に言われた事を思い出しながらクロウは、早く四限目になれ、とそればかりを考えていた。もちろん黒板の文字も数学教師の声も頭には入ってこない。
一年B組のクロウには、恋い焦がれる相手がいた。ひとつ学年が上の、自由奔放な女生徒。乙撫である。
出会いは春。晴れて志望校に入学したクロウは、以前より交流のあった二年の遊星、三年のジャック・鬼柳と屋上で昼食を取ることになっていた。自前の弁当を手に階段をかけ上がった初日、どうやら一番乗りだったらしく屋上は無人だった。なんとなく拍子抜けしたクロウは、弁当を適当にそこらに置いて、柵に寄りかかり周囲の景色を眺める。まだ4月も上旬で、少し冷たい風に校庭の桜が花びらを散らす様をぼんやり綺麗だと思っていると、階段の方から騒がしい声が聞こえてきた。聞き覚えのある男の声と、知らない女の声。

「ひゃっほー!いっちばん乗りー!!」

紺色がかった、いかにも活発そうなショートの黒髪に、はためくスカートの下から覗くスパッツ。
跳び跳ねながら姿を表したのが、乙撫だった。

乙撫は遊星のクラスメイトで話もあうらしく、昼食メンバーの一人だった。性格は至って天真爛漫、いきなり歌い出すことも珍しくない変わり者。朗らかな笑顔の、小柄な少女。
最初はそうでもなかったのだがいつの間にかクロウは乙撫を意識し始め、目で追うようになっていった。

今日の四限目は、そんな乙撫との合同授業。楽しみでないわけがない。
そんなこんなで迎えた四限目。
秋風吹きすさぶ校庭で、体育服の乙撫を横目でチラチラと窺うクロウの姿があった。

「うー、さむさむ」

二年の学年色である緑のジャージに、ブルマ。何の方針なのか知らないが、何故かこの学校の女子はハーフパンツではなくブルマ着用となっている。もちろん、ジャージのズボンはある。

「……寒いんならよ、ズボンはけばいいんじゃねぇか?」
「えー?だって動きづらい気がすんだもん」

肩をちぢこませ足をぴったりと閉じる乙撫は、大きめのジャージの裾が太ももまできているせいで、パッと見ブルマをはいていないように見えなくもない。逸る鼓動と共に、ごくりと生唾を飲み下す。
目の保養だとは思うものの、この姿を人目に晒すのはいただけない。けれど――恋人でもなんでもない自分がそれを言及出来るわけもなく。

「……ズボンはいたら、昼飯ん時お前の好きなおかず分けてやるよ」
「うぇ!?あっ、玉子焼き食べたいぃいい!ちょっ、教室行ってくる!」

ダッシュで教室まで駆け出す乙撫の背中を見送る視線を、そのまま時計まですべらせる。あいつの足なら間に合うか、なんてことを考えつつ、クロウは残りわずかな休み時間を示す長針を見上げた。

111126
ジャージブルマ落書きから突発的に思い付いた

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