碧霄の絵画 | ナノ それは、満月を遥かに過ぎた新月の日のことだった。

「ちょっと居すぎたかな…」

辺りはもうすでに真っ暗で、自分の足元ですら見えない状態。今日は新月だから余計に足元が暗く見える。こんなとき、満月だったなら少しは明るく見えるのだろうか。

「…なんてね」

満月の光は、自分にとって明かりを灯してくれるものではない。月の光を見て幸せだとか、綺麗だとか、そんなことも思わない。
何故なら自分は。

考えを断ち切るように頭を勢い良く横に振る。…また自嘲癖が出てしまった。先ほど、それは止めろとジェームズ達に怒られてしまったばかりだというのに。しかし、そうはいっても昔からの癖は中々直すことが出来ない。嫌なコンプレックスだとつくづく思う。
もう一度、薄い月の光を見上げる。

この光が美しいと思える日はもう来ない。どれだけ足掻いてもそれから逃れることなどできない。それが自分の運命なのだ。もう当の昔に諦めてしまった。

「…ん?何だろう、あれ」

ため息をついた先、暗い暗い道中に見つけた1つの包み。よく見ていなかったら恐らくそのまま通り過ぎていたほど小さなもの。
危険物だったら、と情けなくも怯えつつ、静かにその包みに近寄り手をかける。

驚いたことに、その包みには微かな温もりと振動があった。

「…これは、もしかして」

中身は安易に予想が出来た。私が持ち上げると僅かに動き、そしてまた止まる。泣きもせず、声もあげず。

だけど、それは確かに人の温度を持っていた。


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