都合のいい噂
ライフストリームが宿す可能性を開く扉、ポータル。
あたしたちはミスリルマインでポータルに迷い込み、愛や感謝をこめてプレゼントを贈り合うヴァレンタインデーを迎えていた。
「んん?お前ら、何してんだ?」
セブンスヘブン。
ティファ、エアリス、ユフィと一緒に話をしていると、バレットとレッドXIIIが戻ってきた。
「ヴァレンタインデーだから、お菓子を作る相談をしてたんだ」
バレットの問いにティファが答える。
ヴァレンタインデーといえば、愛や感謝の気持ちわ伝えるため、その気持ちを込めて相手にお菓子を贈る日だ。
あたし達がしていたのも、そのためのお菓子作りの相談。
それを聞いたバレットは、ははーん、みたいな顔をした。
「お、もしかしてクラウドにあげるのか?」
少しにやにやしてる。
けど、まあ、それは当たりというわけでして。
誰にあげたいかって、それを考えて真っ先に浮かぶのはクラウドの顔だ。
いつも色々気にかけてくれて、感謝している。
…のと。
いやま、好きな人っていう意味でも…あげたいのはクラウドなんだけどさ。
「照れることは無い。元から大切な友や家族に愛や感謝をこめてお菓子を贈る祝祭だ。数百年前、ヴァレンタイン氏が大切な人達に感謝を込めてハート型のお菓子を贈ったことが始まりだからな」
レッドXIIIが雑学を口にする。
たまにこういうの詳しいよな、レッド。
起源とか正直そこまで気にしたことなかったもんね。
思わず「へえ」なんて声を出せば、彼は少し得意気そうにフンと鼻を鳴らした。
でも、実は今回ヴァレンタインをしようかとなった理由は、ただ単に日頃の気持ちを伝えようと思ったからだけでは無かったりする。
「しかも、今回は変わった噂があるんだよ。なんでも屋を笑顔にさせると幸せになれる、ってさ」
ユフィがむふふと笑いながらその理由を話す。
今回のヴァレンタイン。
辺りにはちょっと不思議な噂が流れていた。
なんでも屋を笑顔にさせると幸せになれる。
それを聞いたバレットとレッドXIIIは凄い顔をしかめた。
「なんだ、そりゃ!?」
「ずいぶん都合のいい噂だな」
そりゃ確かに。
まあごもっともで。
その反応がおかしくてあたしは笑った。
「あはは!でもま、日頃の感謝を伝えつつ、自分も幸せになれるってなら、一石二鳥じゃない?」
「そーそ!ここは噂に乗るしかないじゃん!ホントだったら楽しいし」
ユフィがガバッと抱きついてきて、同意しながらにひひと笑う。
多分ユフィとしてはこっちの方がメインだろう。
「しかし、なんでも屋と言うのならナマエにも当てはまるのではないか?」
すると、レッドXIIIにそんなことを言われた。
なんでも屋ということならば、助手たるあたしでもOK?
「ん?あたしでよければいつでも笑顔振りまきますよー♪」
「ナマエだと大した効果無さそうじゃない?」
「どーゆー意味だ!!!」
若干失礼なユフィ。
「だって振りまくとか言ってる時点で効果薄いでしょ」と正論かまされてウッ…てなって終わったけど。
「まあ…あたしも指してるのはクラウドだと思うけど…」
結局はそう言う。
まあ満場一致で、引き出してレアな笑顔はクラウドだよね、とは…ね。
「ふふ。うん、クラウドには感謝してるから、お菓子をあげようって話してたの」
エアリスがくすりと微笑みながら、ちゃんとした理由も本音だと言う。
そう聞けば、バレットとレッドXIIIも乗り気になったらしい。
「そういうことなら、俺も仲間に混ぜてくれよ」
「私もだ。自慢の鼻で協力出来ることがあるだろう」
この場の全員で、クラウドにお菓子をあげようという話になる。
でも相談していたのは、実はひとつ問題があったから。
ティファとエアリスが表情を曇らせながら、ふたりにそれを話す。
「でも、ちょっと問題があるんだ…。材料がどこも品切れなの」
「ヴァレンタインデーでみんながお菓子作りしてるのかも」
「それならいい話があるぜ。最近、このあたりでおかしなモンスターが出てるらしいんだ」
「そいつがお菓子の材料にもってこいらしく、菓子職人が追いかけ回してるという話だ」
バレットとレッドXIIIは外回りに行っている間に、とあるモンスターの情報を聞いていたらしい。
はあ…お菓子の材料ににもってこいのモンスター…。
って、どんなモンスターだわよそれ。
でもその時、ちょうど外から「おかしなモンスターが出たぞ!」という叫び声聞こえてきた。
どうやら本当にそんなやつがいるらしい。
ふむ。ちょっとどんなのか見てみたいな。
この面子なら、大抵のモンスターは余裕でいけそうだし。
みんなで顔を合わせる。
それなら、と。
あたしたちは材料集めをすべく、みんなで外に飛び出したのだった。
To be continued