歳獣のお年玉



ウータイの書初めの正装に着替えるため、ユフィについて行ったクラウド。

待つことしばらく。
大きな半紙が用意された会場へ、クラウドが戻ってきた。




「おお〜…!!カッコイイ!」

「わ〜、素敵!」





正装を纏ったクラウド。
その姿を見て、あたしとティファは感嘆の言葉を零した。

白が基調の着物。模様は黒と金で高級感がある。
そしてところどころに飾られている赤い紐がなんともカッコイイ。





「でしょ、でしょ!ウータイでチョ〜敬われてる選ばれし書の名人、五筆の正装だよ!五筆がどれくらい名人かというと書いた字が命を吹き込まれたが如く動き出すなんて言われてるんだ!」





大きく両手を広げながら、ユフィがこの正装について話してくれる。

書の名人…。
詳しいことはよくわからんけど、本当になんか凄そうな服だ。





「すご〜い!クラウドも頑張ってね!」





エアリスが声援を送る。
クラウドはやれやれって顔をしながら半紙の前に立つ。

でも、やると決めたからには、やる。

クラウドはきりっと表情を引き締め、構えた筆を大きく振るった。





「わっ…」





決まった…!

思わず声が出る。
見事に書かれた、力強い辰と言う字。

凄い!と拍手を贈ろうとしたその時、カッと文字が光り、光の辰が飛び出した。





「うおおおおおっ!?!?」





褒めようとした声はなんとも情けない素っ頓狂な声に変わった。

いやでもえええええ!?何!?何!?
今のって、さっきユフィが言ってた書いた字が命を吹き込まれたが如く動き出すってやつ!?





「おいおい!本当に動きやがった!」





バレットが空を見上げながら言う。
動き出した光の辰は、そのまま天高く飛んで行ってしまった。





「さっすが、お客さん、ただものじゃない!初心者なのに書に命を吹き込むなんて…。すごーく昔にあったらしいけど、ホントに見れるなんて思わなかった!」





ユフィも驚いていた。

ウータイの人から見てもそういう感じなんだ…。

ただものじゃない…って、クラウド。
いやでもマジであんた何者なの状態だな…。





「あれ…レッド、何してんの…?」





呆然と空を見上げていたけど、その時後ろでレッドがふんふんと何かを鼻で嗅いでいることに気が付いた。
レッドはこちらを見上げ、それを見せてくれる。





「ナマエ、見ろ。何か落ちた」

「え?」





そう言われ、あたしはレッドの傍にしゃがむ。
すると確かにそこにはキラキラとした何かが落ちていた。





「あれあれ…何か光ってる」

「これはウロコ…?さっきの竜の落とし物かな?」





ユフィやティファも気が付き、近くにあった光を覗く。
するとユフィはその正体にハッとしたらしい。





「ああ〜!?これ、お年玉だよ〜〜!!」

「お、オトシダマ…?」

「歳獣の体の一部!ウータイではすっごい貴重とされてて集めれば、お宝と交換できるんだ!」





首を傾げたら力説された。

おとしだま…。
集めたらお宝と交換できる…。

とりあえずレッドと一緒に見ていた光を拾い上げてみる。





「へ〜!そりゃいいな!集めてみるか!」

「あの龍が飛び回っているならこのあたりに落ちてるかもしれないな」





バレットとレッドは乗り気らしい。

うん、でも確かに、お宝と交換ってのは魅力だよね。
飛んでいった方角とかは見てるし。





「うん、うん!ウロコはモンスターを引き付けるらしいから注意してね!」





ユフィは集めるならモンスターに注意するようにと教えてくれた。





「じゃあ、行ってみよう」





クラウドは歩き出す。
ユフィの「お気をつけて〜!」と言う言葉を背に、あたしたちはウロコ探しに出てみることにした。

そうして街を出る途中、あたしはクラウドに駆け寄った。

いや、お礼を言おうと思って。
だって我が儘聞いてくれたわけだしね。





「クラウド!ありがと、書初めやってくれて!ていうか凄いじゃん!!」

「いや…まあ、まさか動くとは思わなかったな」

「うん、びっくりしたね!でも良いモン見た〜!って感じ!」

「ふっ…あれだけ見たい見たい言われたからな。喜んでもらえたなら何よりだ」

「うん!最高でした!」





ぐっと拳を握って力説。
だって本当、素直に最高だったし。

そんなあたしを見てクラウドも小さく笑ってくれた。

うん、その笑顔、
また良いモン見たって感じだ。





「にしても、その正装…本当なんか凄いね。クラウド、よく見ていい?ていうか見せて」

「別に、好きに見たらいい」

「じゃあ見る。ほー…うんうん、めっちゃいい。うん、やっぱカッコイイ!」

「…そうか?」





あたしはクラウドが身に纏っているウータイの正装に目を向けた。
ていうか、お礼もそうだけどクラウドに駆け寄ったのはこれが見たかったからっての大きいし。

クラウド自身、悪い気はしてなさそうだ。
案外、本人も気に入っているのかもしれない。

いやあでも、やっぱいいな、これ!!

正直かなり興奮気味なのですよ。





「ウータイの衣装ってやっぱ独特だよね〜。出てきた瞬間、本当目引いたもん!クラウドめっちゃ似合ってる!めっちゃくちゃカッコイイ!」

「…そ、そうか」





そうかしか言わないクラウド。
なんか語彙力死んでない?

…もしや、興奮しすぎて引かれてる!?

でもこっちもめっちゃカッコイイ連呼してるし、語彙力死んでるはお互い様かもしれない。



To be continued



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