祈りを込めて
プレゼント泥棒のモンスターたち。
奴らのアジトで戦って、今度こそ本当に倒すことが出来た。
「ナマエ、怪我は?」
「だいじょーぶ」
結構前に出て囮になるよう戦ってたからか、クラウドが気遣って声を掛けてくれた。
あたしはピースして笑って返す。
うん、だって実際に怪我も無いし。
するとクラウドも「そうか」と顔を柔らかくしてくれた。
「ったく、人が心を込めて用意したプレゼントを奪うなんて許せないぜ…」
ギミックアームを下ろしながらバレットが言う。
あたしたちはアジトの中で山積みにされたプレゼント達に振り返った。
「誰にも受け取られずに、ここに置き去りのままじゃプレゼント、可哀想」
プレゼントに触れながら寂しそうな顔をするティファ。
そんな様子を見たクラウドは、ひとつ提案してくれる。
「俺たちで配ってやろう」
俺たちで、配る…。
おお…。
その言葉にあたしとエアリスは大賛成した。
「クラウド!それナイスアイディア!」
「うん、賛成!プレゼントにこめられた祈りと笑顔が広がっていくと思う」
ねー!とエアリスと手を合わせて喜ぶ。
するとバレットやティファも同じように賛成してくれる。
「プレゼントをもらうとほっこり笑顔になるもんな」
「どんどんプレゼントを配りたくなっちゃうね」
さっきウータイの人たちにプレゼントを配った時、ああ、こういうのって良いものだなって実感できた。
誰かの為に用意したプレゼント。笑顔で嬉しそうに受け取ってくれると、互いにあたたかい気持ちになるよね。
「あ、もしかすると、私達、プレゼントに間違えられて盗まれちゃったのかも?私達も、祈りでいっぱいだから」
そんな時、エアリスがはっと気が付いたようにそう言った。
あたしたちも、プレゼントに間違えられた?
祈りでいっぱいだから…。
なんとなく、自分の格好を顧みる。
聖火の精…。
いや、というよりも、何かを大切に思う祈りという話か。
「おう、確かに俺はマリンへの祈りでいっぱいだぜ!」
「あたしだって、ウータイのこと一番想ってる」
「うん、家族や仲間、御縁のある人…そして星に、いつも心の中で祈ってる」
バレットにユフィ、ティファもそう言って頷く。
そうだね。きっと、あたしもそう。
ティファやバレット、マリン。
ジェシー、ビックス、ウェッジ。
エアリスと、それから、クラウド。
大好きで、だから、いつでも健やかに、そう祈ってる。
「じゃあ、さっそく届けに行くか。手分けして、運ぼう」
「おっしゃ!」
「ひゅ〜」
「うん」
「はーい」
「よーしっ!」
クラウドの言葉に、各々返事をする。
でもその時、バレットが思い出したように皆に言う。
「そうだ、マリンのプレゼントを見つけたら教えてくれ」
「ああ、そうだよね。マリンのプレゼントもこの中にあるはず…」
言われて確かにと思う。
あたしは近くの山を見てみた。
…でも、この辺にはそれらしいのはないかな…。
するとひとり、ユフィは不思議そうに首を傾げた。
「マリンって?」
「あん?マリンはな、俺の可愛い一人娘の名前だ」
「大切じゃん!あたし、探すよ!」
マリンの話を聞いたユフィは凄く親身になってそう言ってくれていた。
やっぱり、いい子なんだなと思う。
バレットともまだ知り合って間もないし、マリンに関しては会ったこともない子。
それなのに真っ先にそう言葉が出るのは、優しい証拠だなあって。
「私も手伝う」
「私も」
エアリスとティファも手伝うと申し出る。
クラウドも頷いた。
こうしてあたしたちはマリンのプレゼントを探しながら、他のプレゼント達も運び出していくことにした。
「ナマエ。マリンへのプレゼント、どんな包みだったか覚えてるか?」
「んーと、白い箱のやつ!んで、赤リボンがついてたと思う。ほら、ふちが金色になっててさ」
「ああ、あれか。思い出した」
「よし、んじゃ探そう」
クラウドに聞かれ、思い出したプレゼントの特徴。
ユフィも隣で聞いてて「ふーん」と頷く。
山はかなりの量だから、頑張らないとね。
「あった、見つけたぞ」
しばらく探すと、バレットの見つけたという声が聞こえた。
あたしたちはそれぞれの山を離れ、バレットの周りに集まる。
でも、バレットが取り出したその箱は…残念なことに潰れてしまっていた。
「駄目だ…ぶっ潰れてる…」
「戦った時にプレゼント泥棒の下敷きになったんだな」
クラウドが先程の戦闘を思い出しながら言う。
確かにあのプレゼント泥棒達、こっちを潰すみたいに倒れて攻撃してきてた。
だからあたしは囮を買って出たわけだし。
あれに巻き込まれてしまったのだとしたら、この状態も納得なのかもしれない…。
「おい、お前らは先に帰っててくれ。俺はプレゼントを探してすぐに追いつくからよ」
「きっとみんな心配してる。いったん、セブンスヘブンに帰らない?まずはマリンに謝ってからプレゼントを探しに行った方がいいんじゃない?」
「あたしもそう思うな。父ちゃんどこ行ったの?って、マリンきっとそう言うよ」
「そうだな…」
ティファとあたしはバレットを説得した。
ここまで結構時間も経ってるし、説明してからの方がきっといいだろう。
「ちゃんと謝らねえと。マリーン、すまねえ!」
バレットがマリンの為に一生懸命プレゼントを用意した姿は見ている。
もしもマリンが怒っていたら、父ちゃんのフォローをしてあげようと思った。
END