異国の地にプレゼントを



黒い短髪の女の子。
プレゼント泥棒に追われる彼女を救うため、あたしたちは武器を手に間に入って戦った。

二度目だからこのモンスターとの戦い方も掴めたかも。
厄介は厄介だったけど、先程よりはスムーズに対処できたと思う。

さて、女の子は大丈夫だろうか。

無事に戦闘を終えたあたしたちは、彼女に振り返った。





「あ、あ…あ…」





彼女はこちらを見て口が震えていた。

…ん?怯えている…?違うかな。
でもなんか様子が変。

目の前でいきなり戦ったから、怖がらせちゃったのかな。





「ま、待て、怖がらなくていい、俺たちは怪しい者じゃ…」





バレットが慌てて声を掛ける。
いやでも、怖がってるならバレットの強面だと逆効果じゃない!?





「ちょ、ちょーっと待って、バレット…!」





あたしはバレットを止めようとした。
でもどうやら、その心配は杞憂だったようで…。





「聖火の精だー!!!」





女の子は急に、満面の笑みでぴょんぴょん跳ねて喜び出した。

せ、聖火の精…?
って、あたしとティファ、エアリスの事も言ってる…?





「でしょ、でしょ?プレゼントたくさん持ってるし、赤い服を着ているし!」

「えっ、わわ…!」





止めようとして前に出たからか、一番距離が近かったあたしの手を握って女の子はぴょんぴょん跳ねる。
握られた手もぶんぶん上下に振り回される。

て、テンションたけえ!!

あたしはどうしたらいいかわからなくて、されるがままになる。





「ウータイにプレゼントを届けに来てくれたんだよね!?やったー!」

「え、ええと…っ」





こ、これ、どうしたらいい!?
だって、こんな喜んでると水差せないじゃない…!?

あたしは手を振り回されたまま、助けを求めるように皆に振り返る。





「凄い嬉しそう…どうしよう…?」

「夢、壊せないよね…」





ティファとエアリスも同様に困り顔。
皆で顔を合わせると、バレットが決断した。





「よし、プレゼントはここで配ろう」

「…うん、そうしよう」

「そうだね」

「スラムのプレゼントはまた集め直せばいい」





ティファとエアリスは頷き、クラウドもまた集めればいいと言ってくれる。
皆優しいのである。

それを聞いたあたしは、彼女に向き直った。





「あ、あのー…テンション上がってるとこ悪いんだけど、そろそろ放してもらえると助かるかなあ…」

「えっ?ああ、ごめんごめん」





いまだぶんぶん振られたままの手。
そろそろ腕が痛くなってきましてよ…。

やっと放してもらえると、彼女はにいっと笑った。

こうしてあたしたちは、ここ、ウータイでプレゼントを配ることになった。





「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!ウータイにホリデーのプレゼントを配る聖火の精がやってきた!」





集まってきたウータイの人々。

女の子、名前はユフィと言うらしい。
彼女は両手を大きく広げ、宣伝するように大きな声で呼びかける。





「はい、どうぞ!」

「他の人にも教えてあげてください。プレゼント配ってるよ、って」

「ほらよ。ちゃんと母ちゃんの言う事聞くんだぞ」





長い列が出来て、その先ではティファ、エアリス、バレットが順々にプレゼントを配っている。
あたしとクラウドは列の整理を担っていた。





「まだまだたくさんあるので一列に並んでくださーい!」

「…最後尾はここだ、順番に並べ。…そこ、横に膨らむな」





クラウドの不愛想っぷりが凄い。
わりとちゃんと案内してくれてるけど。





「…慌てるな、プレゼントは逃げない」





でもやっぱり不愛想。
そんなクラウドにユフィはビシィッと指を突きつける。





「声が小さい!」





ユフィに怒られ顔をしかめたクラウド。

あ、だめだ。
それがおかしすぎて、あたしは耐えきれずに軽く吹き出した。

するとクラウドが振り返って何とも言えない顔をした。

目が合ったからあたしは笑う。
クラウドは小さく息をついた。

まあ何はともあれ、プレゼントは無事にたくさんの人々に届けることが出来た。





「今日はホントにありがと!プレゼント無しのホリデーにならなくてよかった!」





配り終わると、ユフィはお礼を言ってくれた。
そして異常にプレゼントに喜んでいたわけを教えてくれる。





「あのコソ泥クッキーがここに保管してたホリデーのプレゼントを盗んでいったんだ」

「お前らもやられたのか?ったく、ムカつく泥棒だぜ」

「でしょ?それと取り返そうと思って追いかけたら、逆に追いかけ回されてピンチだったんだ」





話を聞いたバレットが怒る。

へえ…。あたしたちだけじゃなくて、他のところでもプレゼント泥棒が出てたんだ。
しかもこんな離れた土地のウータイで。

もしかして、ワープも使えるみたいだし、世界各地にプレゼント泥棒が現れてるのかな…。





「なぜ、こんな所にひとりで来たんだ?」





追いかけ回されたと聞き、クラウドがひとりでここに来た理由を尋ねる。
すると何故か、ユフィの歯切れが悪くなった。





「えっと…それはまあ〜、ほら、ねえ?」

「ほら、ねえ?って何?」





なぜそんなに歯切れが悪い…。
あたしが首を傾げて聞くと、うぬぬ…みたいな顔をして、こう言い放つ。





「べ、別に、目当てのプレゼントを盗もうとなんて断じてしてないからね!」

「えええ…あんたも泥棒でしたーってオチなの?」

「違うったらー!誰が泥棒だ!ナマエ失敬!!」

「いたたたた!だから腕振り回すな!!」





ユフィはまたあたしの腕を掴み、ぶんぶん振り回す。
でも今度はあたしも黙ったままじゃない。ぺいっ、と弾いて振り払った。

なんかちょっと、この短時間で打ち解けた感はあるかも。

多分、ユフィとは相性がいいのかもしれない。

ま、ちょーっと手癖は悪そうだけど。





「うふふ…」

「ま、無事でよかったな」





あたしたちのやり取りを見ていたエアリスがくすくす笑い、バレットも頭を掻きながら何事もなくて良かったと言う。

まあ、セブンスヘブンで配るプレゼントはまたなくなっちゃったけど、ウータイの人たちが悲しい気持ちにならなくて済んだのなら、これはこれで良かったよね。



To be continued


ユフィと自己紹介してるか正直わからないんですけど、わかりにくいのでもうユフィって書いちゃってます。(笑)



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