泥棒のアジト



「プレゼントは盗まれちゃったけど、聖火の精からプレゼントも貰えたし、最高のホリデーになったよ!」





プレゼントが配り終わった後、ユフィはそう喜んでくれた。

なんかさっきちょーっと手癖悪そうなセリフ吐いてたけど、でもきっと根は凄くいい子なのだろう。
ウータイの人たちの笑顔を本気で喜べるというのは、きっとそういうことだから。

嬉しそうにしてもらえたなら、こちらとしても悪い気はしない。

でも、そうして話していたその時、ユフィの目が急に見開かれた。





「え?あ…あ…」





ユフィが見てるの、あたしたちの後ろ…?
どうかしたのかと後ろを見た瞬間、あのプレゼント泥棒がこちらに大袋を広げて向かってきていた。

って、はい…!?





「えっ、ちょ…!」

「ナマエっ!」





袋の中に入れられる!?
その状況だけは理解できたけど、もう反応出来ない。

動かなかった体。
でも咄嗟に隣に立っていたクラウドがあたしに飛び掛かってくれたのが見えた。

直後、ガバッと視界が真っ暗になる。





「きゃあ!」

「なんだ!?閉じ込められた!?」

「何、何!?ユウカイ、ラチ、カンキーン!?」





ティファの悲鳴。バレットの驚き声。
ユフィもわーっと喚いてる。

真っ暗だけど、皆も捕まったのだとわかる。





「どこかに…運ばれてるみたい」





エアリスの小さな声がした。

揺れている。
確かに移動してるみたいだ。

どこに連れていかれてるんだろう…。

そう思う一方…。
あたしはちょっと、身体を硬くしていた。





「…悪い、…窮屈、だよな…」

「…ダ、ダイジョウブ」





耳元で聞こえた声に、ぴゃっ…と震えそうになった。

今、あたしは何かにとても密着していた。
いや、何かって言うか…人…や、クラウド…なんだけど。

さっきクラウドはまるで庇うみたいに間に入ってくれた。
つまり、そのまま抱きしめられるような形で、袋の中に入れられたわけで…。





「………っ」





息を詰める。
や、距離が近すぎて…。

ていうか心臓が…っ!
やばいやばいやばい、これ心臓の音クラウドに聞こえるのでは…!?

ドキドキドキドキ。

そんなに動くな心臓…!!!
そんな働かんでも大丈夫だから!!!

とにかく落ち着け!!!と心で唱えまくる。




「…っ…」

「…!」





その時、袋が揺れた。
ぎゅっとまたキツくなる。

ひぇぇぇえええええっ!!!!!!!

心の中で大絶叫。
でもその絶叫には恥ずかしさとはまたちょっと違う意味も含まれていた。

いや、いやね?そりゃ滅茶苦茶恥ずかしいよ!
ドキドキしてるのがバレたらどうしようって気が気じゃないよ!?

でも…、こんなにクラウドと密着してるとか、なにこれすっごい幸せじゃね!?!?…っていう。

だってクラウドにこんなくっついてていいとか!
それが許されてしまう状況とか!!

いやもう本当お馬鹿だなとは自分でも思うけど!!!

でもでも、まあこっそり、少しだけ浸ってもいいかな…!なんて。

そんな能天気お花畑なことをこっそり密かに思いつつ。
今はとりあえず、揺れが収まるのを待った。





「わあ、プレゼントがいっぱい!」





しばらくすると、揺れが止まって袋が開かれた。
ユフィの弾む声。

どうやら目的の場所についたらしい。





「ナマエ、何ともないか?」

「うん、へーき」





先に立ち上がったクラウドは、手を引いて立たせてくれた。

うーん、やっぱ終わってしまうと名残惜しいのである…。
ハイ黙ります、すみません。




「…悪かったな」

「え?」





すると、クラウドはまた謝った。
さっきも袋の中で悪いって言ってたし。

なんだか凄い謝るな…。
別に何も気にすることなんてないのに。





「どーして謝るの?」

「え…?」

「だって間に入ってくれたのに、そんなのお礼しかないよね?ありがと、クラウド」





にこっと笑う。
だって、感謝こそすれ謝らることなんて何も無いはずだ。

そう言えばクラウドの表情も少し和らぐ。
そして「そうか」と穏やかに微笑んでくれた。

まあ、とりあえず…今はやっと外に出られたわけで。

ごそりと出た袋の外。
そこはユフィの言葉通り、見渡す限りがプレゼントでいっぱいだった。





「ここは…プレゼント泥棒のアジトか…?」

「洞窟…?ここにプレゼント集めてるって事?」





クラウドと辺りを見る。

洞窟の中。
ここが、プレゼント泥棒のアジト…。

見ていると、プレゼント泥棒がソリに乗せたプレゼントをこの山にどんどん積み重ねていっていた。





「プレゼントがどんどん増えてく…」

「あちこちでプレゼントを盗み歩いてるようだな」





ティファの言葉にクラウドは頷く。

セブンスヘブンやウータイだけじゃない。
やっぱり色んなところで盗みを働いて、ここに大事なプレゼントを集めてるのか…。

ここに積まれているのはそれくらい相当な量だから。





「じゃあ、取り戻しちゃおう!?」

「おう、俺たちのプレゼントも持って帰ろうぜ、探すぞ!」





ユフィが取り戻そうと言えば、バレットもそれに乗る。

まあでもそれが通りだよね。
盗られたものは、しっかり取り戻させてもらわないと。





「ウータイのプレゼントとお目当てのプレゼント、どこかな〜?」





一番に駆け出していくユフィ。
あたしたちもそれに続き、各々プレゼントの山を探り始めた。





「あ、これ、あたしが調達したやつだ」

「あったのか?」

「うん、一個発見!」





プレゼントの山を掻き分けていると、自分が調達したプレゼントが出てきた。
わりと傍で探していたクラウドが声を掛けてくれて、あたしは「じゃーん」と、その包みを見せた。

でもそんな時、ユフィがバタバタと慌てた様に走ってきた。





「みんな、大変!あいつにバレちゃった!」





バレちゃった?
って、もしかしてプレゼント泥棒!?

見ればわらわらとプレゼント泥棒たちが迫ってきていた。





「こいつ、生意気に逆切れかよ!?もともと全部人様のもんだろうが!」

「黙らせるぞ。ナマエ」

「はーい」





怒るバレット。
クラウドは背中の剣を抜き、あたしに呼びかける。

あたしも頷き、クラウドの隣に立って剣を構えた。

本当、もともとこのプレゼントはあたしたちのものだっての!
悪いけど、しっかり持ち帰らせてもらわないとね。



To be continued



×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -