ただ嬉しいと聞きたいだけ 



なんとかプレゼント泥棒のモンスターを倒したあたしたち。
いくつかのプレゼントは戦闘の衝撃か、飛んでいってしまっているものもあった。





「ない、ない…」





取り返したプレゼントの山を掻き分けているバレット。
そんな背中にクラウドが声を掛ける。





「何を探してるんだ?」

「マリンのプレゼントがどこにも見当たらねえ…」





バレットは落胆したようにそう答えた。

マリンへのプレゼント…。
ひとつだけ別のところに分けられていたそれも、無くなっていたのはワープをくぐる直前に見ている。

それならきっと、この場にあるはずだけど…。





「ねえ、取り返したプレゼントの山、お店にあった時より小さくない…?」

「本当だ…」

「うん…転がってる分もあるけど、それを合わせても全然足りてないね…」





プレゼントの山が小さいと指摘するエアリスに、ティファとあたしも頷いた。

モンスターはソリにプレゼントの山を乗せていた。
でもその山は、明らかにもとより少なくなっている。





「プレゼント泥棒が、まだ隠し持ってるのか…?」





クラウドはそう言いながら、倒れているモンスターに目を向けた。

するとその瞬間、モンスターはスクッと立ち上がり、凄い勢いでソリを引くと、またあのワープホールを出してその中に消えてしまった。
ワープホールもすぐに消えてしまったから、もう追いかけることも叶わない。





「逃げられた!ヤツがマリンのプレゼントを隠し持ってるにちがいねえ!」

「落ち着いて、バレット」

「新しいプレゼント、用意しよう?」





消えたプレゼント泥棒に怒り、興奮するバレット。
ティファとエアリスがそっとなだめれば、舌打ちして落ち着きを取り戻す。





「ちっ、仕方ねえ…!時間もねえしな」

「プレゼントも減っちゃったから、また集めないと」





ティファが近くに転がっていたプレゼントを拾い上げながら言う。
そう、マリンのは勿論だけど、スラムに配る方のプレゼントも集め直さなくちゃならない。





「クラウドも手伝って」

「ああ、ビラ配りより、ずっとマシだ」





エアリスがクラウドにも声を掛けると、クラウドも了承する。

クラウド、ビラ配り嫌だったのか。
その返事がちょっとおかしくて、あたしは眉を下げつつ「あはは…」と小さく苦笑った。





「それじゃ、プレゼントを集めながらセブンスヘブンに戻ろう」






ティファは皆に呼びかける。
そんな声を背中で聞きながら、あたしは少し遠くに放り出されたプレゼントを拾いに向かった。





「あーあ…こんな遠くまでふっ飛ばされちゃって…」





しゃがんで拾うと、砂が付いていた。
軽くはたいて落としたけど、後で包装し直した方がいいかな…。

そんなことを考えていると、傍にひとつ影が落ちた。





「ん…?クラウド?」





それは隣に来て、しゃがんだクラウドのものだった。
あたしはどしたのと首を傾げる。





「…こんなところまで飛ばされたのか」

「ああ、うん、ちょっと汚れちゃったから、お店に戻ったら包み直すよ」

「そうか…」

「うん」

「………。」





……う、うーん?

クラウド、どうしたのかな?

なんだろ…なんとなく何か言いたそうに見えて。
でも何も言わないから…。

何か、どうしようか迷ってるみたいな…?

最初はクラウドも遠くに飛ばされたプレゼント取りに来たのかなって思った。
でもそういうことでもなさそうだし…。

近くにプレゼントないし、クラウド何も持ってないし。





「…服」

「え?」

「…汚れなかったか?」

「え、あ、ああ、うん。大丈夫。さすがジェシーだよ。動きやすくて案外戦闘にも向いてるのかも、これ」





口を開いたクラウド。
服の汚れを心配してくれた。

さっきも見たけど、目立った汚れはなかった。

だから大丈夫だよー、と軽く答える。
でも、わざわざそんな心配を…?

その場合、真っ白なエアリスの方があたしは気になりますぞ。





「…そうか。なら、良かった」

「うん」

「……その衣装、よく似合ってる」

「へっ?」





きょとんとした。

クラウドはまじ…っとこっちを見ている。
でもその顔はなんとなく気恥ずかしそうな。

え、今、褒めてくれた…?

んー…と。

しばし考え…ピン、と閃いた。





「あっ、ティファとエアリスへの返しがイマイチだっから、リベンジ?」

「は…?」





これだ、と閃いたことを口にしてみる。

さっきバレットにもはっきりしない言われてたけど、本人も自覚あったのかな。
まあさっきのクラウドの感想はぎこちなかったよね。

なるほどなるほど。

感想を聞きに行ってない。
イコール、言われてないのもあたしだけだし。

あたしが納得する一方。
対するクラウドはなんだか凄く微妙そうな顔をした。





「…なんでそうなる」

「え、ち、違うの?」

「………なんでそんなひねくれた捉え方するんだ」

「え!ひねくれもののクラウドさんにひねくれたって言われた…!」

「……。」





え!ちょっとショック…!
胸の手を当てて言う。

するとクラウドはまた凄く微妙そうな顔をした。

あれ、今の反応、ダメ…だった?

わりと正直な感想ではあるけど。
だって、クラウドひねくれてるもん。





「…さっきは素直に受け取ってただろ」

「え…?」





小さな声でクラウドは言う。

クラウド、なんだかちょっと、むくれている…?

さっき…、さっきとは。
それってもしかして、さっきのバレットのこと?

…ひねくれ…。
あたし、ひねくれてた…かな?

…確かに、バレットが褒めてくれた時は普通に受け取ったし、それを考えると、さっきの捉え方はひねくれてる…になるのかな。
ていうかむしろ、今の返しもひねくれている…?

…似合ってるって、言ってくれたクラウド。
ひねくれた捉え方ってことは、ただ、そのままの言葉を、素直に受け取れば良かったってこと…だよね。

考えずに…ただ…。

似合ってる…。





「え、と…ごめん、多分クラウドがそんなふうに言ってくれるって思わなかったから…」

「え…?」





そう。多分…つまりは…そういうこと、かな。

確かに、クラウドの時だけ、変な受け止め方をしているかもしれない…。

それは…。

クラウドが褒めてくれるって、あたしにとってはとってもとっても贅沢な話で。
夢とか妄想とか、そっちに近い話なわけだ。

だって…好きな人が褒めてくれる、なんて。

でも、今それは目の前にある話で。
紛れもなく、本当の話。

クラウドが、似合ってるって言ってくれた…。

実感する。

ほわっと、体が熱くなる。
でも同時に心もあたたかくなって、嬉しい、で溢れていく。





「…えへへ、似合ってますか?」

「…っ、ああ」

「へへへ、ありがとう、嬉しい〜」





へにゃっと笑ってそう答える。

ああ、やばいやばい。
だって顔がにやけちゃうんだもん。

でも、それを見たクラウドも。
さっきまで微妙そうにしてた顔を、ふっ…と綻ばせてくれて。





「そうか」





これって気のせい?都合のいい妄想?
でも、そう頷いたクラウドのその顔は、嬉しそうに見えた。



To be continued



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