鈍感と口下手



「ナマエ?」





じっと見られていた。
俺はどうした?と彼女の名を呼ぶ。

するとナマエは目を輝かせ、テンション高く褒めてきた。





「異国風スタイル…!クラウド、超かっこいい!!」

「かっこいい…」





そう言われ、俺は今の自分の格好を顧みた。

村雨の戦装束。
今俺が身に着けている、異国風の衣装。

まあ、ナマエがじっと見ていたのも、物珍しさからだろう。

でも…かっこいいと言って貰えた…。

袴姿に刀。
畏まった装いであり、それが一般論なのはわかっている。

だが、ナマエにそう言って貰えるのは…正直、嬉しい。

服を見たのは照れ隠し。
視線を逸らして、頬の緩みをそっと隠す。

そうした時、俺の頭にはひとつ、ちょっと浮かんだことがあった。

今、異国風の衣装を着ているのは俺だけではない。ナマエも同じ。
鮮やかな着物と、珍しく刀を携えている。

その姿はいつもの雰囲気を違うが、良く似合っていて素直に可愛らしかった。

それならこちらからも。
一般論も手伝って、今なら軽く伝えられるかもしれない。





「…あんたの格好も、かわ…」





言い慣れない言葉。
何処か口が上手く動かない。

ナマエは軽く首を傾げると…。






「うん?か…?あっ、こっちもかっこいい!?」

「えっ、あ、いや…っ」

「えへへ!やったー!実は異国の服ってちょっと着てみたいなってずっと思ってたんだー」

「…そうか」





…失敗した。

かっこいい…。
確かに、ナマエの格好にもそれは当てはまるだろう。

まあ…かっこいいでもナマエが喜んでるならそれはそれでいいか…。





「…そういえば、刀扱えたんだな」

「え?ああ、まあ一応、心得くらいはね。慣れてないから100の戦いは出来ないかもだけど。この機会に刀も少し練習しようかな」





先程、この格好でも戦闘をした。

ナマエが刀を持っているところなど初めて見たが、普通に使いこなしていて少し驚いた。
いや、剣以外にも棒術とか、他心得もあるようだから、納得できる面もあるのだが。

どうやら刀も扱い方の基礎はわかっているらしい。
戦闘技術に関しては流石だなと、いつもながら感心した。





「その頭につけてるのは…」

「あ、これ?かんざし?」





次に俺はナマエの髪飾りに目を止めた。

やっぱりなんとか、可愛いと言いたくて。
その理由を探してみる。

でも、このかんざしは普通に自然と目を引いた。

華やかで、ナマエが動くたびにしゃらっと揺れる。

ナマエもお気に入りだったらしい。
ナマエは嬉しそうに笑って、わざと軽くかんざしを揺らした。





「へへ!綺麗でしょ、これ!初めて見た時にうわっ可愛いって一目惚れしてね!速攻でつけちゃった!」





ナマエの口から可愛いと言う単語が出た。

なら、今だな。
少しどさくさな気もするが、今がきっと一番自然だ。





「ああ、可愛いよ」





俺は穏やかな声で、そう伝える。

言った…!
心の中でグッと拳を握った。

実際、ひらひらと着物と共にかんざしを揺らすナマエの姿は可愛かった。

俺がそう満足感を覚えていると、ナマエは「うん!」と頷いた。





「へへへー!でっしょー!可愛いでしょ、このかんざし!」

「え」

「え?」





嬉しそうに楽しそうに、またかんざしを揺らして笑うナマエ。

その様子に俺は固まった。
するとナマエもきょとんとした。





「クラウド?」

「い、いや…かんざしじゃなくて…」

「かんざしじゃなくて?」

「……。」

「え、なぜ黙る?」





可愛いのはあんただ…。
心で思いつつ、でも、もうここで改めて言い直すのは気恥ずかしく…。





「はあ…」





手強いな…。
思わず息をつくと、ナマエは「なんで!?」と顔をしかめた。



END



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