きみが世界に在れば | ナノ
 I LOVE MYSELF

「わあ…」





聖域に辿り着いたあたしたち。

集ったコスモスの戦士たちは、調和の神コスモスを見上げる。

すると、祈るように手を掲げたコスモスから光が放たれた。
その光は、あたしたちの体を包み、馴染むように消える。

それは…コスモスの力。
やがてクリスタルへと形を変える、神の力。

授けられたその力を胸に、あたしたちは再び戦場に足を運んだ。

……んだけど。





「うっ…ヴァンー!ラグナー!ティファー!!!」





大きな声で叫ぶ、仲間の名前。





「ライトニングー!!!」





しかし…返事が返ってくることはなく。
シン、と静まり返った辺りに、自分の声がこだまするだけ。





「うう…カインー……」





心細くなって、ぽつりと大好きな名前を呟いてガクリと項垂れた。


コスモスから力を与えられ、戦場に戻ってきたあたしは、ヴァン、ラグナ、ティファ、ライトニングと一緒にいた。

カインどこ行ったんだよー…。
彼はいつの間にか、気が付いたら消えていた。
いじけますよ…まったくもう…。

まあ…それはともかく、そんな時、襲ってきた新たな敵。
敵味方問わず、その姿を模した湧きあがる人形―――イミテーション。

その底を知らないお人形さんたちから逃げている時、更に追いうちを掛けるように襲ってきたカオスの戦士。
その足止めを買って出てくれたライトニングに、退路を確保を指示されたあたしたち。

でもその途中…あたしは見事に逸れてしまった。





「ひとりぼっちかよーう…」





力が抜けたようにカクン、と膝を折る。
そして途方に暮れた。

ええええ、なんでこんなことに。
あたしが何をした。なんの仕打ちだこのやろう!

ぶつくさ不満を吐く。

けど、そんなんしても現状が変わるわけがない。





「はーあ…っ」





でっかい溜め息。
でもすぐに、ひとつの深呼吸に変える。

すうっ…と息を吸って、立ち上がった。





「おっしゃ!ひとまず、ひとりでも聖域まで戻るか!」





皆も聖域に向かっているはずだよね。
一度、聖域まで戻ろうって話してたし!

うんうん。きっとそーだ。
つーか聖域まで行きゃ誰かしらいるでしょ。

ぐっ!と手を握りしめる。
ついでに、ぐるんぐるん、と腕をまわして慣らす。





「れっつらごー!」





ひとりでも大騒ぎ。
そうすりゃ寂しさもぶっ飛ぶさ!

声を上げて、走りだした。





「調和に属する娘よ」

「う!?」





がその直後、背中で聞こえた渋みのある声に、動かしたばかりの足をキキーッ!っという勢いで止める。

振り返ると、漆黒の鎧に身を包んだ男。





「ゴルベーザ!?」





目に映ったその人物に反射的に身を構え、短剣を抜いた。

この人の事は、元の世界の記憶でも知っていた。
あたしたちの敵で、でも…本当は、セシルのお兄さんで。

…今は…カオスの戦士。





「身構えずともよい。私はお前に手を下しに来たわけではない」

「……その言葉、信じても?」

「信じるか信じぬかは、己で決めればいい」

「……。」





あたしは短剣を引いた。

正直、この人のことはよくわからない部分も多い。
ちゃんと話した事とか、ないから。

でも…他のカオスの戦士とは、違う何かを感じているのも事実で。
敵意は、感じなかったから。





「まあ…襲うつもりなら、声なんて掛けない、よね。うんうん」

「…いい目をする。己を信じている、純な瞳だ」

「己を信じてる?んー、まあ、そーね。自分のことは大好きよ」

「その言葉を胸を張って言えるとは…」





なんか「ふっ」と笑われた。

なんだし、このやろう。
自分大好きいいじゃないか。

アイ ラブ マイセルフ!





「自分が幸せなら他人の幸せも願えるものだよ。だから自分を好きでいれれば、誰かの事を、もっともっと好きだって思えると思わない?何より、大切な人がいたら、その人に自分を好きでいて貰いたいじゃない。だから、まずは自分から!ってね」





あたしは、そう思って生きてる。

そうそう。だからあたしは心からカインが大好きって胸を張って言えるわけよね!

…ま、後者の意味の方が強いんだけどね。
カインにも…そう思って貰いたいから…なんて。





「…ならば、なにがあってもお主はあいつを信じるのだろうな」

「は?」

「汚れ役を買っても己を信じてくれる者の存在…。お主が召喚されたことは、あいつにとっては幸運か…それとも、ある意味では不運なのか…」

「あいつ…?」





ひとりでわけのわからない台詞を連発してくれるゴルベーザ。

おうおう。ひとりいで何を納得しておるかっ!





「…その心が、どのような道を開くのか…」

「道?」

「何にせよ、その心、大切にすると良い。…さらばだ、娘よ」

「えっ!あ、ちょ!?」





言うだけ言って、ゴルベーザはマントを揺らし、背を向けてしまう。
そしてそのまま、去って行ってしまった。





「なんだー…あいつ」





ゴルベーザの消えた先を見つめたまま、首を傾げる。

わけのわからないことを…。
あいつって誰よ。
幸運?不運?あたしが誰を不運にするって言うんだ!

ぐるぐる、考える。





「…ま、いっか」





でもすぐ投げた。
だって、難しいこと考えるのは苦手だもの。





「それより聖域にいっそげー!っと」




細かいこと気にしない!
あたしは再び、聖域を目指して走り出した。


To be continued

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