きみが世界に在れば | ナノ
 光は照らされる

「ファイガッ!」





ガキン!
短剣で剣先を受け止めた後、次の隙を与える前に豪炎を放つ。

魔法は十八番!
黒魔道士の力、とことん見せてあげようじゃないのさ。
強気に気丈に、放ち続ける。

すると、一体倒せば、またすぐ後ろから気配。





「ブリザガ!」





あれから、どれくらい経ったのか。
どれほどの数を倒したのか。

無限の軍勢…か。
なるほど、これは納得かも…。

まさにその言葉通りだと改めて痛感した。

倒しても倒しても、いくらでも湧いてくる。





「…はあ…はあ…っ」





息がどんどん荒くなる。

聞こえてくる。
皆も、同じように。

本当、厄介なお人形さんたちだな…!

そう思った、その時だった。





「…あ…っ」





目に映った、カインの姿。
一体のイミテーションと対峙してる。

その背後に、迫る刃。





「カイ…っ!」





叫んだって間に会わない、走ったって間に会わない…!

また…背筋がゾッとした。
背中に走る寒気。

いや、いやだ……カイン…!

そしたら、とっさに構えてた。
手のひらを伸ばして、そいつに向かって稲妻を。





「…サンダガ!!!」





強い稲妻が光る。
その光が、イミテーションを貫いた。

すると、消えた。
ガラスが割れたように、砕けていく。

それを確認して、息をついた。

でも…もう、色々と苦しくて。
だから、一瞬でも隙を見せたら…もう、アウトだ。





「…う…っ…!」





その瞬間、背中に衝撃が走った。

一直線に…切り裂かれたみたいな。
ううん…多分、そうなんだろう。

背中が熱くなって、物凄い痛みが滲んできて。





「……っ…」





体が、ドサ…と音を立てて倒れ込んだ。

ああ、やばい…。

目の前にはイミテーションの大群。
本当…容赦ないな…こいつら…。





「ナマエ…ッ!」





でも、その時、声がした。
大好きな、大好きな声がした。

そして、その大群を長い槍が一掃した。

それを見て、つい顔がほころんだ。





「はは、カイン…つよーい。さっすが…」

「…っ馬鹿!俺の事など…!」





カインも、凄い怪我。
息も、酷く切れてる…。
きっと本当はもう…立ってるのがやっとなのかも…。

…皆はどうしたかな。
ライトニングは。ヴァンは。ユウナは。ラグナは。ティファは。

…ああ、駄目だ…。
なんか、意識、薄れてきた…。





「……ぁ…」





そんな薄れゆく中で見えた。
また迫ってきた、イミテーションの大群。

それが最後に映った光景。





「くっ……ナマエっ」





瞼を閉じた真っ暗な世界。
そこで感じた、あったかい何か。

…なんだろう、これ。
包んでくれるような、感覚。





「ナマエ…、俺は……お前が…っ」





…カイン…?
…カインの…声…?

真っ暗。
何も、見えない。





「……お前が、世界に在れば……俺は…!」





なんだろう。あったかいぬくもり…。
…そして耳元で…。



ぷつん。



それが、本当の最後。
色も、音も、光も…何も何も、無くなった。



















―――私はカオスに敗れました。
混沌を司る神カオス。
荒れ狂うその力は調和を引き裂き、世界はかたちを失いました。
すべては混沌の渦に沈みかけています。
あなたたち11人はこの世界に残された最後の希望。
だから手に入れてください。
世界が砕けても輝きを失わない光―――クリスタルを。








「…空は青いなー」





あたしは、空を見上げていた。
どこにいても、空の色は同じだ。

世界が違えど、同じ色だ。





「ナマエー!」






その時、背中の方で声がした。

聞きなれた、優しい声。






「あ、セシルー!」





振り向けば、銀と白。美しい光のパラディン。
優しい笑顔で手を振ってくれてる。

あたしは彼の名前を呼んで、大きくブンブンと手を振り返した。






「どうしたんだい?」

「ううん、なんとなく空見てただけー」

「そう?」





うん、と頷いた。

あたしたちは、調和の神に呼ばれた…コスモスの戦士。
クリスタルを手に入れて、混沌の神と戦うために。

その中でもセシルは、同じ世界から来た仲間。
だから、なんとなく頼りにしてる部分も多かったり。





「ね、セシル」

「ん?」





また空を見上げて、あたしはセシルに尋ねた。





「セシルは、この世界に来てから何かぽっかり穴が開いてるような…そんな気持ちになったりしない?」

「穴…?」

「あー、うーん。なんだろ、あたしもよくは…わかんないんだけど」

「記憶がないから、なんとなくぼんやりしてるなってのはあるけど…それの事かい?」





なんだろう。

なんとなく漠然と…この戦いを、終わらせなきゃならないような…。
もちろんそれはコスモスの願いで、戦わなきゃならないのは勿論なんだけど…。





「ごめん!なんでもない!うん、そうかも。記憶、無いからかな…」

「じゃあ、そろそろ行こう。クラウドも、フリオニールも、ティーダも。皆待ってるよ」

「はーい!」






あ、ティーダが手振ってる。フリオニールも。
クラウドは、相変わらずだな。

あたしは手を振り返しながら、歩きだしたセシルの背中を追いかけた。











《………がいればあたし……無駄な時間………ひとつも………!》





何かが、頭にちらついた。





「……。」





……なんだろう。この気持ち。
何か…心の中で…。

…喪失感…?





「…が、世界に在れば…?」





ふと、口から出た言葉。

…なんでだろう。

…なんで。
なんで、泣きたくなるんだろう…。





「……。」





…ねえ。クリスタルを手に入れて、カオスを倒したら…このぽっかり空いた何か、埋まるかな…?

…そう、心が誰かに問いかけた。



END




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