きみが世界に在れば | ナノ
 最後の戦いへ

薄暗い空間。
その地に浮かび上がる淡い光。

一見、綺麗に見えるけど…禍々しい嫌な気を感じる。

わかった。
ここが、あたしたちが探し求めていた場所だってことに。





「あれだ、次元の扉」





ヴァンが言う。皆が頷いた。
そう、あれが…次元の扉。

うーん、予想通り…なんとなくキラキラしてるのね。
…なんて、もう正直どうでもいいんだけどね。





「着いたのね。あとはあれを壊すだけ」

「カインやコスモスたちは大丈夫でしょうか」





ティファの言葉に拳を握りしめて、ユウナの言葉に後ろを振り返る。

…ウォーリア・オブ・ライト。コスモス。
……カイン。

すると、ぽん…と肩にラグナの手が触れた。





「大丈夫だ…って信じるしかない。ていうか、ナマエちゃんは信じてんだろ?」

「ラグナ…」

「な?」

「…もっちろん!」

「あいつらだってオレたちを信じてるはずだ」





当たり前、と言う様に言い返せばラグナはニッと笑ってくれた。

その言葉に、皆が次元の扉を見据えた。
そして、走り出そうとする。





「待て!」





でも、ライトニングが一度制止を掛けた。

…その瞬間、次元の扉を守るように現れた…5つの影。





「とうとうこの場所へ来たか」





低い、低い声。

カオスの戦士…ガーランド。
そしてケフカ、アルティミシア、皇帝、暗闇の雲。





「来たな」

「ホワーッホッホ!あと少しだったのにね。残念賞でガマンしなさーい」

「我々と今まさに生まれ出でようとしている新たなイミテーション。すべてに勝利するつもりですか?」

「そう言うのならば、盛大にもてなすとしようか」





わざわざこんなところまで…おもてなし、と来ましたか。
ご苦労な事だよね、まったく。





「先へ進もうと何ひとつ変わりはせんぞ。貴様たちに待ち受けるのはその身の消滅だ」

「それがどうした。なんと言われようと私たちは前に進むだけだ」





ガーランドに対し、ライトニングが剣を構えながら言い返す。

うん、余計なお世話って感じ。

…もう、大丈夫。
決めたよ、迷ってたら…託す未来でさえ無くなっちゃうもん。

ライトニングに合わせて、皆も武器に手を伸ばす。

あたしも短剣をホルダーから取り出し、構えた。
うん、魔力も温存しながら来たから…魔法だって思いっきり放てる!


向かってくるカオスの戦士達。
あたしたちは走り出して、カオスの戦士達と武器を交えた。


でも、カオスの戦士たちの目的は…、別にあたしたちを倒すことでは無かった。
彼らの目的は時間。新たなイミテーションが生まれ出るまでの時間稼ぎに過ぎない。





「まだ悪あがきをするか」

「とどめが欲しければいくらでもくれてやる!」

「その言葉はイミテーション相手に言うのだな。退却だ。人形どもは捨てても構わん。さらばだコスモスの戦士たちよ。イミテーションとともに最期を迎えるがいい」





だから、ある程度の時間を稼げば…彼らは去って行った。

でも、あたしたちにはもう何も関係ない。
目的は…ただ一つだから。





「皆、わかっているとは思う」





カオスの戦士達が消え去った後を見て、ライトニングが口を開いた。
皆がライトニングに振り向き、視線を向ける。





「私たちはあの次元の扉を壊すためにここに来た。それが私たちの最期の仕事だ。でもイミテーションどもの中に飛び込めば私たちはもう…。最期まで戦うと言い出したのは私だ。みんなを巻き込んですまない…」





目を伏せたライトニング。
見れば、強く強く…拳を握りしめていた。

それぞれだけど…きっと、この状況では誰もが思うこと、あるのだろう。
でも、決めたのは…自分自身だから。

その時、ふっ…とラグナが肩をすくめた。





「おや、ライトニングさんの弱気な面をまーた見ちゃったなぁ」

「ラグナ…」

「みんな最初から覚悟してるさ。そんなに馬鹿の集まりじゃないんだぜ?」

「俺の覚悟は今ここで、だけどな」





すると、またいつもの水差す一声。

ああ、こいつは最後まで…。

呆れる半面。でも…結構、楽しかったな。
突っ込んで、突っ込まれて、案外ね。





「でも予想もしてたよ。わかっててついてきたんだ」

「ここへ来たことは無駄にはなりません。次の戦いで誰かが救えます」

「今さらでしょ。誰も何も言わないわ。もう思いっきり巻き込まれちゃってるんだから」





ユウナとティファが笑いかける。
それに続くように、あたしも。





「ここに行くって決めた時にあたし、思いっきりライトニングに賛成したよね。手伝うって自分で決めたよ」

「ナマエ…、みんな」





ライトニングが顔を上げると、ラグナはそれを確認し、頷いた。
そして、ゆっくりゆっくり…イミテーションたちが這い上がっていく扉を見据える。





「それじゃ行っかー!」

「うん!」

「はい!」

「任せろ!」





ラグナ、ティファ、ユウナ、ヴァンが走り出す。

その背中に続こうと、あたしとライトニングも足を踏み出した。
でも、その時…後ろで音が聞こえた。

カシャン…
鎧の、聞き覚えのあるあの音。





「カイン!」





息を呑んで、振り返った。
慌てて、急いで駆け寄った。

そこには待ち焦がれた、竜騎士が傷を負い膝をついていた。





「カイン…!」

「大丈夫か?」

「心配するな。まだ戦えるさ」





体を支える為についていた槍を再び握りなおすカイン。

…傷だらけだ…。
軽く血の滲む腕に、そっと触れた。





「さあ、あともうひと仕事だ。安心しろ。最後の戦いも簡単には終わらん。次の戦いは確実に勝利へ繋げられるはずだ。だから後ろを振り返る必要はもうない」

「カイン…」





何度も何度も。
今までに数え切れないほど呼んだ名前。

今また呟けば、視線がぶつかった。





「ナマエ」





…呼んでくれた。

そして、カインの長い指が髪に絡む。
そのまま優しく…撫でてくれた。

……なんだか、懐かしい…。
そんな気持ちを覚えた。





「行くぞ」





カインは飛んだ。
目のも止まらぬ速さで、駆ける。





「…うん!」





短剣を構えなおす。
イミテーションの大群の中へ、飛び込んだ。


To be continued

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