きみが世界に在れば | ナノ
 絶対に揺るがない気持ち

「もう、近いのよね」





だいぶ進んだ頃、ティファが先を見て呟いた。





「重く…禍々しい気を感じる」

「うんうん。なんか、ピリピリするよね」





不安そうなユウナに、あたしはコクコクと数回頷いた。

本当、肌で感じる。
嫌な気配が、それくらいにわかる。

もうすぐ着くんだって、証拠だ。





「イミテーションのアジトか。どんな形してんだろうな」





不安とか、重たい空気。
打って変わって、そんなの微塵も含んでない声。

そんなこと言うの、こいつしかいない。





「ヴァンってば相変わらずー」

「本当、なんだか気楽ね」

「別にそういうわけじゃないけどさ。初めて行くんだ、楽しみだろ?」





楽しみときたか。

その発言に、あたしとティファは顔を見合わせた。

まあ、言ってることは…わかる。
現にあたしも、こんなことは考えたりした。





「楽しみかどうかはともかく、どんなとこなのかなーとは思った」

「だろ?それって楽しみじゃんか?」





楽しみ…なのかなあ?
まあ、気にはなるけども。

…ああ、あたしってもしかして、ヴァンと似てたりするのか…?
うそー!いやいや、あたしはもうちょっと空気読めるぞ!

うーん、と思い悩んでいると、ティファはクスッと笑った。





「んー、まあ楽しみ、かもね」

「そうかな…」





でも、ユウナはやっぱり不安そう。

そんなユウナに、あたしとティファはそっと笑いかけた。





「そうだなあ、あいつらって妙にキラキラしてるし、アジトもキラキラしてたりして、とか?ちょっと、息でもついたらいいよ?」

「うん。そのくらいに思ってれば少し気が軽くなるよ。ね、ユウナ」






うーん。なんか変な例えだったか?
でも、あたしが想像したのはそーゆーのだもの!

まあ、それが正解なのか間違ってるのか…。
そーゆー意味では、楽しみ、なのかもしれない…。





「そう…かもしれないね。私も楽しみだって思うことにするよ」





ユウナはゆっくり、笑みを浮かべてくれた。

うん、ちょっとは元気出たみたい。
可愛い子には笑ってて欲しいものねー!

よかったよかった。


…まあ、ちゃんとしたこと言うと、滅入ったまま進んだら、戦いに支障が出たりするし。
気の持ちようってのは、結構重要だから。

迷う気持ちは…すべての感覚を鈍らせてしまう。

だから、あたしもユウナに笑顔を返した。

それに、ちょっとでも笑う機会って、増やしたいから。
こんな状況でもね。





「何もさ、楽しみまで思うことは無いよな」





すると、そんな話を聞いていたらしいラグナのおいちゃんが一言そう言った。

そんなラグナに、我らがカインが鋭い指摘。





「だが、お前も似たようなものだろう?」

「あ、スルドイ。でもな、俺はそう見せてるんだよ。わざと」

「うそつけー。ラグナそんなに器用には見えなーい」

「うっわ、ナマエちゃん、そう言うこと言っちゃうかい?おじちゃんグサリと来たぜ、今」





とっとっと、とカインの隣に駆け寄って、にやりとラグナを攻撃すれば、本当に何か泣きそうな顔をした。

…うわあ、面白い。
なんて思ってケラケラしていたら、ちょっとコワイ視線を感じた。

ラグナと共に、ゆっくり見る。





「ら、ライトニング〜」

「そんな睨むなって。悪いことじゃないだろ?」

「睨んでなどいない」





視線はライトニング。

険しい表情してたから、もしかして怒ってる!?
…とか思ったけど、どうやら違ったみたいだ。

何か勘付いたらしいカインはライトニングに聞く。





「気にかかっているのか」

「気にかかる?ああ、イミテーションの数の事か」





ラグナがそう言った、その瞬間だった。


ファファファッという…どこか特徴的な笑い声が辺りに響いてくる。

とっさに全員が身構えれば、現れた。





「探し物か?この先へ進めば二度と戻っては来れんぞ」





それはカオスの戦士、エクスデス。





「ご忠告どうもありがとう。十分、気をつけるわ」





ティファが気丈に言い返せば、エクスデスはまた笑う。





「進めれば、の話だがな」

「お前たちはここでゆっくり私たちの相手をするといい。気付く頃にはすべてが終わっている」





鎧の音と、足音。
もう一人やってきた、カオスの戦士。





「なに?」

「…ゴルベーザ」





カインが聞き返し、あたしは彼の名を口にした。

やってきたのは、ゴルベーザ。
…やっぱり、この人…敵なの…?





「お前たちも感じていたであろう。この地のイミテーションの少なさを」





確かに、薄々思ってた。

嫌な気は強くなるのに、その割には敵が少なくは無いかって。

近づくにつれ、多少は増えている。
でも、気に反しては、少なすぎるのだ。





「何が起きている」





ライトニングが聞けば、ゴルベーザは答えた。





「イミテーションの大軍本体はそろそろ目的地に到達する頃だ」

「目的地?」

「どこだ?」





ユウナが聞き返し、ヴァンはいつものような声で尋ねてくる。

目的地…。
その言葉を聞いた瞬間、すごく嫌な予感がした。

当たって欲しくない。
でも、きっと…間違って無い。





「そういうことか」

「…カイン…、まさか」

「そのまさか、だろうな」

「どういうこと?」





カインに尋ねれば、返ってきたのは肯定。

まずい、まずい、まずい…!
嫌な汗が伝った。





「たとえ神であろうとその数を前にして為す術もなかろう。調和の神コスモスの玉座、イミテーションの狙いはコスモスだ」





そのゴルベーザの言葉で、予感は確信へと変わってしまった。

だって、まずい…!
今、あたしたち以外のコスモスの戦士と言えば…、もう。





「忘れたか?主を失った戦士は皆闇に消える。それは復活も望めぬ完全なる消滅だ」

「お前達、先に行け」





するとカインはそうあたしたちを促しながら、槍を構えて敵の前に一人出た。





「カイン?」

「コスモスはどうすんだよ?」

「どうにもならん」

「どうにも!?」





即答したカインにヴァンは声を上げる。

でも、それが現実。
あたしたちでは、コスモスをどうすることも出来ない。





「今から戻ったって間に合うはずねえ、か。主を守るってあいつの言葉を信じるしかねえな」

「ウォーリア・オブ・ライト…」





ラグナの言葉に、彼を思い出し馳せる。

彼は、最後まで主を守ると強く誓っていた。





「あいつひとりで持ちこたえるにも限界がある。こんな場所でぐずぐずしている暇はない。先へ進み時限の扉を破壊しろ。このままではそれすらも叶わなくなる」

「カイン、貴方は…」

「心配するな。こいつらを始末してすぐに後を追う」

「待って、やだ、カイン…!」





ユウナの問いかけに一人残ると言ったカイン。

それを聞いて、思わずすがる様な声を出してしまった。





「カイン!待って、あたしもここで戦う!」

「案ずるな。いいから行け。すぐに後を追うさ」

「でも!」





2対1。
だから、不安が過った。





「信じて、くれるのだろう?」

「…!」





でも、気づかされた。

そのカインの言葉に。

…ああ、最悪だ。
自分で言っといて。いつもずっと思ってることなのに。

そう。いつも思ってる。
絶対、信じてる。

絶対揺るがない。大切な気持ち。





「わかった…!先に行ってる!早く来てよ!」

「ああ」





勿論だ、と言う様に槍を掲げたカイン。

それを見て、あたしたちは先にへと走り出した。



To be continued

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