お前が可愛いと言えばいい



(※本編「ふたりきりの内緒話」の回がなくて、花畑でクラウドが話す相手がバレットだったらという話です)





「アバランチによ、フィンっていう悪ガキがいてな、何を任せてもすぐにサボろうとする奴さ。ただ、絵を描くのだけは好きでよ」





七番街が崩壊して、エアリスの家に世話になった夜。
眠れないのか部屋を出たバレットの様子を見に、俺は花畑へと足を運んだ。

目をつぶると色々思い出す。
そう言ったバレットは、俺が会ったことの無いアバランチの面々についてぽつりぽつりと話し始めた。

それは、きっと無事であるという祈りだったのだろう。




「情報収集担当にアルってヤツがいてな、あちこちからパスコードを入手してくるやり手なんだが、こいつが色男でよ、気に入った子を見つけたらすぐに渡せるようにいつも花を隠し持ってんだよ。もしかしたら、ここで買ってたのかもな。そういや一度、ティファに…ナマエにもあったな、あいつらにも手を出そうとして…」

「……。」





アバランチの色男がティファやナマエに手を出そうとした事がある。

それを聞いた時、なんとなく胸にモヤを感じ、バレットを見た。
するとバレットはふっと笑う。





「ティファにはこっぴどくやられてたな」

「…だろうな」

「ナマエも、アル趣味悪い〜とか言って適当にあしらってたぜ」

「……。」





ティファもナマエも相手にしなかった。
それを聞いてどことなく安堵する。

けど、まだ少し、モヤは残っていた。

いや、これはさっきまでとは少し違う意味で。

…趣味が悪い、か。





「なあ…、その、ナマエの時々、自己肯定感低くなるのは何なんだ?」

「あん?自己肯定感低いか?あいつ。ナマエ様のお通りじゃーとか言いながらモンスター薙ぎ払ってんじゃねえか」

「……。」





バレットの返しは最もだった。
確かに…そう言って暴れるナマエの姿は容易に想像がつく。

だが、そうじゃなくて。

そう…例えば、ウォール・マーケットでドレスアップをした時。

煌びやかなドレスに身を包んだナマエは、どこか自信がなさげだった。

あの時のナマエは、素直に綺麗だった。

それは俺だけが思った話では無い。
エアリスやジョニーも褒めていたし、待ちゆく人々も視線を集めていた。

ただ、本人にだけ妙に自信がない。





「…口説かれて、相手に趣味が悪いって言ったんだろ」

「ああ…そういう話か」





後ろ頭を掻き、納得した様子のバレット。
するとバレットにも思い当たる節があるのか、「あー…」と言いながら、その理由を教えてくれた。





「ありゃあまあ、多分…俺たちにもちったぁ責任あるかもなあ」

「?、どういうことだ」

「いやよ、まあ…あとはティファやジェシーといることが多いから、どうもな」

「ティファやジェシー?」

「ほれ、ティファはあの通り、羨望の的だろ。んでもってジェシーは女優だからな、自信は満々だ」

「……。」

「そこに来て、ナマエの立ち位置っつーか、なんつーかな。いじられ体質というか、軽口言い合うみたいな感じだろ?あいつ」

「まあ…」

「ナマエ自身、構われることは好きだろうから、それは別にいいんだと思うぜ。むしろ気に入ってる。けど、まあそれが沁みついちまったのかもなあ…」

「……。」





そう言われ、少し納得した。

確かに、まず人はティファがいたら素直に褒めるだろう。
そしてナマエがいれば、まず軽くからかいから入る。

それに、ジェシー程の自信もない。

それが染みついている…か。





「気になるなら、お前が可愛いって言ってやればいいじゃねえか」

「…っ、別に…俺は…」

「なんだよ、そんな風に気にするってことは、可愛いとは思ってんだろ?」

「……。」





言葉に詰まった。

自己肯定感が低いと感じる。
それはもっと自信を持っていいのにと感じているという事。

つまり、ここで否定しても説得力はない。

…こういうことをさらりと言うバレットは、悔しいが大人だと思う。
そんなこと絶対口には出さないけどな。





「へへ、そうか、ソルジャー様はナマエに御執心ってか。はは、変わってんなぁ、お前」

「おい…」

「はは!悪い悪い、ま、冗談でもそう言う風に言われやすいってこったな。いや、良いと思うぜ。いい奴だよ、あいつは。マリンもよく懐いてる。なんだ、人を見る目はあるじゃねえか」

「……。」





多分もう、いくら否定しても無駄だろう。
まさかバレットにバレるなんて思いもよらなかった。

なんとなく、弱みでも握られたような…。
そんな、気恥ずかしい感覚だ…。

まあ…でも、バレットならいいか。
下手に言いふらすようなこともないだろう。

それくらいの信頼は、置いているように思う。





「資材調達担当のネリはジェシーとコンビを組む事が多くてな、よく姉妹と間違えられるんだと。ふたりとも似てないのに〜って文句を言いながら嬉しそうに笑ってたな。ナマエも、仲が良かったぜ。ジェシーとのやりとり見てりゃわかるだろうが、よくふたりから可愛がられててな」

「…そうか」

「ナマエにも聞いてみたらどうだ。…ま、あいつらなら大丈夫さ。全員、俺に似てしぶてえからな」

「…ん」

「エアリスを助けたあとで、紹介してやるよ」

「…楽しみだ」





俺は、そう返した。

悪くは無いと、素直に思えた。

それに、無事であればいい。
そう思ったのも、また本心だった。

バレットは軽く笑う。





「へっ、お前相手だってのに、話したらすっきりしたぜ」

「眠れそうか?」

「おう、グースカピーだ」





バレットはそう言って、花畑から引き返す。
俺も、その後を追った。






「へへっ…」

「…なんだ」

「いや?へへへ、ナマエのこともそれとなく協力してやるよ」

「………。」





余計なお世話だ…と思いつつ。
こうしてまた少し話しながら、俺たちは部屋に戻った。



END


あくまで夢として、バレットの好感度が高かったらと言う話。

クラウドの中でバレットの好感度が高いので、ちょっと信頼を置いてるような描写にしてあります。
逆にバレットもクラウドに対して聡い感じ。

本編でいう「ふたりきりの内緒話」の回が消滅するのでクラウドとヒロインの距離が縮まらないのですが、これはこれでバレットにちょっといじられたり協力してもらったりな展開になって面白いのかもしれない。



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