認めて欲しいから
「こっち、こっち!確かこの辺に…」
アイテム屋さんに依頼された化けネズミの退治。
話によると、ウェアラットの悲鳴を聞いて助けに来るってことだから、まず目を付けたのはウェアラットの出現場所。
心当たりのあったあたしは、そこにクラウドとティファを案内した。
街はずれ。
あまり人は近づかない空き地に、奴らはたまっていることが多い。
「あっ!発見!ほらほら、いたでしょ!!」
「…わかったから、剣を構えろ」
「よしきたっ!」
案内した空き地には、見事ウェアラットがたむろしていた。
ほらほら見て見て!と群れを指さしたら、ちょっと呆れ顔されたけど。
でもま、これは助手としてなかなかお役に立てたでしょ!ってね。
ウェアラットの討伐は大したことではない。
クラウドとティファが一緒なら尚の事。
こうしてあたしたちはちゃちゃっとウェアラットの群れを蹴散らしたのだった。
「お掃除完了〜!」
「うん、お疲れ様」
ウェアラット一掃後、あたしとティファはハイタッチした。
「化けネズミはすぐには来ないな」
クラウドは辺りを見渡した。
確かに、化けネズミの気配はない。
ウェアラットはそこそこの数を倒した。
情報が本当だったら、化けネズミが助けに来るってのには十分だと思うけど。
「うーん、どうしよう、待つ?」
「待ってたら来るかな?それか、他に目撃情報でも探す?」
「あ、そうだ。それならアイテム屋さんに途中経過報告しようよ」
「ああ、それはいいかもね!ちゃんとやってるぞーって!ってのがあたしとティファの意見ですが、どーする、クラウド?」
「別に構わない」
化けネズミが現れるまで様子見。
一旦、アイテム屋さんに中間報告を。
全員、意見一致という事で。
こうしてあたしたちは一度アイテム屋さんに戻ることにした。
「おう、ビビって帰ってきたか」
「なんだとー!」
戻るなり、アイテム屋さんはクラウドに軽い嫌味を言ってきた。
でもそれに返したのはあたし。
だってそりゃ聞き捨てならんぞって話じゃんよ!
でもどうやら、アイテム屋さんにもウェアラット討伐の話は届いていたらしい。
「聞いてるぜ。ウェアラットは倒したってな。だが俺の依頼は化けネズミだ。やる気があるなら、化けネズミ退治を続けてくれ。ほら、そろそろ出て来るかもだ。こんどは逃げ出すなよ、なんでも屋」
「別に逃げ出してきたわけじゃないよー、失敬だな!」
「なんだナマエ、お前やけにこいつの肩持つじゃねえか」
「だってあたしクラウドの助手だもん!」
「はあ!?助手?」
なんか凄い驚かれた。
アイテム屋さんがクラウドを見ると、クラウドは「ふう…」みたいな反応。
うむむ…、相変わらず微妙な反応だわ…。
これから頑張って役に立つところを見せていかねば。
まあ否定はされなかったので良し!
「うん、でも確かにそろそろ化けネズミさんたちも出て来るかもだよね。さっきのとこ戻ってみようよ、クラウド」
「ああ…」
「んで、出てきたらばっちりやっつけてやるかんね!!なんでも屋侮るべからず!!」
最後にびしいっ!と指突き付けてそう言い残してきた。
「早よいけ」みたいな感じでシッシッてされたけど。
「まったくもう。逃げ出してきたとか失礼しちゃうね!折角中間報告しにきてあげたのにさ!」
「ふふふ、まあまあ。この依頼が終わったら、きっとクラウドを見る目も変わるよ。それに、最初にナマエが言ってたみたいになんでも屋の宣伝にもなるよ」
「まーねー。よーし、クラウド!ちゃちゃっとやって見返してやろうぞ!!」
ティファと話しながら、あたしは少し後ろを歩くクラウドに振り返ってぐっと拳を握る。
するとクラウドはまた「ふう…」と息をつきながら薄い反応だ。
「そんな気合いれるような依頼でもないだろ…。たかだかネズミ退治だ。そう厄介だとは思えない」
「んー、まあそうかもしれないけどさ、ていうかそれよ!クラウドにとってこんなもんはちょちょいのちょいさって知らしめたいじゃん!なんでも屋の名声を轟かせてやろうぞー!!」
「…テンションおかしくないか」
「…あれ…?」
指摘されてはっとする。
確かにちょっとテンションおかしくなっている…?
いかんいかん、悪い癖でた。
するとクラウドはまた息をつく。
「…なんでそんなに張り切るんだか」
「え?うーん…だって、クラウドのこと早く認めて欲しいなーって、そう思うじゃん!」
「え…?」
素直に思ったこと。
うん、クラウドの事、認めて欲しい。
それを口にしたら、クラウドが目を丸くした。
隣ではクスッと、ティファが笑う。
うん?
あたし、変なこと言った?
「ふふふ、ナマエ、良い子でしょ?」
「……。」
ティファはクラウドに駆け寄り、笑いながらそう言う。
「…さっさと終わらせよう」
クラウドはすたすた歩き出す。
うーん、怒らせた‥とかではないよな別に。
そう言う感じはしない。
ティファにも「行こう」とポンと肩を叩かれる。
こうして、あたしたちはあの空き地へと再び戻ったのだった。
END