君が悪く思われるのは
「んあはっは!楽勝〜楽勝〜♪」
やほーい!と両手を上げて喜ぶ。
グエンさんからの依頼。
タラガ廃工場の先に現れたディーングロウ退治。
空飛ぶ敵だったからちょっと厄介かなと思ったけど、そこまで苦戦することもなく任務完了。
「クラウド、ティファ、ありがとねー!引き付けてくれたからもう魔法で狙い撃ちばっちりよ!」
「ああ。今の連携は悪くなかった」
「ふふっ、かなり良い感じで戦えたよね」
今のメンバーは全員近接武器だから、空飛ぶ敵とは相性が悪い。
それでもあまりしんどく感じなかったのは、全員の連携がうまく取れたからだろう。
今日、なんでも屋の依頼でいくつかバトルもこなしたけど、そのどれもがやりやすかった。
《クラウドとナマエ、すごく息合ってたよね。相手がこう動くだろうから、じゃあこう動こうって、そういうのが凄く噛み合ってた感じ、したよ?》
はじめてクラウドと合わせて戦った時、傍で見ていたティファが言ってくれた言葉。
うん、やっぱり動きやすい。
多分クラウドとの相性は悪くないのだろう。
うんうん、良きかな良きかなー♪
まあこれで依頼はこなせたということで。
あたしたちは依頼主であるグエンさんの元に戻ることにした。
ただ、途中でティファはお店の常連さんに声を掛けられて少し話したいってことだったから、あとで落ち合うことにした。
「おかえりなさい!見事、倒せたみたいだね!」
クラウドとふたりで戻ってくると、グエンさんは既にディーングロウを退治出来たことを知っていた。
話が伝わっているところを見ると、迷惑してる人が多かったのかもしれない。
「ナマエ、いいじゃない!流石は噂のなんでも屋!」
「えへへー」
褒められて悪い気はしない。
なんでも屋の評判も、またこれで少し上がったかな?
クラウドの役にも立てたかなーと、そう考えてニコリと笑顔。
だけど話は、ちょっと予想外の方へと転がっていく。
「威張るだけで何もしない兵士とは大違い!警備も変わってもらいたいくらい!」
グエンさんは傍にいる神羅兵たちにも聞こえるように、こちらを褒めながら嫌味を言った。
う、ううーん…。
相変わらず気が強い方でいらっしゃる。
でもまあ、神羅兵に融通が利かないのは…仕方ない部分もあるんだろうなとは思うんだけどね。
あたしが「あはは…」と小さく苦笑いした一方で、隣にいたクラウドはグエンさんにこう返した。
「兵士は職業だ。勝手には動けない」
あ、言い返した…。
すると、グエンさんの表情も少し変わる。
「人として、どうなのって話でしょう?」
「命令に忠実な奴も必要だ」
どちらも意見は曲げない。
そのまま少しだけ、空気は険悪気味に。
グエンさんは「はあっ」と大きく息をついた。
「やっぱりね。元神羅って聞いてるよ。成る程、あんたと話しても無駄か」
…!
呆れと、少しの軽蔑のような。
それが滲んだ声に、胸がどくりと波打った。
なんだろう。
でも…クラウドが悪く思われるのは、なんだか凄く嫌だなって…そう思った。
「あはは…グエンさん、兵士が持ち場を簡単に離れられないのは仕方ないよ。組織はそういうものだし。皆が好き勝手に動いたら、めちゃくちゃになっちゃうよ」
「…何、ナマエ。あんた、そいつと行動して考えが染まったわけ?」
「いやいや、そうじゃなくってさ…でも、そういうものじゃん?クラウドの言ってることも、間違ってないよねって!」
「私はこの街が好き。ただ、それだけ。いいわ、この街は私が守る。あんたに負けないくらい、もっと強くなってやるから」
グエンさんはクラウドを睨む。
そしてフンッと顔を背けられてしまった。
あううう…あんま良いフォローが出来なかった…。
…まあ、とりあえず要件は済んだということで。
あたしたちは、その場を離れることにした。
「うーん…クラウドごめん。上手く言えなくて、余計拗らせちゃったかも…」
「別に…俺は思ったことを言っただけだ。あんたこそ、別に俺のフォローをする必要もなかっただろ」
「あたしだって思ったこと言っただけだよー…。クラウドが言ってる事、間違ってると思わなかったし。まあ、グエンさんもちょっと気が強いけど、この街のこと凄く考えてる良い人なんだけどね…」
「どうでもいいな」
「そ、そんなきっぱり…。んー…でもさ、クラウドのこと悪く言われるのはちょっと嫌だったから、ははは…口出しちゃった」
「え…?」
「ん?」
苦笑いしながら零した言葉。
クラウドは目を丸くする。あたしは首を傾げる。
「なんで…」
「なんで?」
「嫌だったって…」
「うん?え、だってそりゃ嫌だよね?」
「………。」
「…クラウド?」
「………変な奴だ」
「なんで!?」
アレ?なんか、なんでなんで合戦になっている?
いやいやでも変な奴ってなんで!
変じゃないでしょ、普通でしょ!!
むー、としてたら戻ってきたティファに「どうしたの?」って聞かれた。
でも上手く説明できず、「なんでもない…」と言うしかない。
「あれ?クラウドは、なんだか機嫌良い?なにかあった?」
「いや、別に普通だ」
「そう?」
一方、クラウドとはそんな会話。
機嫌がいい…?
その言葉に顔を見ようとしたら、ふいっとそっぽを向かれる。何故。
なんだか若干のもやもや。
でもこうして、ディーングロウ退治の任務も無事終了したのでした。
END