折角出来た良い御縁



「手伝ってよ!」

「すみません…管轄外です…」





七番街スラムにて。
なんでも屋のお仕事を探して街を回っているその途中。

なにやら女性と神羅兵が揉めている声が聞こえてきた。





「あ!ティファ!ナマエ!ちょっと聞いてよ!」

「グエンさん?」





少し近づくと、女性がこちらに気が付いた。

彼女の名前はグエンさん。
あたしやティファにとっては見知った顔である彼女。

グエンさんはあたしたちを見るなり、神羅兵への不満をワッと爆発させた。





「列車墓場からディーングロウが飛んできたの!なのにこいつら全然動かない!」





キーッと切れそうな勢い。

あ、ああー…。
なるほど…。

さっき聞こえた「手伝ってよ」「管轄外です」ってそういうことか…。

今ので何となく、色々状況に納得出来た。





「ねえ、ナマエ!ちょっと手、貸してくれない?ディーングロウ、ナマエなら退治出来るでしょう?」

「え?あ、ああ…」





モンスター討伐の依頼。
まああたしはこういうのよく請け負ってるし、見慣れた光景だ。

でも今それを受けるのならば…。

あたしはちらりとクラウドに視線を向ける。
するとその視線でグエンさんもあたしたちの傍にいるクラウドの存在に気が付いた。





「ん?もしかして…あなたが噂のなんでも屋?ああ、そういえばナマエも手伝ってるとか言ってたわね!ナマエ、彼がそうなの?」

「ええ、はい、そうですよ」

「じゃああなたも手伝ってくれない!?」





いつも気の強いグエンさん。
勢い強くてクラウドがちょっと顔をしかめる。

それを見たあたしとティファは小さく笑った。

でももうすっかり、なんでも屋の噂も七番街スラムには伝わった感じあるな。
ここまでいつくか依頼はこなしたし、この手ごたえは悪くない。

グエンさんはなんでも屋に、ディーングロウ討伐の依頼をした。





「ディーングロウはタラガ廃工場の先。近づくには自警団の鍵がいるよ。鍵は近くの木箱に隠してあるから片っ端からぶっ壊しちゃって!」





こちらとしても断る理由は特にない。
モンスター討伐が、多分一番得意分野の依頼だもんね。

こうしてあたしたちはタラガ廃工場に行ってみることにした。





「あ!あったあった!ティファ、これだよね、自警団の鍵」

「うん、そうだと思う。すぐ見つかってよかったね」





言われた通り、片っ端から壊した木箱の中から例の鍵を見つけた。
あたしはそれを拾い上げ、ティファと一緒に確認する。

クラウドも腕を組みながらその様子を見ていて、いつも通り物静かだったけど…でもなんとなくちょっと考え事をしているようにも見えた。





「クラウド?どうかした?」

「いや、別に」

「そう?」

「…あんたがモンスター討伐の依頼を頼まれてるの、実際に見たのは初めてだと思ってな」

「え?」





そう言われ、思わずティファと顔を合わす。

ああ、そういやさっきグエンさんはまず最初にあたしに話を振ってきたっけ。

モンスター討伐はあたしもやってるって話したし、自警団のところではビッグスやウェッジも頷いてくれた。

こんなの、全然見慣れたいつもの話。
でも確かに、クラウドの前で実際に話を持ち掛けられたのは初めてだった。

ここで改めて、ティファが肯定してくれる。





「ふふ、そう珍しい話でもないんだけどね。お店にも、ナマエに依頼したいって尋ねて来る人もいるし」

「うん。あたしを助手にしてるとー、こういう依頼、向こうからどんどん来ちゃうよー、ボスー♪」

「…ボスって言うな。何だその売込み」

「お役に立てますよってアピールポイントさ!」





腰に手を当てて、ちょっと得意気にフフンと笑う。
それを見たティファが隣で「あははっ」て笑ったから、あたしも噴き出して、ふたりで顔を合わせて笑った。

クラウドは小さく息をついた。





「でも、これが御縁が大事ってやつだよ。あたしの縁、クラウドの為に使えたらいいなって思ってるし」

「…どうしてそんなことを思う?」

「うん?んー、お財布一緒に探してくれたからかなー?あたし、受けた恩は結構忘れないよ!」

「…そこまで大したことしてないだろ。それにあれは、ぶつかった詫びだ」

「えー、大したことだったよー。それに、ティファの幼馴染みだったり…そこから色々偶然が重なって、まさに縁を感じるってやつだと思うし。それは良い縁だと思うんだ。折角出来た良い御縁!クラウドとの縁、あたしは大事にしたいなって思ってるよ」

「……。」





ニコニコしながらそう言ったら、クラウドは黙ってしまった。
それは多分、機嫌を損ねたとかじゃなくて、ただ単純に反応に困ってる感じ。

んー、でも本心を言ったまでだ。

たまたま助けてもらったお兄さんがティファの幼馴染みだった。
そのまま同じアパートのご近所さんになって、繋がりが出来て。

これを縁と言わずに何と言おうってもんである。





「んじゃま、ディーングロウ退治、張り切っていっちゃいましょうかー!」





とりあえず、依頼はきちっとこなさないとね。
自警団の鍵が見つかれば、あとは討伐するのみ!

こうしてあたしたちはディーングロウ退治をするべく、廃工場の奥に向かったのだった。



END



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