呼吸が安定する



「ん…?なんだろ、今の」





ワイマーさんからの依頼で訪れた地下の実験施設。
湧いて出るモンスターを退治して欲しいって話だったけど…。

施設に足を踏み入れ探索している途中、何やら地鳴りのような唸りのような…なんとも嫌な予感のする音を聞いた。





「クラウド…」

「…もしかしたら、かなり厄介なのがいるかもな」





声を掛けるとクラウドはそう答える。

まるで空気が震えるように響くその音。
それは多分、ここにいるモンスターの咆哮。





「これ…この感じだと、もしやかなーり大型な感じ?」

「そうかもしれないね…」

「おいナマエ、お前大声で騒ぐんじゃねえぞ」





ティファと小声で話してたら、横からバレットのしっつれーな小言。

この状況で誰が騒ぐか!
むしろそれはバレットこそだろ!

そう出掛けた言葉をぐっと飲みこむ。
ええ!ええ!騒ぎませんよ!だってあたしはお利巧ですから!

代わりにじろっと睨んでおいた。

そうして気を引き締め、用心しながらその音に少しずつ近づいていく。

歪み、隙間の空いた扉をくぐる。
すると見つけた、あの咆哮の正体。





「…やば…」





目の間にした、その姿。

皆にも聞こえてないくらいの小さな声。
思わずあんぐりと開いた口。

そこにいたのはとんでもなく、とんでもなく大きく…強靭そうな角を持った獰猛なモンスターだった。





「ナマエ、俺が引き付ける。まずみやぶれ」

「っ、了解」





感覚が鋭いのか、モンスターはすぐにこちらに気が付いた。

迷ってる時間はない。
すぐさま駆け出したクラウドの指示に従い、あたしはみやぶるのマテリアを発動させた。

その名は、ベヒーモス零式。

魔獣ベヒーモスの改造種。神羅が研究材料として飼っていた。
吐き出される咆哮は、あらゆる生物を震え上がらせる。





「ベヒーモスって、普通なら逃げるようなやつじゃんよ…っ」





みやぶったデータにげんなりする。

あたしは戦闘において、判断力はある方だと思ってる。
自分の力でどうにか出来るものなのか、その判断は出来るつもりだ。

ベヒーモスなんて、普通だったら絶対相手になんかしない。

でも、それでも譲れない時はある。
こんなのが地上に出てきてしまったら、そんな事態だけは防がなくてはならない。

つ…と、嫌な汗が滲む。

でもね、ちょっと不思議なんだ。





「クラウド!上半身か下半身、どっちかを集中的に攻めて!それと角が落とせないなら魔法は注意!反撃が来るよ!」

「了解だ。ナマエ、何があっても回避を優先しろ!無理に叩きに行かなくていい!長期戦覚悟だ」

「おっけー!」





呼吸。
クラウドと一緒にいる時は、なんだか凄く安定してる気がして。

普通なら臆する敵、強敵を前にしても…。
切り抜けられるって考えが強くなる。





「ティファ!ティファも隙が出来た時だけ、確実に打ち込める時だけ狙え!バレット、あんただけは角を狙ってくれ!落とせれば魔法が効く!」

「うん!わかった!」

「おうよ!撃ち落としてやらあ!」





クラウドはティファとバレットにも指示を飛ばす。
あたしはその隙にクラウドの傍へと走った。

狙うは下半身。
突進のリスクを最小限に抑え、バレットの角への攻撃も邪魔をしない。





「期待、してるからな」

「うん、あたしもしてる」





肩を並べて、交わした言葉。
此処に来るまでも交わした、期待と信頼。

互いにフッと微笑む。

そして、あたしはたちは強敵へを走り出したのだった。



END



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