イイ感じじゃねえの



「おまたせ。あ、ナマエも戻ってたんだね」

「うん、結構すぐ戻って来てたよ」





クラウドがIDカードを探す間、ジェシーのおふくろさんの気を引いていた俺、ウェッジ、ジェシー。
ジェシーの家から出ると、プレートの上に来てすぐ別行動を取っていたナマエも戻ってきていた。

どうやら、わりとすぐに戻っていたらしく、クラウドと一緒にIDカードを探してくれていたらしい。

それから、俺たちが出て来るまでふたりで話をして時間を潰していたと。
そんな様子を見て、俺はへえ…と、心の中で呟いていた。





「ジェシーの親父さん、いたろ」

「ああ」





先に行ったジェシーと別れ、七六分室に向かう途中、俺はクラウドにジェシーの親父さんの話を振った。

ジェシーの親父さんは、魔晄中毒。

クラウドが忍び込んだ奥の部屋。
そこには親父さんが寝ていたはず。

一瞬、クラウドはこんな話なんて興味ないかとも思ったが、案外「聞いておこう」と耳を貸した。

それなら、と…俺はジェシーがアバランチに入るきっかけとなった話をクラウドに聞かせることにした。





「ジェシーはずっと役者志望で…努力して努力して、ショーの主役を勝ち取った。両親も大喜びさ」

「ああ、女優を目指していたとナマエに聞いた」

「ん?そうなのか?」

「あ、うん。部屋にジェシーの写真あったから。それだけね。時間も無かったし」

「そっか」





女優のことはナマエが話をしていたらしい。
確かに、あの部屋の中には女優の姿をしたジェシーの写真があっただろう。

この話題はデリケートなものだし、ジェシー自身もそう話題にするものでもないから、それだけと言ったナマエに納得した。
ナマエはこういう話をペラペラと話すやつじゃないし、どちらかと言えば口は堅い。

だからそれ以上のこと話していないのだろうが、クラウドに話すこと自体は反対ではないのだろう。

恐らくそれはウェッジも。
現にウェッジは説明の方にも加わってきた。





「うん…まあ、でな、ところがだ、公演の直前に…」

「お父さんが倒れちゃったッス」





親父さんが倒れた話。
俺とウェッジがそれを告げると、その時クラウドはちらりとナマエに目を向けた。

あんたも知っているのか。
それは恐らく、そんな何気ない小さな確認だったと思う。

クラウドのその視線に気づいたナマエはもこくんと頷き、目で続きを聞くように促していた。

そんなやり取りを見て、俺はまた、へえ…と思った。

すごく、些細なこと仕草だ。
些細なやり取り。

でも、そこでナマエに視線をやるんだな、と。





「ほら、クラウド。あれ!目的地だよ」

「ああ」





親父さんの話に区切りがついた後も、自然と並んで歩いてた。

些細だからこそ。
それは気を許しているなによりの証拠に思えて。

そんな姿を見ていて思う。




…なんか、イイ感じじゃねえの?




なんて。

いやでも真面目に…クラウド、結構ナマエに気許してるよな?

わりと正反対にも見えて、相性は悪くなさそうというか。
まあ一緒にいる時間はそれなりにあっただろうが。

なんでも屋の仕事。
それに俺たちが決起会をしている間も恐らく。

ナマエの方も、率先してクラウドのなんでも屋を手伝うと手を上げたり、気に入っているのは確かだろうし。





「……。」





まあ、野暮なことする気も、特に何かってわけでもねえけど…。

ただ少し、ふ〜ん、と。

俺はひっそり心の中で、楽しんでいるような、そんな気持ちを感じてた。



END



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