張り合う気持ち



「あった!この自販機ですよ」





マテリア屋店主の頼みにより宿屋を訪れた俺とジョニー。
問題の自販機を見つけると、ジョニーは得意げな顔でこの自販機について説明してきた。





「ぱっと見は普通の自販機。だが、しかし!ふっふ、教えてあげましょう。いいですか、この手の自販機には秘密のボタンがあるんです」

「どこに」

「そ、それは、秘密ですから…。これまでの知識や経験を総動員して、こう、ずばばばーっと!心の目でみやぶるんですよ」





秘密のボタン。
その詳細についてはジョニーも知らないらしい。

みやぶる、な…。

俺は黄色の支援マテリア…みやぶるを取り出した。





《あ、クラウド!あれは見てないやつ!》

《ああ、みやぶるか》

《よしきた!注意引くね!》





もとはチャドリーのレポートに協力するためのものだが、敵の情報を把握出来るのは普段のバトルでも有益だ。
ナマエと協力しながら、新しいモンスターが出るたびに使用するようにしていたからかなり使い込んではいるはず。

それに、ソルジャーとしてそれなりの場数は踏んできている。





「俺を誰だと思っている。このくらい、簡単にみやぶれる」

「おお、自身ありっすね?」





こうして、俺は自販機に向き直った。

まずは、ひとつめ。


――ピピッ…ガシャン





「ええ…アレって、ただのコレ?」





出てきたのは宿屋特製ポーション。
拾い上げたジョニーは期待外れな顔をし、次を急かしてきた。





「ほらほら、まだ秘密のボタンは残ってますよ!」





次に、ふたつめ。

――ピピッ…ガシャン





「おお…アレって…なるほど」





次は宿屋特製興奮剤。
ジョニーの反応が先程より少し変わる。

そして残すは…。





「い、いよいよ…最後のボタン!」





ジョニーの喉がゴクリとなる。

次は、3つめ。
俺は最後のボタンを見破り、押した。

――ピピッ…ガシャン





「こ、これは!」





自販機のアレ。
出てきたそれに、ジョニーは目を見開いて慌て出す。





「っ、早く、早くしまってください!!ここ、こんなとこ見られたら!!!」





ジョニーの慌てっぷりに煽られ、俺はアレをすぐにしまう。

その時、自販機が大・大・大当たり〜とスペシャルなオマケを吐き出し、その音にさえもジョニーはビビる。





「びび、びびびびび、びびったあ!!と、とにかく、アレはゲットしたんで、早いとこマテリア屋に戻りましょう!」





こうして急かされるまま、俺たちはマテリア屋に戻ってきた。





「おう、待ってたぜ!」

「ささ、クラウドさん。アレを」





俺は店主の前に手に入れた3つの品を並べた。
すると、サングラスの奥の店主の目が見開かれたのがわかった。





「これは…マジか。すげえな兄さん!おお…こんなの、初めて見た!」

「このくらい、どうってことない」





興奮している様子の店主に平然と返す。
ま、別に当然だな。





「いやあ、恐れ入ったぜ!見かけによらず、経験豊富だったみたいだな!」

「ふっ、まあな」

「くうっ、さすがチャンピオン!憧れます!」





このくらい大したことはないが、まあこう言われて悪い気もしない。

ともかく、これで店主の依頼は果たせたはずだ。
話はもともと、ここを訪れた目的に戻る。





「さてと、約束のブツだが…悪い、実はもうここにはないんだ」

「はあ!?」

「……。」

「だから、悪かったって」





店主は謝ってきた。
つまりは無いもので釣られていた、と。

…まあ、ウォール・マーケットらしいとも言えるのかもしれない。





「今は、確か…定食屋のオヤジが持ってるはずだ」

「くう…でもまあ、ないなら仕方ない。急ぎましょう、クラウドさん!」





ジョニーの言う通り、ないなら仕方はないだろう。

次は定食屋か…。
次で終わらせてもらいたいところだが…。





「定食屋!定食屋ー!…腹減ったぁ…あっちの路地裏からも、美味しそうな匂いが…、いやいや、今は定食屋、定食屋!」





マテリア屋を出たジョニーは、相も変わらずうるさい。
空腹に腹を抑えてはそれを振り払う様に首を振り、本当によく喋る。





「そういやクラウドさん、ナマエと知り合いなんですよね」

「…今更だな」

「いやまあ、なんとなく聞きそびれてたっていうか」





今更ナマエと関わりがあることを聞いてきたジョニー。
この街で何度も会っているし、闘技場の一件も見ているはずだが、まあタイミングという意味では確かに聞きそびれていたのだろう。





「あいつ、クラウドさんの手伝いしてるって聞いたんですけど、本当ですか?」

「ああ…まあな」

「ええー、やっぱマジなんですか。まあ確かに、モンスター退治なんかの腕は相当なもんですけど…。でもナマエの奴、落ち着きないし、騒がしいし、何かと迷惑かけてやしないですか?」

「いや別に」

「俺ももうナマエとはそこそこの付き合いになりますからね。もし何かあったら言ってくださいよ。俺、ガツーンと言ってやりますから!」

「……。」





お前は一体、ナマエのなんなんだ。

なんだろう。
なんだか色々引っ掛かる。

いや、そりゃ…俺より付き合いが長いのは確かだろう。
けど…なんとなく、もやもやとする…。

別に俺も…ナマエとはここまで色々とやってきてる。
一緒に戦うからこそ、見える事だって多い。

だから俺だって、ナマエのことは多少なりともわかっている。

そんなことを言いたくなって。
いや…そんなこと張り合ってどうする。

何を考えているんだか…。
俺はゆっくり、頭を横に振った。

とにかく今は、依頼だな…。
こうして俺たちは、定食屋に向かったのだった。



To be continued



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