離れた少しの間に想う



「俺、ひとりで帰れるッス。どうせ、軽いヤケドだし」

「いいから案内しろ」

「アニキぃ…」

「…それはやめろ」





プレートの上の七番街の作戦。
パラシュートを使い、無事にスラムに戻ってきた俺は、共に戻ってきたウェッジを家まで見送ることにした。





「ジェシー達、もう帰ってるかな」

「さあ」

「皆の家によってもいいッスか?通り道だし」

「ああ」





ウェッジは一緒に作戦に行った皆の家に寄りたいと言う。
特に反対する理由もなく、俺も頷く。

そうして案内され、ビッグス、ジェシーの家と巡ったが、ふたりはまだ家に戻ってきてはいないようだった。





「あとはナマエちゃんの家ッスけど」

「ああ、ナマエはいい。たぶん、通り道じゃないだろ?それに、ふたりがこの調子だとナマエも戻ってないかもしれないしな。俺が様子を見ておく」

「そうッスか?でも確かに、アニキはおんなじアパートッスからね。それじゃ、お任せするッス」





最後のひとり。
残りのナマエの家は知っている。

俺と同じ、天望荘。

今通ってきた道を考えると、恐らく天望荘は通り道ではないだろう。

それを察した俺は、ナマエのことは自分が見ておくからいいと伝えた。

もともと、家を把握しているナマエだけは戻ったら様子を見に行こうと思ってはいたしな。





「アニキとナマエちゃん、結構仲良しッスよね」

「…そうか?」

「えっ、違うッスか?戦闘も息ぴったりだったし。わりと会話も多いッスよね?」

「…まあ、確かに動きやすいとは思うけどな」

「アニキにそう言わせるなんて、ナマエちゃん流石ッスねー」





ウェッジの家に向かう途中の会話。
流れから、ナマエの話になる。

…仲がいい。
はたから見ると、そんな風に見えているのかと。

いや別にそれが嫌と言うわけではなく…。

むしろ、悪い気はしないな…と思う。





「ナマエちゃんは、よくジェシーん家で美味しいもの囲んでガールズトークしてるらしいッス。なんでも、お姉さまのテクニック?を色々聞かされてるとか」

「…テクニック?」

「でもいつもついていけなくて頭ぷすぷすしてるって言ってたッス」

「…ぷすぷす」





詳しい内容はよくわからないが、ナマエがぷすぷすしてるというのは何となく想像がつくような。
想像したら少しおかしくなって、小さく笑みを零す。

すると前を歩いていたウェッジが「ん?」っと振り返ったから、俺はすぐに何でもない顔をした。





「んー、まあジェシーいわく、ナマエちゃんが悪い男に引っかからないように!ってことらしいッス」

「なんだそれ…」

「まあ、ナマエちゃんに気のある男もいらほらいるみたいッスから」

「…そう、なのか?」

「でも、腕っ節が強くてなおかつそれを売りにしてるから、むしろ守られることの方が多くて男の方が格好つけそびれちゃうんスよね」

「…そうか」

「その点、アニキなら問題なしッスね!」

「……。」





ナマエに気がある男、か。
まあそれはいるだろうな、とは思う。

スラムを回っていた時もアイテム屋に、ティファとナマエを連れて歩くなんて背後に気をつけろと嫌味を言われたし、俺自身、そういう心当たりはあった。





「ほらほら、ニャル、バニ、パス〜、みんなあいさつ〜。今日の門番はこの三兄弟」





ウェッジの家の前には猫がいた。
帰り着くなりウェッジは猫の前にしゃがみ、抱きかかえて俺に見せて来る。

…見慣れぬ人物だからか、威嚇された。





「…じゃあな」

「見送りどうもッス」

「手当、忘れるなよ」

「了解ッス、アニキ!」

「その呼び方やめてく…」





いっこうに治らないアニキ呼びを正そうとしたが、またそこで猫たちが鳴いた。





「こわくない、こわくない、アニキは優しいッスよ〜」





ウェッジは猫たちを降ろし、撫でてなだめ始めた。

それを見た俺は突っ込む気力が失せる。





「はあ…好きにしろ」





溜め息をひとつ。
背を向けると、俺はウェッジの家を後にした。

…さて、ビッグスやジェシーももう家にはついただろうか。

ジェシーに家に寄ってほしいと言われていたことも思い出す。



ナマエも、もう戻っているかな…。



そんなことを考えながら、俺は再びスラムの街を歩き出した。



END



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