結んで開いて



訪れた手揉み屋の店。

マダム・マムにオーディション推薦の話を聞いてもらうため、まずこちらの誠意を見せろと言う話になった。
その誠意とは、クラウドが手揉みを受けること。

1000ギルコース、普通の揉み。

あたしとエアリスは雑談しながらそれが終わるのを待ち、数十分。
施術を受けたクラウドが奥の部屋から戻ってきた。





「あ、クラウド帰ってきた!おかえり〜!」

「どうだった?」





ソファから立ち上がり、あたしたちはクラウドを迎える。
戻ってきたクラウドは揉んでもらったのであろう自分の手をじっと見つめていた。





「悪くない」

「へえ、そうなんだ!」





クラウドの感想を聞いたあたしは「おお!」と思った。

エアリスと待っている間も、気持ちいいのかな痛くないのかなとかそういう話をしていた。
気持ちいいならちょっと興味あるかも!とかね。

悪くない、それってクラウドにしては結構な高評価なのでは!

クラウドは壁に寄りかかる。
そして、相変わらずその手を見つめたまま、何故かグーパーを繰り返していた。





「…クラウド?」

「何してるの…?」





結んで開いて。
戻ってきてからずっとそんなことをしているから、エアリスと一緒に聞く。

するとクラウドから帰ってきたのは一言。





「わきわき」

「「わきわき?」」





思わずふたりで聞き返した。

?????

わきわき?
わきわきってなんだ。

クラウドも疑問符浮かびまくってるあたしたちに気付いたらしい。
すぐにグーパーをやめ、首を横に振った。





「いや、なんでもない」





なんか…ちょっと、ついポロっと言っちゃったみたいな。

あたしも自分の手を見て、なんとなく同じように真似してみる。
グーパー、グーパー…。

んー、まあ、これに効果音つけると確かにわきわき?

するとパシッと手を掴んで止められた。





「…やらなくていい」

「えー」





止めた手はクラウド。

だって気になるじゃんねー?

そうこうしているとマムもこちらの部屋に戻ってくる。

マムにも今の会話、聞こえてたのかな?
マムはまっすぐクラウドの前まで来て、ゆるりと扇子でその顔をあおいだ。





「癖になりそうかい?」





そよぐ金髪を見ながら、マムはにやりと笑っている。
クラウドは視線をフイッと逸らした。

これは、マム的にはしてやったり…みたいな感じ?

だってクラウドも否定しなかったもんね。

それはつまり癖になりそう。
まあ本人も悪くないって最初に言ってたし。

わきわき。
なんかすっきりしたとか、そういう実感あるのかなー?





「ふーん、まあ、良い感じだったんなら良かったね!手の調子がいいって事だよね?」

「まあ、な」

「そっか!ねね、どんな感じ?剣握るのにも良さそう?」

「ああ、戦闘が楽しみだ」

「おー!そんなにか!へー!いいねいいね!」

「ナマエもやってくるか?」

「えっ?」





色々言ってたら、クラウドにそう言われた。
え、あたしも…?

そしてそれを聞いてたマムも食い付いた。





「おや、クラウド。いい提案するじゃないか!いいよ、あんたもやるかい?ま、お代はきっちり貰うけどね」

「え、えっと」





ちらっとクラウドやエアリスを見る。

いやそんなつもりではなかったけど。
まあ興味がないかと言われれば、それはあるんだけど。





「いいぞ。やって来ても。調子がいいのは確かだ。1000ギルなら出してやるし、気にするな」

「え、で、でも」





クラウドからもお許しが出た。

いやむしろ勧められた?

しかもお金まで出してくれちゃうの?
なんでも屋、福利厚生バッチリ!?

するとエアリスもニコニコ笑う。





「うんうん!ナマエ、痛くないなら興味あるって言ってたし、いいんじゃない?」

「うーん…そうだなあ」

「ん?…ああ、多少痛みはあったけどな」

「ん!?痛いの!?」





クラウドの言葉にバッとマムを見る。
するとよくわからない無言の微笑みを返される。

こ、これは…。

ていうかクラウドが痛いって言うって事は…結構痛いってことでは…。

あたしはもう一度ちらりとクラウドを見る。





「痛い…?」

「多少な」

「多少…」





クラウドの多少ってどれくらいだ。

ていうかクラウドの場合、結構な痛さでもちょっと格好つけて多少とかいう可能性ない!?
そういうとこあるよクラウド!!そういうとこもいいけど!!話脱線!!

でもやっぱり痛いのは…。





「ええと…や、やっぱ遠慮しときます」

「なんだい、つまらない子だね」





断ったらマムは不満そうだった。
あれだ…。金づるが逃げたみたいな…。

でもあたしは両手を前に出して振り、ご遠慮願った。

いや、ちょっと…やっぱ痛いとか言われたら勇気いるわ!

まあ…わきわきは気になったけど。
…わきわきって言ってたクラウドがちょっと可愛かったなあとかは、内緒の話だ。



END



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