秘められた力と
エアリスを無事救出し、神羅ビルから脱出を目指す。
その途中、また、縁ある彼に再会した。
「クラウドさん、ナマエさん、お待ちしてました」
「チャドリーくん…」
あたしたちの足音に気がつき、振り向いた少年。
そこにはいつもと少し装いが違う、白衣を着たチャドリーくんの姿があった。
「チャドリーくん…その格好」
「既にお伝えした通り、僕は神羅に籍を置きながら、神羅と戦う術を探っています」
確かに初めて会った時、彼は言っていた。
自分は神羅の科学部門で学んでいる研修生だって。
となれば彼がここにいるのは何も不思議な事じゃない。
この白衣も、彼の研究者たる姿という事なのだろう。
「身を危険に晒しても研究に没頭してしまうのは上司である宝条博士の影響です。そんな彼からの独立。これが僕の研究の目的です」
「え、目的?神羅に対抗って言ってたけど、そういう事なの?」
「はい」
少し聞いてみると彼は頷いた。
出会った頃、自分はささやかながら神羅に対抗しようとしていると言っていたチャドリーくん。
でもその真の目的は宝条博士からの独立?
なんとなく、今、チャドリーくんの真意みたいなものに触れた気がした。
でも、独立なんて普通にすればいいのでは…。
そう思ったけど、今目を伏せたチャドリーくんの様子に何か事情があるらしいと言うことを察する。
「事情は明かせませんが、僕にとって大変な難題です…。今はただ、僕の研究を進めるしかありません。そのテーマは、クラウドさん、あなたです!」
「へ、クラウド?」
そして彼はパッとクラウドを見上げた。
研究テーマがクラウドとは…これ一体。
あたしが首を捻ると、クラウドも顔をしかめてた。
ただ、チャドリーくんは大真面目。
まるでクラウドに何かの可能性を見出しているかのような、そんな期待に満ちた顔をしていた。
「あなたに秘められた力を引き出されば、神羅と宝条に立ち向かう力となるんです。さあ、ナマエさんと協力して、新たな戦闘データの提供をお願いします。あなた方ふたりの共闘が、研究の成果をより高めてくれるはずなのです」
「えっ、あたしも関係あるの?」
「はい。クラウドさんとナマエさんがともに戦うからこそ、です」
「ううーん…?いやま、クラウドが戦うってならそりゃ勿論手伝うけどさ」
「はい!その意気です!その気持ちが重要なんです!」
「その気持ち?」
なんだか力説されたけど、意味がいまいちわからない。
その気持ちって…どの気持ち?
クラウドを手伝いたいってこと…?
というかあたしたちの共闘で成果が高まるってどういう理屈。
あたしは意見を求めるようにクラウドを見上げた。
するとクラウドにも肩をすくめられた。
…やっぱわかんないよね?
まあクラウドもわからないならいいやと変なところで落ち着いた。
「相手はあらゆるデータを掛け合わせた架空のモンスターや兵器のデータです。準備が出来たらこの奥にある特別改造された最上位バトルシミュレーターで模擬戦闘に挑んで下さい。共に神羅に立ち向かいましょう!」
そしてチャドリーくんはその最上位バトルシミュレーターがある場所を指して教えてくれた。
最上位…かあ。
それってきっと今までの携帯用のやつとかよりもっと凄いって事なんだろうな。
そう考えるとちょっと興味はある。
あたしはクラウドに聞いてみた。
「クラウド、やってみる?」
「まあ、アバランチのヘリが来るまでは少し時間があるか」
「じゃあ、やる?」
「手短に済ませるぞ」
「了解っ」
あまり長居をしている時間はない。
でも、ここまで何かと縁があったチャドリーくんの頼みだ。
色々とマテリアも提供してくれたし、無下にはしたくないよね。
「よおーしっ、頑張るぞー!」
「なんか上機嫌だな、あんた」
「あ、ばれた?へへ、だって言ったでしょ?仮想空間で思いっきりクラウドと戦うの楽しいってさ!」
「ふっ…そうか」
仮想空間はどんなに思いっきり戦っても怪我をしない。
クラウドとの共闘をこれ以上にないほど楽しめる絶好のフィールドだもんね!
さあて最上位の威力やいかに。
「浮かれてドジ踏むなよ」
「だいじょーぶ!背中はお任せを!」
「ああ、頼んだ。じゃあ起動するぞ」
「おっけー!」
クラウドは機械に手をかざす。
すると辺りにライトが光り、仮想空間が広がっていく。
神羅と宝条博士に対抗する力。
これがクリア出来たら、チャドリーくんの研究は完成するのかな。
もしそうなら、それもちょっと楽しみかもしれない。
よーし、ちゃちゃっとやりますか!
マテリアを確認する。
剣を構える。
こうして、最上位シミュレーターでのバトルを開始した。
END