理由はいらない



ハイウインドの中、俺はナマエを探していた。

理由は、特にない。
ただなんとなく、何処にいるのかと思って。

だけど、理由はいらない。
今の俺には、それが許される。





《…好きだよ、クラウド》





俺の胸に頬を寄せて、ナマエはそう言ってくれた。
互いに、通じ合った気持ち。

だから、会いに行く理由を探す必要は無い。

その事実が、嬉しくて仕方がない。

そんなことを考えていると、なんとなく頬が緩んで。
そんな心地のいい気持ちに揺られながら、俺はナマエを探した。





「ナマエ?」




ハイウインドの中にある小部屋。
そこで見つけたナマエはテーブルに突っ伏していた。

声を掛けても反応はない。

俺はそっと近づいてテーブルの向かいに座る。
するとすやすやと眠っているナマエの顔がよく見えた。

テーブルの上にはナマエが纏めている調合のノート。
どうやらそれを整理している途中で眠ってしまったようだった。





「しかし本当、随分埋まったもんだよな…」





俺は頬杖をつきながら、ナマエが記していたノートを見た。

カームの街で俺がナマエに渡したノート。
渡した時は、何も書かれていない真っ新なノートだった。
だけど今それには、ナマエの綺麗な文字がびっしりと並んでいる。

色々試しては、小まめにノートに記すナマエ。
それはナマエの努力の結晶だ。

ナマエはそれをまとめるたびに、笑うのだ。
クラウドの役に立ててるなら嬉しいよ、と。





「……。」





口元を押さえて、俯いた。
思わず口元が緩んで。

いや、誰も見てないけど…。

というか何ひとりで思い出して照れてるんだ、俺…。

浮かれた自分に我ながら何だかなと思う。
けど、心は満ち足りていて…。

俺は顔を上げ、目の前のナマエの寝顔を見た。





「…穏やかな寝顔、だな」





何気なく呟く。

その寝顔の印象は、穏やか。
安心しているような、そんな感じだ。

…抱えていた不安、少しは楽にしてやれてるかな…?

前、ナマエはひとりで悩んでいた。
誰にも悩みを打ち明けることなく、たったひとりで抱え込んでいた。

だけどそれを俺に打ち明けてくれて。
…なあ、その時どんなに俺が嬉しかったか、あんたは知ってるのかな。

きっと、ナマエが思ってるより…ずっとずっと嬉しかったよ。

その寝顔に思う。
俺は、ナマエの力になりたい。

俺に話して楽になるのなら、いくらでも話してくれ。
頼りないかもしれないけど持てる力で全てで手を伸ばすから、いくらでも寄り掛かってくれ。





「…好きだ、ナマエ」





そっと手を伸ばして、頭に触れる。

それは紛れもない、俺の本心。
聞えていないだろうけど、俺はそっと…小さく囁いた。



END


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