「ねえセラ〜。さっきさ、ちょっと気になるアクセサリー屋さん見たんだよね。後で行かない?」
「いいけど、もしかしてそれって赤い屋根の?」
「あ、そうそう!セラも見た?」
「うん。可愛いかったよね!あとでナマエに言おうと思ってたの」
「お!気が合う〜」
「ふふ、だねえ!」
目の前にあるパネルに触れながら、耳で拾う声があった。
明るく楽しそうに話す、大好きな声。
その声を聞くだけで、多分僕の顔は綻んでいる。
僕は心が軽やかになるのを感じながら、ゆっくりとその声の方へ振り返った。
「あたし魔力強化するアクセサリー欲しいんだよね。ブレスレットだったらなおいいかも」
「うん。探してみようよ。私もピアスとか見たい」
AF400年、新都アカデミア。
アカデミーの本部。
セラさんと一緒に笑っている、ナマエさん。
僕は今、その笑顔をこの目で見ることが出来ている。
ああ、ほら…そこにいる。
それを実感すると、凄く幸せな気持ちになる。
そこにいる、というのは僕にとって当たり前のことじゃない。
よく、遠く遠く離れていても同じ空の下にいる…なんてこと言ったりするけれど、僕にはそれが当てはまらなかった。
同じ空の下になんていない。
同じ、時間の中にいない。
どんなに願っても、会うことが出来なくて。
だけど、一日たりとも忘れた事なんか無かった。
こんなに引きずる人、見た事無い。
言われ慣れた言葉だけど、でも、ずっとずっと変わらず…僕はナマエさんのことが好きだった。
「あとポーションとかフェニックスの尾も補充しとこうと思うの」
「ああ、もう少なくなってたっけ。うん、ちょっと何が必要かリストアップしとこうか?」
「うん。そうだね。ナマエ、あと見ときたいのとかある?」
「ん〜、そうだなあ」
声を、耳が拾おうとする。
目が、自然と追いかける。
本当に、つくづく思い知るな…と。
でも、だからこそ…一緒に歩いていきたいと思う。
その為なら、きっと何事も惜しまない。
ずっと傍にいられるように。
その笑う顔を見ていられるように。
僕は、もう知っているのだ。
貴女は僕にとっての一番の人。貴女以上の人はいない。
するとその時、ナマエさんがこちらの視線に気が付いた。
目が合う。
そして彼女はへらっと笑った。
それと一緒に、ひらひらと僕に手を振ってくれる。
ああ、嬉しいと…純粋に、単純に思う。
僕も笑った。自然と零れる様に。
そして手を振り返す。
ほら、やっぱり…僕は知っている。
END
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -