親指と人差し指。その先に光る球体。
覗き込むように眺める彼女の顔はなんとなく楽しそうだ。
机の上には他にもいくつか転がっている。
俺は、彼女の向かいの椅子に腰を下ろしながら尋ねた。
「なにマテリアなんて見てるんだ」
「おや、クラウド」
カタン、という椅子ので俺の存在に気が付いたらしい。
ナマエ、彼女は眺めていたマテリアからパッと視線を俺に向けた。
俺は机の上にあるマテリアを一つとって同じように眺めてみた。
これといって何の変哲もない。
普通の、俺たちの手持ちのマテリアだった。
「そんなにニヤニヤして見る程、面白味のあるものじゃないと思うが」
「えー、そうかなあ?まあクラウドたちにとってはそうなのかも」
マテリアは特殊なものだ。
そこに古代種の知恵が封じ込められている、俺たちの旅に欠かすことの出来ないもの。
勿論ものによっては高価だし、稀少価値のものもあるだろう。
だが、今ここにあるものはショップで気軽に買える物ばかりだ。
マテリアは別に珍しいものでもなんでもない。
…だが、ナマエにとっては俺たちの常識など関係のないものだった。
「あたしにとってはマテリアが目の前にあるってだけで最っ高にテンション上がる事だからね!」
「テンション上がる…なあ」
「うなぎ登りよ〜」
そう言うナマエは本当に楽しそうだった。
ナマエはよく笑う。本当によく笑う。
何でもこの世界はナマエにとって楽しい事で溢れているから。
…だが同時に、その笑顔の裏でいろんな事を考えてる。
腹の中で、いろいろ。
ナマエは俺たちの行く末を知っているから。
でも一見そう見えなくて。
こう見えて掴みどころが無くて、それを感じるたびに俺は何となくもどかしくなる。
「そうそうクラウド〜。支援マテリアも結構増えてきたじゃない?あれって組み合わせ次第で色々化けるから面白いよね!」
「ああ、組み合わせ考えるの好きって言ってたな」
「そーそ!すっごい楽しい!…ていうかクラウドとマテリアトークするとかがまず素晴らしすぎてね」
「……。」
「うっふふ、ダメだニヤける。うふふふふふ…」
「何だその笑い方…」
うふふと言われてもな…。
ああ…反応に困る事も多々あるが。
だけど…。
俺はちらっと、マテリアをバングルに合わせているナマエの顔を見た。
「……。」
「ん〜そうだなあ…やっぱこれを組み合わせてさあ…」
でも楽しんでいる時は、心から楽しんでいると思うのだ。
楽しそうで。
嬉しそうで。
喜んでいる。
まあ、そういう顔を見るのは、悪くない気がしている。
END
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -