「そこでもう少し踏み込め。その方が剣に重みが乗る」
「こう?」
「ああ」
剣を握るナマエ。
俺はその様を見て細かな指摘をする。
ナマエはそれをよく聞き、しっかりとこなしてみせる。
毎度のことながら飲み込みが早い奴だと感心した。
「そっか〜!カインありがと〜!なんか上手くいかないなって思ってて」
「お前は黒魔道士だろう。そこまで剣の腕を磨く必要は無いと思うが?」
「ん〜でも技術と知識はあって困るものじゃないし。興味があるときって意欲的になるから吸収も早いだろうし、気になった時にやるのが一番ってね」
ナマエはそう言ってへらりと笑った。
こいつの一番の武器は黒魔法だ。
その才能はバロンで右に出る者はいないだろう。
そして魔力を温存するために使う短剣の技術もなかなかのものだ。
事実短剣のみで事足りる場面も少なくない。
だが、それだけではないのがこのナマエと言う娘だ。
ナマエは剣、槍、弓、杖など、よほどの重装備でなければ大抵の武器は扱う事が出来た。
一言で言えば、そう…戦闘センスが抜群なのだ。
「…まったく、器用なものだな」
「器用貧乏?」
「褒めている。素直に受け取っておけ」
「お、えへへ。ん〜、じゃあ、でっしょー?」
「フッ、まあ…槍の使いを簡単に追いつかせる気はないがな」
「いやそれは流石に追いつける日とかこないでしょ」
ナマエは幼少期から何かと興味があることを俺に尋ねてきていた。
剣などに関しては実際に使う機会の多いセシルの方が適任である気もしたが、まずは俺のところへやってくる。
あれが出来るようになった、これが出来る様になったなどの話も最初に俺に伝えに来てくれる。
セシルでも無くローザでも無く、真っ先に俺のところに来る。
昔から、カインカインと俺の後を追ってくるような。
そう、それは今でも変わらんな。
「あー、でもさ、魔法は自発的だけど色々な武器に興味持ったのはカインの影響が大きいのかも」
「俺?」
「うん。あたしがなーんにも出来ないような歳の頃からもうカインはちょっとした稽古とかしてた気がするし。その姿を見ててさ、すごいなー格好いいなーって漠然と思ってたわけだよ」
憧れてたんだ、と話すナマエは楽しそうだった。
懐かれている自覚はあった。
そして俺自身、そのことに悪い気はしていないのだろう。
「いや〜本当ちっさい頃からあたしの目にカインはキラッキラして見えてたよね〜」
「……。」
向けられる信頼。
そう、誰かにそう思って貰えるという有り難さ。
ふっ、と…身に染みることがある。
ナマエという存在が、いかに掛けがえの無いものであるのかと。
END
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -