手の中にあった光


崩れた建物。
何者かの意思によって破壊された、遺跡のような場所。

あたしは今、そんな場所にひとりで立っていた。





「どこだー…ここ」





ぼそっと呟き、空を見上げる。
まあ、空なんて見たって誰も見つかりっこないけど。

とりあえず瓦礫に腰を下ろし、ふう…とちょっと一息。

闇のクリスタルが喰われて、どこか違う世界に飛ばされたあたしたちだったけど、一時は同じ世界からきた仲間…あの星の仲間たちとはすぐ合流出来ていた。

でも、そのあとまた突然飛ばされて…気が付いたらこんな場所にひとりきり。

一体全体どういうことだ。
わけがわからなかった。

でも、不思議とあたしは焦っていなかった。

いつもなら「うわあうわあ、皆ドコー!?」って騒いでそうなもんだけど。
いや我ながら騒がしいやっちゃなとは思うよ、うん。

だけどやっぱり、心は落ち着いてる。

その理由は、今抱いている眩い光にあった。





「なんなんだろうなあ、これ」





気が付いたら持っていた、その光。

それは眺めているとあたたかくて、なんだかホッとできる不思議なものだった。
なんだろう。でもなんとなく、誰かの優しい意思を感じるような。

するとその時、その光の中に誰か人の姿が見えた。





「えっ…?」





反応、強くなってる?

まるで羅針盤。
何かを示しているみたいに。

この先に何か…いや、誰かいる?





「…向こう?」





立ち上がって、光の示す方を見た。

もしかしてこの先に進んだら、仲間の誰かに会えるかな。

そんな風に思えたのはどうしてだろう。
でも、この光は信用していい気がして。

まあここでボケーっとしてても仕方ないし。

だからあたしは、その光の導くままに歩いてみることした。





「あ、強くなってく」





進んでいくと、やっぱり反応はどんどん強くなった。

もうすぐ近く。
示す先はすぐそこだ。

そうしてパッと前を見た時、そのゴールを見つけた。





「あっ!クラウド!!」

「ナマエ!」





導かれた先にいた人物。それはクラウドだった。
クラウドもこちらに気が付き、あたしの名前を呼んでくれる。

その瞬間、あたしはタッと駆け出した。

クラウド!クラウドだ!
いやだってやっぱりクラウドに会えたのは純粋に嬉しいもん!

落ち着いてたって言っても、心細くないわけじゃなかったし。





「ナマエ、無事か?」

「うん!クラウドも!会えて良かったよー!!」





クラウドの方からもこちらに駆け寄ってきてくれる。

無事に再会することが出来て、互いに良かったと喜んだ。

あ、うん。
やっぱなんだかんだ誰かに会えると安堵感ハンパないな。
クラウドだったから余計にかもしれないけど。

なんだかふわっと気持ちが軽くなったような気がした。





「この光を追ったら、あんたに会えたんだ」

「え?あ、それ、クラウドも持ってるんだ。あたしも持ってるよ」

「ナマエも?」





クラウドは探すの手掛かりにしたという光を見せてくれた。
それはあたしが持っていた光と同じもの。

あたしたちは仲間を探せる、同じ光を持っていた。

探せると確信を得たのは、その光はまた次の新たな方向を示していたからだ。





「あ、次はあっちだって。クラウドのも同じ方向さしてる」

「ああ」

「もしかして、皆も持ってるのかな?」

「さあな。これが何なのかもわからないからな」

「何なのか…。うーん、確かに何だろうね、これ」

「いつ手にしたとか、わかるか?」

「いや全然。気づいてたら持ってた」

「そうか…俺も同じだ」

「でも、信用していいモノな気がするんだよね」





じっと、その光を見つめた。

クラウドと話しても、なんなのかさっぱりわからない。

でも悪いものじゃない。
そんな確信だけは、あった気がする。





「うん。クラウドと会わせてくれた時点で信用に値するね!ありがとう光!」

「なんか単純だな」

「あたしが単純とか今更ではなくって?オニーサン♪」

「まあ、信用していいものだっていうのは、俺も感じるけどな」





クラウドも光を見つめた。

眩い、あたたかい光。
理由とか根拠とか、そういうのはうまく説明できない。

だけど、凄く凄く大切なもの。

理屈じゃなく、そう感じるような気がして。





「じゃあ、指してる方に行ってみようか!きっとまた、誰かに会えると思うよ!」

「ああ、そうだな」





クラウドとふたりで頷き合う。

意見は一致。
この光を頼りに進んでいけば、その先にはきっと仲間がいるはず。

そうして光を眺めていれば、クラウドはぽつりと言った。





「…あんたを一番に見つけられて良かった」

「えっ?」

「あ、いや…」

「ん?あたしなんかやらかしそう?」

「…いや」

「ユフィじゃあるまいし大丈夫だよー。…は!ユフィ早く見つけないと!何かしでかす前に!」

「………そうだな」





クラウドの声には妙な間があった。…う?

でもまあとりあえず、早く皆とも再会しないとね!





「いこ、クラウド」

「ああ」





こうしてあたしたちはその光…光の羅針盤を手掛かりにして、他の仲間たちも探していくことにしたのだった。



To be continued
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