譲りたくないもの


強敵との戦い。
でももうだいぶ削った。あともう一歩。

さて、どう決めてやろうか…。

そう考えていた時、後ろから名前を呼ばれた。





「ナマエ!」





振り向いた先、そこにいたのはクラウド。
その時クラウドは剣をちょっと特殊な構え方をしていた。

あー、なるほどなるほど。

それがどういう意味かを察したあたしはそれに応えるべく駆け出した。





「了解、了解!」





これで決めるよ!
踏み込んで、あたしに与えられた役目は敵の動きを止めること。

剣にいかずちを纏わせて、さあ、痺れてしまえ。

タイミングを合わせて。
それさえ出来れば、もう勝利はこちらのもの。





「星よ、降り注げ!!!」





クラウドの剣から放たれる隕石。
雨のように、落ちていく。

あたしは魔物だけを残し、タンッ…とその場から離れた。

メテオレイン。
さあ、これで終わりだよ!

最後のひとつが降り落ちた時、その場にいた誰もが勝ったと確信する。





「クラウドー!やったー!!」

「ああ」





あたしはぴょんと飛び跳ねて喜びながらクラウドに駆け寄った。
するとクラウドも微笑んで迎えてくれる。

わーい、勝ったー!!

結構長期戦だったから、勝った喜びもひとしおって感じ?





「ふふ、お疲れ様。ナマエ、クラウド、回復するね」

「あ、レムありがとうー!」

「悪いな」





戦いが終わり、一緒に戦っていた皆も集まってきた。
レムは一番に来てくれて、あたしとクラウドにケアルを掛けてくれた。





「最後のコンビネーション、よかったぜ!しっかしナマエは隙作るのうまいよな〜」

「あっは、もー、ジタンってば褒めても何も出ないからね〜」

「いやいや本音さ。俺もさっき一撃思いっきり撃たせてもらえたしな」

「うんうん。私も、回復魔法唱えたいなって思ったタイミングぴったりでフォローに来てくれたから助かっちゃった」

「えー、あははっ、そう?えへへ〜」





褒められて照れ笑い。

皆で喜びに浸る。
勝利の後のこの時間は、あたしは結構好きだったりする。

皆で協力しての勝利って、やっぱり達成感あるからね。





「さて、じゃあそろそろ戻ろうぜ!」





落ち着いたところで、ジタンが飛空艇に戻ろうと言った。

多分、今の奴がここら辺の大ボスだったと思う。
現に戦闘が終わった瞬間から、敵の気配が全然なくなった。

それならこのあたりの調査はこれで終わりでいいだろう。





「ふ〜、疲れた〜。クラウド、帰ろ〜!」

「ああ…」

「うん?どうかした?」





一緒に帰りましょ〜、とクラウドに声を掛ける。
クラウドは頷いてくれたけど、その返事はどこか上の空のような。

ケアルはしてもらったけど、まだどっかケガしてたりする?
そう心配すると、それに気が付いたクラウドは「いや」とすぐに首を横に振った。





「確かに、誰とでも上手く合わせて戦うよなって思っただけだ」

「え?ん?あたしの話?」

「ああ」





自分の顔を指さすと、こくんと頷くクラウド。

どうやらさっきの話の続きらしい。
これは、褒めてくれてるんだろうか?





「クラウドさん、お褒めいただいてます?」

「ああ…」

「おおー。わーい、じゃあ喜ぶ〜!…って、何故にそれで浮かない顔?」

「…別にそんなことはない」

「そーかなー?」

「ああ、大したものだと思う」

「んー、うん。ありがとう、嬉しい」

「ああ」





クラウドが褒めてくれた。
それはすごく嬉しい。

でもやっぱなんか浮かない顔してると思うけど。

なんか気になる。
でも、なんか言ってくれなさそう。

だったら何か流れを変えようか。
そう思ったあたしはちょっと思いついたことをクラウドに聞いてみた。





「ねえ、クラウドもずっと前にさ、動きやすいって言ってくれたよね?」

「え?ああ?」





ずっと前…というか、元の世界での話。
まだミッドガルにいた頃、一緒に戦うようになって間もないくらい。

クラウドも動きやすいって言ってくれた。

それから、旅をする中で何度か。





「それって、今も思ってくれてる?」

「え?」





ちょっと、聞いてみたくなったこと。
するとクラウドは少しだけ目を丸くした。





「ああ…思ってるけど、さっきのメテオレインだってそうだろ。何がしたいか、すぐに察してくれたからな」

「そっか!」





それを聞いてあたしは笑った。
たぶん、結構満足気。

するとクラウドは不思議そうな顔をする。





「なんだ?」

「ううん、良かったって思って」

「良かった?」

「うん!」






ふふふー、と。
にっこり満面の笑み。

ああ、うん。そりゃそうよ。

だって好きな人にそう思ってもらえるって、こんなに嬉しいことある?って感じじゃない。

すると、クラウドにも聞き返された。





「…ナマエは?」

「え?」

「ナマエはどうだ」

「あたし?」

「あんたも前に言ってただろ。俺と戦うとき、動きやすいって」

「あ、うん」

「今はどうだ?」






なんだか、じっと見られてる…?
そんな見られるとちょっとドキリとする。

でも、その質問の答えに迷うことなんかない。

あたしはすぐに頷いた。





「動きやすよ!というかあたし、クラウドと戦ってる時が、一番動きやすいんだよね」

「え」

「うーんと、この世界に来て、いろんな人と戦って改めて。もちろん皆も動きやすいんだけど、仲間のこと考えてくれる人ばっかだからね。でも不思議とクラウドと戦う時がいっちばんしっくりくるんだよね」

「……。」





あたしやクラウドがこの世界に初めて来たときにいた島。
そこでは数人しかいなかった仲間も、もう今ではすっかり大所帯。

でも、こんなにいっぱいいるのに、本当いい人ばっかりだからビックリだ。

だから誰と戦っても、結構安定して戦えるんだけど…。

それでも一番しっくりくるんだよね。





「そうか」





すると、クラウドの顔が少し綻んだ。
ふっと…柔らかく。

…なんか、自惚れ?
でも、それは嬉しそうな顔に見えた気がして。





「ふふ!クラウドの背中守る役目、誰にも譲りませんからね〜!」

「誰も取らないだろ」

「そんなことないよー」

「…まあ、俺も譲らないけどな」

「うん?」

「ナマエがそう思ってくれるなら、俺も応えたいと思う。それに…」

「…それに?」





なんだかちょっと気恥ずかしいことを言われているような。

クラウドはたまに、なにかつっかえみたいなのが取れるとすごく素直に言葉を口にしてくれることがある。
今もなんか、そんな感じ…。





「…その方が傍にいられるからな」

「え?」

「いざと言う時、手が届かないなんて言うのは御免だ」

「……。」





ぽすっ、と優しい手が頭に触れる。
それは、こうして手が届く距離がいいと、そう言ってくれてるみたいだった。




END
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