変わらない海


青い青い海。
それはどこの世界でも変わらないものだな、なんて思う。





「ナマエ!なーにしてるッスか?」

「ティーダ」





砂浜の上、どこまでも広がる海を眺めていると背中から声を掛けられた。
振り返った先にいたのは太陽のように明るく笑うティーダの姿。

あたしは再び視線を海へと戻す。
すると彼もまたあたしの隣に立って同じように海を眺めていた。





「海見てるのか?」

「うん。海はどこでも変わらないよなあって」

「ふーん。まあ、確かにだな」





海。それはどこでも同じ。
あたしも世界でも、ティーダのザナルカンドでも、スピラでも。
そして、この世界でも。





「しっかしさ、みんな異世界にいたなんてビックリッスよ」

「うん。これでみんなも異世界に飛ばされる心細さがわかったりして?」

「あはは!そうだな!」

「まあ、会えてよかったね、ティーダ」

「うっす!」





何気ない会話の中に飛び出す異世界という言葉。
あたしとティーダはもともと自分が暮らしていた世界からスピラと言う異世界に飛ばされた。

だけど、ここはそんなスピラともまた違う世界。

あたしたちは、またも得体の知れない世界へと放り出されていた。

ただ違う事と言えば、あたしたちだけじゃなく他の皆やまた全然別の世界からこの世界に飛ばされて来た人たちもいるということ。
あたしたちはそういう人達で集まって、モーグリに導かれてこの世界を旅していた。

この世界には歪みがあって、それは元の世界にも影響を及ぼしてしまうものらしいからそれを食い止めるために。
そして、この世界について知っていくために。

ティーダはそんな中で、たった今再会を果たし、仲間に加わったばかりだった。





「えーっとスピラから来てるのはあとユウナとワッカだけなんだっけ?」

「うん。今のところ再会してるのはね。あとシーモアもいるけど」

「…たっく、面倒な話だよな。まあ、他の奴らももしかしたら来てる可能性もあるのかな」

「旅、続けてたらそのうち会う事もあるかもね」





ティーダが口にしたように、今ここにスピラから来ているのはユウナとワッカだ。

でもそうするとやっぱり気になるのは他の仲間の事。
ルールー、キマリ、リュック。

それと…。

今頃どうしてるのかなあ。
脳裏に浮かんだ、赤い衣と太刀。

あたしはそんな思いに海をぼんやりと見つめた。





「アーロンとか、どうしてるっスかねえ。ユウナも消えてナマエも消えてさ」

「うーん…」





その時、ティーダがとある一人の名前を出した。
それは偶然にもちょうど今思い浮かべていた人物の名前。





「まあ、慌てふためいてたりとかはしないと思うけど」

「はは!まあな!」




昔ならともかく、今のアーロンが慌てふためいてるって想像できないな。
なんとなく言ってみた言葉にティーダはけらけらと笑ってた。

そして、笑顔のままに彼はあたしに尋ねてきた。





「会いたいッスか?」





そう聞かれたあたしは、その姿を思い浮かべたまま素直に答えた。





「そうだね、会いたいな」





するとどうだろう。
聞いてきたのはそっちなのに、ティーダはちょっとビックリしたような顔をした。

だからあたしは彼の口調を真似て問い返す。





「なーんスかその顔」

「いや、素直だなあって」

「だって会えたらいいなとは思うでしょ。ティーダは思わないの?あのおじさん、いたら結構頼りになると思うよ〜」

「まあ…異論はないッスけどね」





ふふ、とあたしは軽く笑った。

本当に頼りになるとは思う。
会いたい理由は、それだけじゃないけれどね。

一度離れて、また会えた嬉しさを…あたしはもう知っている。

ねえ、アーロン。
今、どうしていますか?

会いたいなあと素直に感じながら、あたしは異説の大地を歩く。



END
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